ギルド殲滅の依頼
俺とコユキとラララで内装工事。(ガガガは遅れた畑仕事を手伝ってる)
外壁と床は出来上がってるので、内壁張り、部屋仕切り、ドア取りつけ、その他をやるのだけれど、中に使う資材は全て左手の中から出した物。角材、板、釘、接着剤、隙間材。しかも新たに道具も出した。
ラララ、コユキ組で作業してるのだけれど順調に進んでいる。特にコユキのハンマー使いが達人レベル。
全員個室にするつもりだったのだけれど、ラララとコユキが同室になった。同室にしたいと言い出したのはコユキ。ラララはひとり部屋でも良かったのだが、コユキが相部屋したいと押しきった。子離れ出来てない母親のよう。
そして俺はひとり部屋。
ベット置けばあと大したものは置けない広さ。タンスや物置は俺には要らない。だって左手あるし。だから家主の部屋なのにラララとコユキの部屋の半分以下しかない。
ガガガは部屋要らないと。なんか自分で自分の家建てるつもりらしい。
そして空き部屋が三つ。
あとはキッチン付きダイニング。
それに風呂場にトイレ。
排水はやや苦労した。
ここに地下排水なんかないし、浄化槽動かす常備電源もない。
結局、水洗トイレの排水の流れる先は、下の川っぽい所。水洗トイレの流す水はタンクに積めておくことにした。
トイレ、こんな程度のものを設置したが心配はしていない。
だって、異世界だから。
何処かで誰かが、
『異世界とアイドルはトイレに行かない!』
と、言ったとか言わなかったとか。
ーーーーーーー
そして、一週間ぶりの奉行所出張。今日は一人。
用は無くても奉行所かエチゴヤ邸には、たまに行くようにしている。
「おお、ユキオ殿」
「お久し振りですお奉行様」
そう言いながら、お土産の八つ橋を差し出す。あ、ガソリン缶もね。
今日は特に用事も依頼も伝言もないので八つ橋つまみながら世間話をした。
現在、町は平和そのもので、ギルドという自由経済の敵が消えて賑わっているという。ギルドから没収した金は公共事業として市井に流し、有能な剣士も雇った。
ガソリン缶は商人に行き渡り、活躍してるという。
今までも体積単位ごとの売り買いはあったが、全員で持ってる正確な容器はない。
中央奉行所はこれを商工会に有料配布を命じた。一個4000イセ。奉行所は若干利益が出た。
そして、行き渡ったとはいえ、まだまだ欲しいと言う。壊れることもあるしね。
因みにこの国には、重さの基準の天秤用分銅は既にある。
そして、奉行所を出て歩いていると後ろに人の気配。
つけられてる?
気がつかないふりをして歩き、曲がり角を曲がった所でそこの建物の屋根に飛び乗り、つけてると思わしき人物の後ろに飛び降り背後をとる。
「どうして後をつける」
そこに居たのは男女二人。
驚き振り返り俺を見る。
男は剣士風の殺気を放ってるが、女は普通で強そうには見えない。
あれ?
見ただけで殺気だとか人の強弱が判るようになった俺、凄くない?
そして、男が女を遠ざける。庇った?
「何のつもりだ?」
「剣士ユキオで間違いないか?」
俺、剣士だったっけ?
「さあな」
言わぬが吉。
向こうも名乗ってないし。
「いざ、尋常に勝負!」
なんでやねん。
町歩いてるだけでなんで勝負?
「やだよ」
「くっ!何故だ!」
「いや、何故だはこっちの言葉。なんでいきなり知らん人と勝負なんかするのさ。めんどくさい」
「おのれ、怖じ気づいたか!」
「いや、言ってることおかしいし」
なに?この男。
男と男が出会えば必ず勝負する国に生きてるの?
バカじゃね?
と、思ったが、簡単に女が自分から貰われに行く町も有ったわ。
「理由を聞こう」
「貴殿が姫の夫として相応しいかどうかを見極める為!」
「さっぱりわからん」
だいたい姫って誰だよ。
そもそも求婚をしてないしされてないし。
だけど、まさかという可能性に気がついた。
そこの後ろの人。
「ひょっとして、その娘?」
「当たり前であろう!」
うん、後ろに美人さんが居る。
背はラララくらい低く、市民的服を着てるが育ち良さそうな立ち振舞い。そしておっぱいも大きそう。改造前のコユキには及ばないけど。
体格的にロリ巨乳だが顔は大人。
あー、俺が知らないだけで有名人か。姫ね、はいはい、姫。
で、どこの姫? この町の?それとも別の町?
だが、この騒動で集まってきた野次馬のこそこそ話を聞くに、誰もこの人達を知らない。姫と呼ぶ人は居ない。
やっぱ、有名人じゃ無いじゃん。姫じゃないんじゃね?自称姫とか?
「悪いけど、貴方達を皆知らないみたいだが?」
「くっ、なんという屈辱」
いや、しらねーし。
そんなやり取りをしていたのだが。
「こんなところで何をしてるのだ、サクラ姫」
あ、姫と呼ぶ人が居た!
そうかそうかサクラというのだね。
て、そっちの声の方に向けば・・・・
うわ、悪人だ。
あー、あれだ。
ギルド関係者っぽいのが二人。
もう見るからに悪そう汚そう。酒場で足投げ出して椅子に座ってドヤって若手いたぶってそう。
「ひ、姫!下がって!」
サクラ姫を後ろに庇う男の人。
俺の目の前、左にはあの男とサクラ姫。右にはギルド関係者っぽい男二人。
あ、この男負ける。
そう感じた。確信した。
俺、見ただけで判断出来たわ。見る目があるってやつだね、成長したもんだ。大したことしてねーけど。
「おうおう、姫よこせよ」
「ならん!」
「なら勝負しろ」
「何を言う!」
この人、勝負拒否ったよ。俺にさっき勝負しろって言ったのに。すげえ自己中。
「この人は?」
そうそう。このギルドっぽい人は誰だよ?
姫を庇ってる男が答えた。
「我が町のギルドの者だ。姫を追って来やがった!」
「そういうことだ。ギルドマスターが下の首を長ぁーくしてお待ちだ。さあ渡せ。そしてお前は死ね」
はい、悪人確定。
説明ありがとう。
「では、俺が相手をしましょう」
「誰だてめえは」
「ただの通りすがりで」
いえ、つけられてました。
無理やり関係付けされました。
「邪魔するな!」
悪人1が剣を抜いて斬りかかってきた。
おそーい。
圧倒的速度で剣を奪い、悪人1の脛をゴンゴンと左右とも剣で殴り、足の小指も左右とも潰しておいた。
ふっふっふ、これは痛い。
倒れて地面に芋虫のように転がる悪人1。
「このやろう!」
怒って剣を抜く悪人2。
俺に向かって振り込んできた剣を、素早く後ろから覆い被さるようにして二人羽織風に掴み、悪人1の尻に刺した。
「いてえ!」
「あー、友達に剣を刺すって最低!」
やったのは俺だけど。
「うわああああ!無事かあ!」
「イテエ!何しやがる!」
「いや、俺のだけど俺じゃ無い!」
ケツから血が出てるわ。痛そう。
「いえ、この人が刺しましたー。みてましたー」
ちょっとふざけてみる。
「おぼえてやがれ!」
「早く手当てを・・・・」
ヨボヨボとこの場を去る悪人1と2。
「じゃあねー!」
と、見送った。
だが、姫と一緒にいた男の人が、悪人1と2を追いかけて後ろから倒した。うわ、スッゲー卑怯。
さっきまで尋常に勝負とか言ってた人の行動じゃないわ。裏表がある人ってサイテー。
そこへ砂煙をあげながら馬が走ってくる。
やがて馬は俺の側で止まる。
「ユキオ殿!」
「やあ、オーリン様」
領主オーリンじゃん。
「オーリン様どうしたのですか?」
「いや、今しがたエチゴヤに会ったのだが私の分の八つ橋がなかったので・・・・」
領主様、八つ橋ダッシュ?
しまった。領主オーリンの分を忘れてた。そういや、エチゴヤも前に八つ橋ダッシュしてたなあ。
「それはそうと何の騒ぎだ?」
「いやなんというか・・」
「ん?サクラ姫。そしてそこの男は・・・・いかん!すぐ捉えよ!そして隠せ!」
領主様が捉えて隠せと言ったのは悪人二人のこと。
そして野次馬に向かって領主オーリン様は口止めを始めた。見たことは他言するな、こいつらはギルド関係だから聞かれてもしらばっくれろと。
野次馬もギルドのこととなると領主オーリンの言うとおり秘密厳守を誓った。
他所の町のギルドとはいえギルドだ。チクりはしない。この町もかつてギルドにはひどい目にあっている。
そして悪人二人は地域住民に布でぐるぐる巻きにされて、見えないように奉行所に運ばれていった。みんな協力的だね。
そして俺とオーリン様とサクラ姫と男で奉行所に行った。さっき出てきたばかりなのになあ。
「ユキオ殿・・・・」
「い、いやあ・・・・」
エチゴヤと俺は顔を見合わせた。さっき別れの挨拶したばっかなのに。
そして、小部屋でサクラ姫から話を聞くことにした。
サクラ姫の話では、サクラ姫は隣町『クロマツ』の姫なのだが、クロマツはクロマツギルドが支配力を強め、領主も借金でクロマツ城をギルドに明け渡したという。更にサクラ姫もギルドマスターの『妾』にさせられるのだという。
領主も側近も金も力もなく、道端で物ごいしたり、バイト探しの日々。
そして、妾になりたくなくて身を隠して居たサクラ姫は護衛のジャン(この男)と一緒にこの町に来ていた。
そしてこの町で『強いユキオ』という存在を知って探して声をかけたと。そこでジャンが頓珍漢なことを言うからややこしくなった。
「お願いします!ギルドからクロマツをお救い下さい!」
「はて、どうしたものか」
事がでかすぎて、そして、他領のことなのでスパッと答えられない領主オーリン様。
「ユキオ様、どうかお願い致します。お礼は何も差し上げるものは御座いませんが、こんな貧相な女で良ければこの身をと心を差し上げます!」
ここでも来たよ、貰って下さい発言!
そうか、それで俺が姫の夫に相応しいか発言に繋がるのか。
いやいや、すっげーいい話だけど、皆が注目してる前で言わないで!
男全員の目が俺に集中してるってば!
それからサクラ姫は貧相ではない。主に胸が。
「顔を上げてください」
見たいから。
「そ、それでは!」
サクラ姫が顔を上げると・・あら立派。再度確認しました。
「私にお任せ下さい」
直後、青くなるジャン。
あー、サクラ姫にベタ惚れしてるわ、この男。
俺に勝負しかけたのは姫を独占したかったからかも。
「疑う訳ではないですが本当に大丈夫なのでしょうか?」
「うむ。ユキオ殿は強いぞ」
エチゴヤ援護有り難う。
その言葉に更に血の涙を流すジャン。
「ユキオ様頼りにしております」
その後、細かい事を色々聞いて、この町としての対応やら作戦やら話し合った。
あのギルドの二人のことは隠蔽(生きてます)することにして、ついでにサクラ姫もエチゴヤに匿ってもらうことになった。
そして、こっそりサクラ姫に気になることを聞いた。二人っきりでの逃亡生活してるのだ。そういうことも考えられる。確かめなければ。
「姫とジャンは好き合ってるの?」
「いえ、顔が好みではありません・・」
おお、ジャンよ・・・・
この町(始まりの町)の名は『オーリン』です。
領主は町の名前を貰います。
以前倒したギルド名も『オーリンギルド』になります。
町には領主が居ます。
町毎に国のように治めてるのです。