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初村人発見

「助けてー!」


 森に響き渡る若い女性の悲鳴。

 何処かで女性が助けを求めてる!

 おそらく最強の俺は助けるべき!


 しかし、どっちだ?


「どこだ!」


 ブォン!

 目の前左にに新たなウインドウが広がる。


『目的地まで21メートルです』

頭に音声案内が響く。


「え?」


 これはナビ!

 画面には地図とマークがいくつも。

 赤いマークが目的地で悲鳴の女性か!

 青いマークが中心のやや下。これが俺?

 青い線が赤い印に繋がる。

 そしてその赤いマークの周りに3つのオレンジのマーク。

 なんだこれ?


 赤いマークがゆっくりと移動して、それを追うオレンジのマーク。

 そしてオレンジのうち一つが赤いマークに接触する。


「いやあああああ!」


 聞こえた!

 オレンジは敵か!

 画面の下に『経路』『ナビ開始』『保存』とかあるが、迷わずナビ開始!


『そのまままっすぐです』

 言われた通りに走る!

 すげえ!俺速い!前世の俺より圧倒的に足が速いどころか人間の速度を超えてる!


 見えた!

 木の向こうに女性が見える。

 その女性の肩にかぶりつく大きな人型なのに人でないモノ。

 まずい!あのひと喰われる!

 俺は素早く怪物の背後を取り、さっき買ったばかりのナタを抜き力一杯女性を襲っている怪物の首を真横に斬った!

 手には怪物の脊椎をぶち切った感触!

「ぎいいいいい!」

 女性が痛みの声を上げる。衝撃で怪物の顎が動いたか!

 だが、怪物の顎は何故か力一杯開かれ彼女は自由になった。

 うまく行った!

 一瞬噛む力が増したんだろうが、解放されたのは良かった!


 ナビ画面のオレンジマークの一つが黒くなる。

 これが死んだ場合の表示か。

 他の2体も仕留めなければ!

 数メートル離れた2体のうちの右の奴にナタで斬り込む!

 怪物は拳で迎撃しに来たが、その拳を縦に切り裂く!

 奴は弱いぞ。これなら楽勝だ。

 腕から血を流しながらのたうち悲鳴をあげる怪物!そのままそいつの首をはね、素早く退いて今度は3体目!

 俺の強さを見た3体目は背中を向け走って逃げる。

 だが、追いついてその背中の背骨を切る!

 倒れた所を首をはねて制圧完了!


 だけど、問題はあの女性だ。

 怪物に噛まれてた。出血も見えた。

 大急ぎで女性の元に駆け寄ると、女性は出血で意識が朦朧としている。

 服は真っ赤どころかびちゃびちゃだ。

 これはまずい!

 女性の肩の傷口はでかくて肉も骨もやられてる。なにより出血が止まらない!


 こういう時はなんだ?

 ヤマゾンで医療器具?

 電話帳検索で医者?

 なんだっけ、なんだっけ?

 焦るといい考えが浮かばない。

 こんな場合はポーション? 

 いや、ヒールだ!


「ヒール!」


『ヒールを開始します。対象を選択してください』

 そうして女性と怪物3体にマーカーが現れる。

 迷わず女性のみを選択して『実行』

『ヒールを開始しました。ヒール終了まで残り324秒』

 女性が青い光に包まれた。

 これがヒールか?

 直に触らなくれもいいらしい。

 本当に効いているのかな?

 恐る恐る傷を見れば、逆再生のようにゆっくり傷が塞がっているし、血色が良くなっている。


 すげえ。ヒール機能があって良かった。これでこの人は助かる。


『ヒールを終了しました。意識を覚醒させますか?』

「ああ」


 思わず「ああ」と言ってしまったが良いんだろうか?寝かせておくべきだったかな?

 そして静かに女性は目を開いた。

 女性と目があう。


 ブラウンの瞳と髪。若く整った顔。

 綺麗だ。

 だが、髪は汚れていて艶がなく、手足は細く栄養失調ぎみ。

 胸はそれほど大きくはないがこれもひょっとしたら栄養状態のせい?

 そして衣類は超質素で布を切ったものを服っぽく縛って着てるだけ。そうか、この服は縫い目がないんだ。糸と針がないのか!

 でも、布はある?どういうこと?

 そして、服の隙間から見える肌がイマイチ。

 なんというか汚れてる。垢が結構ある。


 今更ながら女性からこの世界を想像する。

 なんか身なりが漫画のナーロッパよりも原始時代に近い。

 布があるのに針がない。

 しかも裸足。俺には木のサンダルがあったのに?

 風呂は入らない。

 装飾品は着けてない。


 相当貧乏か、原始的かのどちらかだ。



 女性が何度か下を見たり、周りを見たり、死んでる怪物を見たり、自分の体を見たりを繰り返す。

 ここは気を失う前と同じ場所で、怪物は全て倒されてて、かぶりつかれて怪我した筈の肩は無傷。

 そして自分の状況を飲み込んだのかこう言った。


「助けてくれたのですか?」


 言葉を話してる。

 文明はあるらしい。

 しかも通じる。


「ああ」


「あなたがひとりで?」


「そうだ」


 女性は言った。

「ありがとうございます」



 また女性が周りを見る。

 特に倒れてる怪物を。

 そしてゆっくり上半身を起こして真っ直ぐ俺に向いた。


「私は喰われたのでは?」


「怪我は治した」



「あなたは神様ですか?」


 困った。

 どう答えよう。

 神様じゃない。でもこの力は彼女にとっては神のレベルなんだろう。ざっくりと切れてた怪我が治るのだもんな。

 でも神だと名乗ったら本物の神様の機嫌を損ねそうだ。


「神じゃないが強い」

 曖昧に答えておこう。

 神の使いというのも考えたがやめた。

 そして想定外の言葉。


「あなたは魔王ですか?」



「・・・・・」

 こう言われるとは思わなかった。

 まさか俺は魔王?

 神様は俺の職業は言ってなかった。

 勇者?魔王?それとも?




「い、いや。ただ強いだけで人間だ」

 答えないことにしておこう。

 でも更に言葉は続く。


「勇者ですか?」


「・・・・」

 わからない。

 異世界に放り込まれると言ったら勇者が定番だ。

 俺はそもそも神に送られて、神に力を与えられた。


「そう・・・かもしれない」

 可能性はある。





「じゃあ、()()()()は偽物なんですか?」


「 ! ! 」


 勇者が既に居るのか!

 どうしよう?

 やはり曖昧にしておくべきか、否定するべきか肯定するべき?



「わ、わからない・・・」


 そんな俺を女性がじっと見て居る。

 ずっと見て居る。

 そして一度目を伏せ、

 再び顔を上げこう言った。




「あなたに助からない筈の命を助けてもらいました。どう考えてもあなた無しでは私は死んでいます。私はあなたの物になります。私の名はラララ。今日からあなたの物です」




 まじ?

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