クロマツ復興に向けて
たった一晩で壊滅したクロマツギルド。(全4店舗)
ギルド討伐は終わったが事後処理はとても難航している。
とにかく ギルド員の尋問と現場検証はとても大変なのだそうだ。
とにかく人手不足。
元公務員、元城職員。
モリア家、ベスガ家、クエイ家からの有志と家臣。
そして、サクラ姫とサクラ姫の母上。
全部集めても50人居ない。
オーリンも10名ほど派遣してるがあくまで雑用とアドバイザー。
そして今回の逮捕者は155人。
実際は捉えてないギルド員も居るのだが、名簿は把握した。
それに、一晩で155人を倒す戦力がこちらにあるということは、残党もおいそれとは襲ってはこれない。
残りのギルド員は恐らくは町から逃亡するだろうと思われてる。
だが、行き先は限られて居る。オーリンには行けない。
そして、オーリン、クロマツで行われたギルド殲滅。それは今までなら堂々と『ギルド員』を名乗れたが、今後はそうもいかなくなってきた事を示す。
ギルドの残党は他のギルドに匿って雇って欲しいが、それが安全なのかは疑問になってきた。
さて、クロマツだが、前政権が倒れ、ギルド支配の傀儡政権も倒れた。
そして今は暫定政権なのだが、法律がまだない。一度全てが破壊され失われたのだ。同じ法ではうまく機能しない。
暫定領主はサクラ姫のお母様。名前はモモカだが、1年間は領主クロマツと名乗ることになると。
そして領主クロマツが発令した法律は今はたったの3つだけ。
『1年後に新政権を発足する』
『クロマツではギルドを認めない。過去関係した者は出頭すること』
『1週間後に暫定新法を制定する』
現領主は1年後に今回の功労者を重要ポストにつけてサクラ姫を領主に据えるつもりだ。
恐らくはサクラ姫の婿もこの中から選ばれるかもしれない。(俺も候補)
ギルドに関係した者はその度合いで刑を処すか、執行猶予処分か、無罪になるか決められる。だが、真の狙いは出頭しない者をピックアップすること。そいつはマズイ奴の可能性が高い。台帳と比べればすぐわかる。
そして法律のない1週間。
これには裏の意味がある。
この1週間、逮捕されたギルド員は道に並べて縛られたまま座らさられた。
ーーーーーーー
サクラ姫は共同墓地に花を持ってやってきた。
ミズリの眠る墓に花を供える。
ミズリの遺骸はもう随分奥になってしまった。
そしてサクラ姫はミズリに話しかける。
「今日、ミズリの仇をうちました。救ってやれなくて御免なさい」
ようやくギルドを倒せた。
だが、間に合わなくて救われなかったミズリ。
ミズリを騙したギルド員はすぐ判った。彼女の恋人を処刑した男も。
墓に向かってサクラ姫は墓から見えるように短剣を掲げた。2人分の血を吸った短剣を。
他にも憎い奴は居たのだが、先を越されてた。
そう。
1週間の無法期間。
ギルド員を殺しても罪にならない。誰もが1週間だけ復讐の鬼になる事を許される。
1週間、罪人が並ぶ通りには人が絶えなかった。
皆恨んで居た。
手に掛けたといっても故人は戻ってこない。汚された事は消えない。
155人居たギルド員は1週間後、42人まで減った。
その後、法律が制定され、残ったギルド員も10人が処刑された。生き残ったものは懲役刑である。だが、受刑者を管理する者がまだ揃ってない。受刑者は暫定的にオーリンで強制労働をすることに決まった。
自分は懲役で済むと踏んだギルド員は出頭してくる。それはやはり地獄の1週間が過ぎた後が殆ど。
逃げるという手もあるのだが、記録が渡ってしまっているし、他のギルドに行ってもまた同じことが起きるかもしれないと諦めたのだ。この世界は四つの町からなるが、そのうちの二つ、オーリンギルドとクロマツギルドが短期間で相次いで堕ちた。他所のギルドに行ったなら古株ギルド員に下男のようにへいこらするのも苦痛だ。なにより恐怖の存在から逃げられないと諦めた。(その後ユキオとコユキはクロマツでは何もしてないが)
ーーーーーーー
ユキオはビビって居た。
自分は1人も殺さなかったが、結果113人が死んだ。(時期的に判決による処刑の前でもこの数)
もともと普通の日本人の感覚なら罪の意識も出る。その男たちの死刑ルートを自分が作ったのだから。
だが、記録された罪を見て更にビビった。
あの1週間、町民は思いを遂げる前に記録員に理由を書き残して居る。しかも方々の記録もある。
殺されたギルド員の記録。
ギルド員一人当たりの平均殺人数12人。
平均強姦回数20回以上。この20回というのは思うより少ないが、先輩ギルド員が上玉を囲い込みして、下っ端に手を出させなかったというのもある。女性が安全を得るのに一番の方法は特定のギルド員に囲われる事という酷い有様だった。
強奪、恐喝などは多過ぎて把握ができない。
そしてこれはあくまで記録にあるもの。
こんなのが堂々と町を歩いて居たのか。そしてギルド員というだけで罪に問われない。
オーリンはまだマシだったんだなあとユキオは思った。
そしてもう一つ。
あの夜の制圧劇。
ユキオの制圧したのは本社、西支店で101人。
コユキが制圧したのは新町支店、東支店で54人。
ユキオの方が圧倒的に多いが、コユキはあくまで人間だ。神からチートを与えられた能力者ではない。しかも筋力で劣る女だ。この数値は驚きだ。
ユキオならば間違えて殺しても『後で生き返らせればいいや』と云うことが出来るからサクサク事を進められるが、コユキにはそれはできない。なのにあの成果だ。どれほどコユキが凄いかということかわかる。
「絶対に怒らせないようにしよう・・・」
次にユキオがビビった、いやヒいたこと。
「ユキオ様。もうサクラはユキオ様のものです。どうか私とクロマツを治めましょう」
ユキオは困った。
将来サクラ姫は領主になる。(たぶん1年後)
そんなサクラ姫からのプロポーズ。(返事はしていない)
サクラ姫が嫌いな訳じゃない。だが、それはクロマツに住む事を意味する。まあ、結婚だけして別居という手段もない事はないが。
ユキオはモリア氏と話をする機会が有ったのだが、彼曰く、
「サクラ姫はとんでもない床上手です。男の体をどうすれば支配できるか知り尽くして居ます
ベスガ氏は、
「サクラ姫の体は麻薬です。あの快感は別格です!いえ異次元です!」
クエイ氏に至っては、
「サクラ姫を娶ったならば毎晩魂を抜かれて仕事が出来なくなります。だから辞退しました」
おおう、サクラ姫・・・・
貴方は一体・・・・
そんな絶品さんが迫ってくれば悪い気はしない。
この身の童貞を献上したくもなる。
だが、問題は別の所にあった。
「コユキ姉様!」
男を目の前にしても、俺を目の前にしても冷静なサクラ姫がコユキに勢いよく抱きつく!
コユキの胸に顔を埋めるサクラ姫!
そしてスーハースーハー!
俺には全ての穴を差し上げますとは言ったが、いたって態度は冷静だったサクラ姫が、
ハアハアハア!
「コユキ姉様!すぐお部屋に参りましょう!」
ハアハアハアハア!
ハアハアハアハア!
いかん、サクラ姫がコユキに向かってサカってる!
今までの男は数々あれど、どの男にもサクラ姫は惚れてない。
なんてこった!
実は百合だったか!
「こ、コユキ、ラララが心配だね」
「え、ええ、そうね。戻らないと!」
コユキはひきつり笑顔をしながらオーリンにダッシュで戻って行った。
「おねえさまあああああぁ!」