ラーメン屋 試験営業
今日明日の二日間はラーメン屋の試験営業だ。
遂にこの日が来た!
村の衆で試行錯誤しながら作ったラーメン屋。
道も整備して看板も建てた。どのくらい客が来るのかは判らないが、入りきらない客のために無料休憩所も作った。
今回は試験営業だから、殆んど招待客。
エチゴヤやオーリンの関係者にコユキが師範しているエチゴヤの若い衆の二期生。町の瓦屋や道具屋筋の人達で殆んど顔見知り。聞き付けた人も来るだろう。断りはしない。
店の方は、村長率いる村の女衆が四人厨房に入る。
今回のラーメンの麺は全て生麺使用。大量にクーラーボックス用意して詰めてある。村で育てた鶏が肉と出汁になり、新たに栽培をしたニンニクと唐辛子をふんだんに使う。これで日本のラーメンにかなり近くなった。(出来合いのタレも当然使います)豚のチャーシューは今回は見送り。
店にはコユキ、ラララ、ボロリエが立つ。
そして俺とガガガがソワソワしながら店の様子を見ている。俺もソワソワしてるが、ガガガはそれ以上だ。なんてったって、自分の総監督したラーメン屋の建物がどう評価されるか気が気じゃない。領主まで来るというのだから緊張するのは当然だ。普通ならド田舎の男が建てた家に領主が立ち入るなんて有り得ない。
もうね、告白の返事を待つ乙女のようにそわそわしてる。今ガガガにチェーンソー持たせたら絶対危ない。
一方ラララは先日女中頭から、
「抜き打ちで視察に行きますからね」
と、脅されている。
ラララの立ち振舞いは女中頭の苦労のかいあって町人と遜色無いレベルになったが、元々は山で芋掘ってた子供だ。油断は禁物で咄嗟のときに元の癖がでる。
店員の制服は黒いTシャツなのだが、試着したときに、ラララの胸のぽっちりの主張が凄い。巨乳ではないが、ぽっちりの主張が大きいタイプのようだ。
「ユキオ、ブラ!ブラ出して!」
大慌てでコユキが俺を揺さぶる。ラララの母親気どりのコユキとしては大衆にラララのぽっちりを晒すのは許せないようだ。自分はギルド時代に谷間見せびらかしていたくせに。(ぽっちりは無かったが)
奥の部屋で俺に出させたたブラをラララにつけさせるコユキ。
しかし、
「小さい!」
「え?」
「もうひとつ大きいの!」
ラララ、まさかの着痩せするタイプ? ぽっちりだけじゃなく土台からでかかった? 胸が目測よりデカかった? 出会った時は殆んどまな板だったのに!
そして、
「もうひとつ大きいの!」
「嘘!」
そして漸くブラ問題は解決したのだが・・・・
「まずいわ」
「何が?」
「ラララが口説かれたらどうしよう。ラララが結婚するなんて言い出したらどうしたらいいの!」
「お前はとーちゃんか!」
目の前にはあどけなさもありながら女っぽくなったラララ。(主に体型が)
ロリとノーマルの両者を満足させられるラララ。
「こ、こうなったら乳を布で絞り上げて!」
「やめい!」
心配症のコユキの暴走が止まらない!
まあ、日本では当たり前の薄い生地のTシャツも、この世界では充分セクシー衣装だし、心配するのも当然か。
そして、2枚のブラが余った。しかも短時間とはいえ使用済み。
片付けるか。
「変態!」
「え?」
「それ持ってどうするつもり!匂い嗅ぐんじゃないでしょうね!」
なんでやねん。
「まさか着けるとか!」
いやだから、なんでそうなる。
要らないから片付けるだけなのに。
「私が預かっておきます!」
お前はかーちゃんか!
それにコユキはアンダーが太すぎてそれ使えない。持っててどうするねん。
そこで恐る恐るラララが話す。
「あの、普段用で使うから・・・・」
それにコユキが素早く反応。
「こっちはともかく、こっちははみ出てたじゃない!」
何が?
何がはみ出たの?
ねえ!
「あのう・・・・」
小さなボロリエの声。
皆、そちらを見る。
「おれ、いえ、私も欲しい・・」
忘れてた。男としてカウントしてたわ。男のぽっちりなんてどうでもいいと思ってたけど、一応見た目は女だったわ。
そこに村長。
「ユキオよ、厨房のほうも頼む」
「あ」
そう言えば厨房も全員黒Tシャツだ。全て女性。
もう、面倒くさいので、村の女衆全員にブラを大箱で渡すことにした。いちいちサイズ聞いてられんし。
そして。
「リエよ。さっき新しい番屋の夫婦が私の所に挨拶に来ておったぞ。今日から配属になったから宜しくとな」
「そうですか。わざわざ有難う御座います・・」
一瞬、リエがタカに戻る。
そう言えば番屋は完成したんだな。かつてのタカの妻が今日から村の住人か。俺とコユキは奉行所で何回か会ってるけど、遂に村に来たのか。
「さて、掃除でもするか」
タカが止まっていた時間を無理やり動かして外にホウキを持って向かう。
がんばれタカ。
ーーーーーーーーー
「うまい!」
「凄い!」
「は、鼻がでる」
「どうする、もう一杯いくか?」
「ギョーザもうひとつくれ!」
「こっちもギョーザ!」
「いくぞ、二杯目!」
「まじか!じゃあ俺も!」
やったあ!
すげえ好評だ!
同じ店内に上司の領主オーリンが居るってのに皆、我を忘れてラーメンにがっついてる。しかも、サイドメニューのギョーザも大好評!
コユキ、ラララ、ボロリエが忙しそうに店を動き回る。
開店から身分が偉い順に客が入ってくるのだが、いつまでたっても楽にならない。なんでかと思ったら、少し腹を休ませて再入店する奴が結構居たからだ。
1日でラーメン二杯って凄いなー。
そして、来客を見てると面白い。
美人店員ふたり。
コユキとラララの人気が互角だ!
1日目の客はオーリン関係者が多い。エチゴヤ関係者は2日目の予定。
奉行所や役所ではコユキは見慣れられている。
総合的にはコユキの方が美人だと思うのだが、見慣れた感がある。そこに新鮮なラララだ。目を引くのも分かる。
それと、
「お前ら全員特盛ギョーザ付きな。残すなよ」
若手の剣士にドスを効かせる師範コユキ。
エチゴヤの若手以外にもコユキの指導を受けてる剣士はいる。その人達はコユキが来るとカチンコチンになる。コユキが怖いから。
しかも、
「あの娘に手ぇ出したら殺すからな」
店員が客を脅すんじゃない!
そうしてじわじわとコユキの人気が下がっていった。
コユキがあちこちのテーブルで若手を脅し、ラララがそのあとそのテーブルでお詫びとばかりに愛想を振り撒く。
「なんか俺ばっかり働いてない?」
ボロリエが愚痴った。
因みにラーメンは1000イセ。大盛300イセ増、特盛500イセ増。ギョーザ600イセ。
かなりのぼったくりである。材料は半分左手からタダで出したのにね。
ー ー ー ー ー
外を見れば、少し遠いところで役人や剣士と挨拶を交わす番屋夫婦。
それが視界に入ることがあるのに無表情を貫くタカ。
番屋の奥さんの身の上に起こった不幸を知るものも居る。だが、彼女の不幸は珍しくはなかった。かつてギルドが存在してたときはそんな不幸な女性があちこちに居た。その比率は日本では考えられないほど高い。コミュニティに被害者仲間というのもあるらしい。
俺は性犯罪被害者の奥さんが生きていけるか心配だったが、なんとか大丈夫なようだ。何よりこの平穏を守る為にはギルドを復活させてはいけない。
「ユキオ殿、ラーメンうまかったぞ」
領主オーリンが話しかけてきた。
「有難う御座います。ここまでこれたのは領主様のお陰でもあります」
「いやいや、私が動けるようになったのもユキオ殿がギルドを倒してくれたお陰だ。改めて礼を言う」
「いやそんな」
「聞いても良いか?」
「何をです?」
「お主は何者なのだ」
誰にも明かしたことのないこと。コユキにもラララにも言ってない。
言っていいのだろうか?
いや、言ったところで理解出来ないだろう。
それにそもそも俺はなんなんだろう?
勇者でも魔王でもない。
神様にギルドを倒せと命令された訳でもないし、勇者と魔王を倒せと言われた訳ではない。言われたのは気を付けろとだけだ。
「鬼の増加を言い当てた事といい、ユキオ殿は一体何者なのだ?」
オーリン様になんと答えよう。
いや、俺の立場は何なんだろう。
「私は遠い国の人間で」
「遠い国・・・・」
「神様に拾って貰った。助けて貰ったといいますか・・」
「ほう」
助けて貰った?
トラックにぶつけられたのに? でも今は幸せだ。
「なんと言っていいか分かりません。でも、この町が好きです」
村は宿泊施設は殆んど作ってません。
町から絶望するほど遠くはありません。




