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ユキオvsコユキ

 エチゴヤの話は衝撃的だった。


 当時の文献と語り継がれた話。

 勇者と魔王が百年生きているという事実。


 これらから想像出来る事は、

 ・勇者と魔王は冒険者の居る世界からの転移者。日本からなら百年前には冒険者という概念は無い筈。

 ・彼等は不死。ヒールを若返りに使ってる。

 ・女が死んだというのは完全な不死じゃないことの証明。

 ・ギルドは潰してオッケー。





 俺は彼等より強いのか?

 判らない。

 もし、同等ならどうなる?

 あちらがもし手を組むようなことがあれば・・・

 或いはどちらかを仲間に引き入れる?

 いや、詳しい事が判らないうちは動けない。そもそも一度も見た事がない。

 先ずは村と町の安全を・・・・




「ユキオ様」



 はっと、現実に引き戻される。

 気がつけばコユキが俺に向いて居る。

 その顔の自信が失われて無いことから、全勝だろう。




「手合わせをお願いします」




「俺とか?」


「ええ」


 練習場の全ての目が俺に集中する。

 一度手元の茶をすする。


 冷めてる。



 ここに居る中で俺の戦いを見たことあるのはコユキだけ。

 その時のコユキはギルドのカウンターに座って見ていた。戦ってはいない。

 コユキは、戦わずして敗北を悟った。


 俺と直接戦った者は皆処刑されて生きてはいない。

 圧倒的チートで悠々自適な生活を想像していた。

 勇者と魔王はほっとこうと思っていた。

 だが、彼等は危険だ。

 そもそもが人々の敵。

 俺も強くなる必要があるのかも。





「だがな、俺とコユキじゃ勝負にならないぞ」


 その言葉の後、周りがどよめく。

 ここに居る人にはコユキは絶対強者。コユキを崇拝する者もいる。

 剣神コユキより強い者が居るとは信じられないのだろう。



「ええ、ですから、ハンデを貰います。どうです?」


「よし。いいだろう。そのハンデとは?」


「真剣、刃物は使いませんがこちらは勝つためならなんでもします。そして私を入れてこちらは5人」


「いいだろう」


 俺も実戦経験を積まなければならない。

 これからは食って遊んでるだけとはいかない。

 これもいい機会だ。


 コユキにもな。



「ありがとうございます」

 そういうとコユキは援者4人指名して奥のほうで作戦会議を始めた。

 どんな手でくることやら。


「ユキオ殿の剣が観れるとは興味深い。ところで勝てるのか?」


「普通なら5人相手でも楽勝です。だけどコユキがどんな奇策を使うか楽しみです」


「うむ。とても興味がある」


「お奉行様。()()()にご注意を」

 その一言は小声で言った。

 コクリと頷くエチゴヤ。


 刃物は使わないが何でもするというくらいだ、ここは屋外で小砂利敷。砂利を掴んで投げるくらいはしてくるだろう。それもランダムに。速度で劣る側が狙って投げてもしょうがない。恐らくは当てずっぽうかランダムに投げる。そしてトドメの一撃(本命)がコユキとは限らない。伏兵を仕込むのも定石だ。

 まともに打ち合えば、或いは長期戦なら俺の圧勝。

 恐らくは短期決戦でくる。


 観覧席(バルコニー)を降り、数ある模擬刀の中から短めのを持つ。

 それは長物でなくてナタと同じ長さのもの。脇差の模擬刀だな。




 5対1



 開始前。向こうは横並びだが、コユキは一番端。

 どうくる?

 開始の合図はエチゴヤがすることになった。

 エチゴヤの顔がニヤついて居る。楽しそうにしやがって。



「はじめ!」



 一斉に駆け出す5人。

 来た。雁行か!

 列の中心2人が俺にくる!

 だが、2人はややしゃがむ。途端に飛んでくる砂利!

 打ち合わせして左右の者が砂利を投げるタイミングで先行がしゃがむのか。しかも左右2方向からだから弾道が2種類でしかもバラけてる。先行は目隠しの役も兼ねさせたか。


 ゆっくりと流れる景色。俺ゆえの能力。

 他がスローモーションに見える世界。


 とはいえ多数の砂利は分かっていても厄介だ。数がある。

 ()()()()の通り過ぎるタイミングまで目を腕で保護。

 視界の下に現れる先行隊の1人。足を薙ぐ気か。

 となれば・・・・・



 頭上高くから現れるコユキ。

 来たな!

 先行の背中を使ったか!

 そうくると思っていたよ!


 剣を振り込むコユキ。

 上下同時攻撃か!


 下段先鋒にあえて突進し、圧倒的な速度で剣を踏み潰し、下向きによろめいた体を蹴って隣の先鋒(踏み台)に突き飛ばし、落ちてくるコユキの剣を真剣白刃取り!

 本当は模擬刀だからギュッと握ってもいいのだが、仮想刃物として白刃どり。

 白刃どりのまま空中のコユキを引っ張り、横方向の男の攻撃を阻止、反対サイドの男が切り込んで来たが動揺して動きが崩れた。その反対サイドの男の剣を持つ手を蹴り上げる。



 敵は崩れた。


 後は圧倒的速度の中て1人また1人と仕留めて(柔道でいう技有り以上の動作、剣道なら1本)で5人終わらせた。




「お見事だユキオ殿。わずか数秒のうちにこれほどの手を使えるとは、この目で見ても信じられん」

 自分だけが使える圧倒的速度のお陰だ。

 これがなければ1人相手にするのも大変だ。

 速さだけで終わらせた。


 だが、満足はしていない。

 転生者はもっと何かの能力が有るはずじゃないだろうか?

 魔法のような物が有る筈なのに、知らないで居るんじゃないだろうか?

 ボーケンシャは怪しげな術をと言っていた。

 気になる。

 だが、神様はあれきり話しかけては来ない。呼ぼうとしても反応がない。

 情報が欲しい。



「ユキオ殿が味方で良かったとしみじみ思ったぞ。コユキも負けはしたが見事であった。これからもよろしく頼む」

 お奉行様に皆で礼をした。




 ーーーーーーー




 エチゴヤ邸を後にして、土鍋を売りに行ったら、店舗の売り物は最後の一品だけになり、24万イセ也の値札が付いていた。値上がりしてやがる・・・

 聞けば、ギルドが無くなったお陰で景気が良くなって居るのだそうで、今まで値が上がりにくかった贅沢品もどんどん値上がりしてるらしい。

 と、いうことで土鍋の下取りも高くなった。一つが8万イセ、もう一つが6万イセ。(同じ物では無い)

 コユキは嬉しそうだ。帰りに反物をお土産に買っていた。村長にお土産にして渡すのかな?





 そしてコユキ号に戻って来た。

 街道番屋の皆から黄色い声で送り出され、帰途につく。

 運転手はコユキ。



「ユキオ様」

「なんだい?」


「今日は負けました。幾重にも掛けた手も見破られました。完敗です」

「まあな」


「絶対引っかかると思った罠もかからなかったし」

「へ?」

「へ?」

「罠は全部潰した・・・けど?」


 あれ?

 気付いてなかった。まだ何かあった?



 そうしてコユキは胸から暗器を抜いた。

 これには刃がついて居る。


「ユキオ様はおっぱい大好き人間(どすけべ)だから、どさくさに紛れて絶対乳揉みに来るだろうって仕込んでおいたんです」


 あっぶねええええええっ!

 何してくれてんねん!

 いやね、試合中3回位偶然のふりして揉もうかと思ったけど、思いとどまったんだ。




「やだなあ。君は私を誤解しているよ」

 助かったあああああ!


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