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人間関係の落とし所

 朝がやって来た。


 コユキとラララは関係を取り戻したようだ。

 車という密室で、俺には聞こえないが何か話もしただろう。

 今までとは違うだろうが、なんとか落ち着いて良かった。

 2人の声の掛け合い方が優しすぎてまだ違和感がある。

 まあ、時間が解決してくれると信じよう。


 さて、朝食は食パンとわかめスープ。

 そして昨日の残りの肉を雑に焼いた。ほんと、焼いただけ。味付け一切無し。めんどくさいんだもん。

 まあ、調味料あれこれ並べたからまあいいや。

 そして俺の我儘で粗挽きウインナー1袋分も焼いた。肉ばっかりだ。


 これでいいやと思ってたけれど。


「野菜も焼きましょう」

 コユキが言った。


「折角ガガガさんが用意してくれたのだし、無駄にしてはいけないわ」

 気を使ってるのか。


「ああ」

 そう言って、鉄板に乗せた。

 野菜だけが食べ残されて居たらガガガには感じ悪いし。ちゃんと食べてあとで礼を言っておこう。


 そして何事もなく朝食終了。



 そしてガガガがやって来た。

 そろそろ来ると思ってた。


 テーブルに着くガガガ。

 沈黙が苦しい。

 昨日の様子だとガガガも理解はしてくれて居る。あとは感情だ。


 先に口を開いたのはコユキ。


「ガガガさん。すいませんでした。本当にすまないと思って居ます。許されないのは分かっています。2度と悪事には走りません、約束します、誓います。だからどうかお許しください」




「また子供を人質にされても約束を守れるのか?」


 コユキが言葉に詰まった。

 その言葉は酷だ。

「解っているよ。俺も子持ちだ。ましてや母親なら尚更だ」


 理解は・・・してくれてるよな。

 だが厳しい言葉だ。


「もしも・・・もしも、窮地に陥って動けなくなったなら・・・・黙って俺に斬られろ。せめて苦しまないようにしてやる」


「はい。有難うございます」

「その時は子供だけは必ず助ける。約束する」

「お願いします」


 厳しい言葉だが。これが最大限の譲歩で落とし所。

 罪を背負った者は許し切ってもいけない。

 だが許さなければいけない。ガガガにとってこれが精一杯の許しだろう。


「ラララ」

 ガガガが今度はラララに向かう。


「すまない。俺もコユキと変わりはしない。俺は村の一員だ。ラララを捨てる者だと扱って来た。最後はお前を助ける為に働いたが、あれはトムムが心配だからだった。ラララの為じゃ無い。いや、助かればいいとは思って居たが」


 突然始まったラララへの謝罪。

 ガガガのあの時の本心。


「村の皆は思って居た。早く終わればいいと。辛いものを見続けるなら早く連れて行ってくれと。早くお前の姿が見えなくなった方が楽になれると。トムムが動くまで俺もそちら側だった。俺もラララに全てを押し付けた村人の1人なんだ。許してくれラララ」


 ギルドに飲まれ続けたコユキと村に飲まれ続けたガガガ。罪の大きさならコユキの方が罪深い。

 だが、ガガガは思ったのだろう。

 コユキと自分はどれほど違うのかと。人を責めるほど自分は高みに居るのかと。


 そして再びガガガはコユキに向かう。

「すまない。俺が動けなくなったらお前が斬ってくれ」


 コユキが子供を獲られるなら、ガガガにもあり得る。


「解りました。その時は貴方の大切な人は必ず助けます」

「頼む」



 ラララは何も言わない。

 彼女は恨んでも居ないし。当たり前だと思ってる。

 贄の子。

 死を安易に受け入れてしまう存在。

 ガガガや村人に恨みを持たない不気味な存在だ。

 そんな子を作ってしまった。

 もっと普通の子になってほしいと思った。


 そしてこの関係になんとか平和が戻って良かった。

 正直、命令をすれば3人は動くがそれはよく無い。

 求めてるのは奴隷じゃ無い。

 楽しい関係で居たい。



 そして俺だけが闇を明かさなかった。




 ーーーーーーー




 1人町に向かう。

 1人で車に乗るのは初めてかもしれない。今日は俺の車。

 コユキに食料を預けておいたから多少帰りが遅くなっても大丈夫だろう。ガガガも居るし。


 町に到着する前に車をしまう。

 要件は奉行エチゴヤに会う為だ。

 電話があるわけじゃないし、用事があるかどうかも会わなければ分からないのだ。

 手紙はあてにならないそうだ。

 ついでに、あまり村に来て欲しく無い。見せられないものがいくつもある。



「やあ、ユキオ殿。お茶でもどうだい」

「有難うございます」


 そうして町の様子を教えてもらった。

 今の所、ギルドの残党は動きがなくこのまま消滅するだろうと言われた。

 次の新たなギルドが創設されたり、他の町のギルドが遠征してこないように監視をしているという。

 そして奉行所の剣士の底上げのためにコユキに師範をしてほしいと言われた。

 だが、強い者が良い指導者とは限らない。


「それは()()()聞いてみます」

「うむ。是非ともお願いしたい。強い者と手合わせするだけでも価値はあるのだ」


 そうかもしれない。

 俺には分からないけど、そういうのは聞いたことがある。




「ところで話は変わりますが」


 そう言って、袋から()()()()()を取り出す。


「こういう物がいくつか手に入るのですが」


「ほほう。素晴らしい鉄缶だな。良い形をしておる。しかも軽い」

「何かに使えないでしょうか?」

「うむ。綺麗なので飾っておけばよかろう」

「いえ、使い道が欲しいのです。役に立つ使い道があればと」

「まあ、物入れだろうな。水、砂、食料。色々ありそうだが」


 それは村でも同じ意見だ。

 ただ、それでは他の容器と変わらない。


「ところでどの位手に入るのだ?」



「そうですね、直ぐにと言うなら100個は楽に。とりあえず今は5個ほど」

 そう言って、残り4個を袋から出す。


「なんと!」

 エチゴヤが驚く。

 5個の缶を凝視するエチゴヤ。


「全く同じでは無いか!」

 そりゃそうだ。同じガソリンの容器だもん。

 エチゴヤは二つづつ缶を持ち大きさ形を比べ続けてる。

 みんなおんなじだけど?


「模様も全く一緒ではないか!」

 ああ、『ガソリン』のシールね。

 まあ、印刷だしね。

 あ、この世界には印刷はないのか。しまった、オーバーテクノロジーやらかした。


「ユキオ殿!100個と言われたが、もっと手に入らないか?」

「あー大丈夫かも。同じの、今工面できるのは140個です」

「なんと!」


 なんで大騒ぎに?


「あのう、使い道ができたのですか?」

「おうよ。おい、商工会長を大急ぎで呼べ!」


「ははーー!」

 なんか始まったぞ?

 奥から商工会長らしき人が来て、エチゴヤとあれこれ話合って居る。

 長引きそうなので、俺は茶菓子とお茶を頂いてた。


 そして話がまとまったらしい。


「ユキオ殿。他のも全く同じなのだな?」

「そうです」

「よしわかった! ひとつ3000イセで売ってくれまいか?」


「いいですよ。ところで何に使うんです?」



「はかりだよ。これだけ大きさが揃って居るならば商人達に一つづつ持たせれば便利ではないか。商人に売って広めれば商売になるし、分量がなにより正確になる」


 その発想は無かった。

 ゴミが一個3000イセなら儲けもんだ。

 そういや、缶に同じシールが貼って有るから証明にもなるんだな。そうかそうか。

 とりあえず140個あるから、42万か。いいんじゃない? 購入目的は中身だったし。(0円だけど)

 そのあと、「ちょっと取りに行ってくる」といって1時間暇を潰し、何食わぬ顔で135個納品して、即金で貰った。ラッキー!




 よおおし、缶がモデルチェンジする前にもっとガソリン買うぞ!

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