先ずは開墾
工事初日。
現場に村長とガガガに連れられて村の男衆5人が来た。
つまり今日は、村長、俺チーム4人、人夫5人だ。
村長も賄いとか手伝いしてくれるという。実際は自分の目で色々見たいのだろう。
さて、現場にはエンジンチェーンソーが二台と混合ガソリン。
そして強靭なロープが大量にある。
あと、刃物各種に大ハンマー。
皆、未知の道具に驚いている。
特にチェーンソーのエンジン音にはビビりまくり。でも、ガガガの予行演習を見たら、皆覚えようと必死になった。これは覚えた方が特だ。
ここはガガガに現場監督を任せることにした。
便利な道具は渡すけれど、村には村のやり方がある。
大型クレーンやユンボは出さないでおく。
やりすぎはいけない。
そして俺は紙に図面を書いた。
図面と言っても簡単なイラストみたいなもの。
寸法もどうせ正確には出ないだろうから、最低寸法だけ示しておく。
そして作るのは建物のガワだけ。中は自分たちで仕上げるつもりだ。
つまり、ガワはこの世界風で、中は左手フル活用。
個室は4部屋あればいいが、余分を見て6部屋。あとは共同スペースと水回り。そうすると2階建。
贅沢言うなら、丸太を横に積み上げたログハウス風が丈夫でいいのだけれど、そこまでは丸太の本数がないだろう。
丸太は柱と梁に使ってあとは土壁風モルタルだな。
車は外。
流石に車庫付きは無理だ。
さて、開墾が始まった。
とにかく木を切る、次々と切る。
おお、あの漫画でしか見たことない、パックリ切り口を作って反対をまた切ると言うのがどう言う理屈なのかわかった。何事もやって見なければ。そしてこれが結構楽しい。
うまく倒れるとおお〜〜〜!って、歓声があがる。
これ、倒れにくいなあという木。嫌な方向に倒れそう。
木の頭にロープかけないとダメだなという時に、コユキが活躍した。
この女、運動神経抜群である。
躊躇なく登る。しかも早い。
コユキの軽業に男どもはぶったまげていた。
ふふふ、最強の女は違うのだよ。
切った木は一旦出さないと現場が倒木で埋まってしまう。
人力で引いていたら遅すぎで日が暮れる。
最初はガガガ号で引き摺り出そうとロープを掛けて引っ張ったが、タイヤが滑ってダメ。
ならばということで、小型エンジンのウインチを取り寄せた。
これが結構イケる。男なら持てる大きさで牽引力が数トンある。しかも説明書見て牽引ロープを折り返して使うと言うのも勉強になった。ダブルというやつだ。
車の電源で12Vモーターの奴も考えたけど、倒れて来た木が車に当たったら嫌だし、混合ガソリンの空き缶も欲しかったし。
てなことで半日終了。
昼食。テーブルに並ぶ、鍋、鍋、鍋。
ええ、コユキの要望です。
まあ、好評なんだけどね。
そして鍋の〆は芋となんかの穀物で作った団子を入れるのがこの村の風習らしく、俺も初めて食べた。
なんだろう、きりたんぽ?だまこもち?どっかで食べたことあるような味で結構いける。そして、腹持ちが良さそうだ。
これは村長が持って来た。ありがとう。
そして、ここで初めてラララとコユキが料理下手なのに気が付いた。しかも俺も料理下手だから、もしガガガも料理しないと、俺たちチームは料理全滅になる。
これを見て、村長は明日も来てくれるという。村長すいません・・・・
そして午後も、切る切る切る!どんどん木を切る!
予定地の木は切ったが、建物作るにはまだ足りない。
さらにどんどん切る。
午後もこれで終了。
午後の作業後、ガガガが俺のところに来た。
「枝、もらっていいか?」
枝とは倒した木を丸太にするために切り落とした邪魔な枝。
見れば、ガガガの他に今日の人夫も俺を見てる。
ああ、薪にしたりするんだろう。
「いいよ。要らないし」
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
「え?」
そ、そこまで喜ぶ?
あんなものでいいの?
ゴミだよ、あれ。
「「「「「もうけたあああああ!」」」」」
いやいやいや、そんなに喜ばなくても!
「「「「「ユキオ最高オオオオオ!」」」」」
おいおいおいおい!
ああ、そうか。
この村はナタもノコギリも斧も無いから薪作りは大変なんだ。なのに、ここにはチェーンソーまであるんだから。
そして今日発生した不要枝はものすごい量だ。下手したら数ヶ月の薪問題解決かもしれない。
まさか枝だけでこんなに大騒ぎになるとは思わなかった。
そして翌日。
人夫が10人に増えた。と、思ったら、4人は薪係だった。
まあ、邪魔な枝がどんどん始末されて助かるわ。あれ結構かさばるし。
さて今日も昼食の準備というところで、昨日とは変化があった。
薪のお礼ということで鳥4羽が差し入れされた。
まあ、こちらの用意した食材もあるから今日くらいは手作りで。
だが。
調理場で立ちすくむコユキ。
剣神とも謳われるコユキが無抵抗の鳥を切れない捌けない。
鳥を掴んだり、ひっくり返してみたりするが、一向に調理が始まらない。
すでにラララが鍋にお湯をグラグラ炊いている。野菜も切った。ざくざく切るだけだからラララでも切れた。
だが、鶏肉が。
「これだから都会育ちは・・・」
「面目無い・・・」
さて、そこに村長。
村長は既に羽をむしった鳥を持つと、バキボキと関節を折り始めた。
そして金属でない木の刃物で切れ込みを入れてどんどん裂いていく。
引っ張りながら切り出せばチャチな刃物で肉がどんどん切れていく。筋目を通す?そんな感じ。
そして内臓を丸ごと取り出し、要るもの要らないものをどんどん分けて、要る方だけ別に焼き始めた。
身の方は鍋で煮る。熱が通ったらお湯からあげて更に解体。小さくちぎってある程度骨抜いてまた新たなお湯で煮る。
そこからは他の具材とグラグラ。
そして包丁も使わず15人分の鳥鍋が出来上がった。
「覚えたかい?」
「ははーーー!」
コユキが超深々と頭を下げた。
さて、昼飯も食べ、午後も木を倒す。
うう〜む。
すんげえ広くなったぞ。ついでに丸太も増えた。
男たちが薪欲しさにどんどん切り倒し、予定以上の材木と面積が手に入った。
隣に畑を作ってもいいくらいだ。(多分しないけど)
しかし、ここからが問題だった。
実は村に建築経験者は1人も居ない。
俺も無理。
だが、町の人には頼りたくない。チェーンソーも見せたくないし。
エチゴヤに頼めば職人を紹介してくれるだろうが、今回は頼みたくない。
そうだ!
平家にしよう。
ならば工事の難易度も危険度も減る。土地はある。材料も問題ない。
ちょっとだけ高床にすれば快適だろうし、その後のメンテナンスも楽だ(屋根とか)
よおおし、いける!