2218秒・・・・・・
しっかし、暇だ。
タカの整形ヒールが2218秒。これって37分でコユキの時より長いぞ。一体何をリクエストしたんだか。
ぽーん!
頭の中のヒールタスクバーが残り1200秒の時に突如メッセージ画面が現れ、
『修正が規定範囲を越えます。【続ける】【強制終了】』
は?
まだ半分だぞ何が起こった?
エラーか?
いやこれはあれか?
整形が遺伝子を越える形になるのか? タカが人間をやめる?
中止か黙認か。
最初にタカが何をどのようにしたいのか聞いておけば良かった。メッセージ画面には情報が書いてない。
ここで中止したら、分解途中で組み立てなしで悲惨なことになるとかだったら嫌だぞ。
今のタカの姿を見るに少し若返りが起こっている。
うーん。
【続ける】
ぴっ。
工程がまた再開。
そして。
『修正が規定範囲を越えます。【続ける】【強制終了】』
またかよ!
めんどくせえ!
【続ける】
ぴっ!
『修正が規定範囲を越えます。【続ける】【強制終了】』
なにやってんだタカ!
【続ける】
ぴっ!
『修正が規定範囲を越えます。【続ける】【強制終了】』
いい加減にしやがれタカ!
【続ける】
ぴっ!
そんなこんなで10回以上途中中断しながら続けたヒール。37分で終わるはずが40分掛かってまだ継続中。
もう夕方。
『ヒールが正常に終了しました』
どこが正常にだよ!
タカめ!
「タカ、終わったぞ、座っていいぞ」
「ひ、膝が」
そういいながらタカはゆっくり座った。立ってる時間が長すぎて膝が痛いんだろう。
なんだかんだで50分近くも掛かったぞ。あの残量表示もあてにならん。
タカを見る。
ううーん。
なんと言っていいやら・・・・
「タカ、自分で確かめろ」
そういって俺は手鏡をタカに床を滑らして渡した。こいつに姿見鏡なんて勿体ねえ。
そして直ぐここを離れたい。
「じゃあ、俺は休んでくる」
そういって俺は部屋を出た。外の新鮮な空気がうまい。部屋の外にはラララとコユキが座って待っていた。心配なのか気になったのか、夕飯の献立聞きに来たのか。
「終わったの?」
聞いてきたのはラララだ。
「終わった。終わったんだがなんというかな」
「成功したの?」
「成功って何を?」
「奥さんに絶対バレない姿になる方法」
そうか。
アレはラララの差し金か。
「ラララ、まさか・・・・お前が言ったのか?」
ただ微笑むだけで答えないラララ。だがその沈黙は肯定だ。その笑顔は無垢な笑顔ではない、かなり邪心が混じってる。
「ユキオ、どういうこと?タカはどうなったの?」
「あー、コユキ。見てくれば解る」
俺はドアを指差した。
中にはタカ。俺は見たくない。
「見て良いの?」
「どうせいずれは見なきゃならん」
「見る?」
コユキが俺では無くてラララに尋ねる。
「見ましょう」
そう言うとラララはドアに手を掛ける。そしてラララとコユキは二人で静かに中に。恐らくこの時間だ、中は暗い。全てを把握するまで数秒かかる。
「ぎゃあああああ!」
コユキの悲鳴が聞こえた。まるでうっかりゴキブリ踏んだような悲鳴。
整形ヒール。
タカは女体化した。
年齢も十歳若返り、ラララと同じ位の15歳前後。
そして、顔が可愛くない。
肉体はガチムチ系で女の子なのに顎がゴツい。柔道とかアマレスの選手でこういうの見たことある。
身長も高くもなく低くもない160センチ位。ラララより高くコユキより低い。
夕食後、皆でまた集まった。因みにタカにはフランスパン丸々一本与えておいた。ジャムもなんもなし!
なんかそういう気分だったから。
集まったのは、俺、村長、ガガガ、ラララ、コユキ、そしてタカ。
タカは今までの服がブカブカになって、首元から胸が少し伺えるが全く色気がない。中途半端に胸はある、無乳ではない。ラララとコユキが部屋に入った時、タカは自分の胸を揉みしだいていた最中らしい。コユキの悲鳴はそれか。
さてと。
「タカ、どうしてこの姿を選んだんだ。話してもらおう」
五人の目がタカに向かう。
ぼそぼそと話し始めるタカ。自分の胸を揉みしだいている所を発見されなければこんなに萎縮することはなかっただろう。
「いやその・・・・元妻にバレない姿といったら・・・・」
確かに。
元妻もこれが元夫だとは気付かないだろう。それは確かだ。
「コユキ様を見て女でも強く成れると・・・・」
それは間違って無い。
まあ、コユキは別格だが。
「若くなれば自分を鍛え直せるし、若くても即戦力の年齢といったらこの辺で・・・・」
まあ、判る。
強そうな肉体も作ったな。
用心棒というのは忘れてないな。
「男に好かれたり口説かれたくないから、顔はこの辺で・・・・」
つまり、男に興味はないと。分かる、非常に分かる。
自分のとはいえ、おっぱい揉みまくってたしな。人が部屋に来ても気付かない位熱中して。
「ユキオ様が『あちゃ、男が来た』と言ったのもありますし・・・・」
あ、言ったわ。
そもそも店員募集は女性ターゲットだったし。
俺のせいか。
「それで女になったのか」
「いやその・・・・」
「なんだ?」
「まだ男です・・・・」
「・・・・」
沈黙が流れる。
可愛くないとはいえ、どこからどう見ても女。
おっぱいもあるぞ。顔だって女顔。
しかし・・・
「どれ」
そういって立ち上がる村長。
のっしのっしとタカの元に行く。尻で後退りするタカ。
タカは逃げたいが逃げて良い相手ではない。
「いぎっ!」
村長がタカのアレ(あるの?)を服の上からむんずと掴んだ。思わず声をあげるタカ! なんて大胆!
「ほほう。これがお前さんの未練の大きさじゃな」
村長の手に収まった何か。
服で見えないが、確かに物体がある。
そして村長はタカのズボンをビヨーンと引っ張った。元々男用のズボンは盛大に延び、その開口部から村長はアレを確認した。
「そ、村長?」
コユキが村長に恐る恐る尋ねる。
「コユキよ。気になるなら見ればよいだろう」
「いやいやいやいや!」
「みていいの?」
コユキは全力で拒否したが、ラララが興味を示した。
「見ちゃ駄目!はしたないと女中頭から怒られるわよ!」
「えー」
女中頭と言われて渋々諦めるラララ。
頼むラララ!
ホイホイち◯んこを見に行く女の子にならないでくれ!
そして、その後の話し合いで、元奥さんから完全に身を隠すために名前も変えることににった。
タカ改め、リエと名乗ることになったんだが、なんか名前と見た目が合ってねえ。
『リエ』がタカだったことは秘密だと村人には周知されることになった。また村の秘密が増えたよ。
そして、タカを俺んちに住まわせるかどうかを決めようとしたのだけれど、コユキが断固拒否した。相当初めて見たリエの姿が強烈だったらしい。
しかしいつまでも村のラブホを占領するわけにもいかないので、コユキを押しきって住まわせる事にした。(一人部屋)
「なんかしたら殺すからね!」
コユキこええ。
そして、あの何度も繰り返された『修正が規定範囲を越えます。【続ける】【強制終了】』というメッセージは、男の遺伝子では無理な整形もあるが、男性器をもいだり、思い直してまた付けたり、またもいだりしたせいだった。
あんのやろう!