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夜会

 俺チーム四人で会議。



 と、いう名の食事会。

 家族おいて自分だけ旨いもん食いに来るガガガ。駄目な親父だ。奥さん子供が哀れ。でも、誰も彼もにはバラせない話もする。

 それに、俺の恩恵を村に与えすぎると俺が去った時にかえって悪いことになりそうで、それを心配している。村には俺に忠誠を誓った者は大きな恩恵を受けられるが、命を差し出して貰うこともある、ということにした。



 メニューは焼き肉。

 焼き肉は村でも食べるが、タレが独特。ニンニクというものがないから、この村の焼き肉は素っ気ない。


 七輪炊いて焼肉の鉄板置いて。色んな肉を焼いて食べている。俺はタンと軟骨がマイブーム。まあ、野菜はガガガが持ってきた。いつも貰ってばかりじゃ悪いからと。うまい野菜や、変わった野菜や、口に合わない野菜を色々食べる。ドキドキだ。俺に食べさせられる人はこういう感じなのかな。




「なあ、ガガガ。ラララに何か仕事をあたえられないだろうか?」


 ラララはひとりで森に入る。皆との畑仕事に混じらない。ぼっちなのだ。だからといって今更ながら仲良くするのは至難の技だ。


「そうだなあ。贄の子は将来居なくなると思って大した役職を与えないからなあ」


「だが、俺とコユキが現れて状況は変わっただろう。そう、俺が居るなら危機はないし、俺が出掛けててもコユキもいる」


「コユキって強いのか?」


「強いぞ。町でコユキに勝てるヤツは居ない。奉行エチゴヤのお庭番ですら足元に及ばないぞ」


「そうかー。なら外敵の心配は減るな。しかしなあ。仕事かあ」


「いえ、そんな気を使わないで下さい」


「いや、ラララ。将来のことも考えないと。なあガガガ」


「まあ、考えてみよう。ユキオの方がなんかあるんじゃないか?」


「缶は終わらせたし。あれは女の子の仕事にはいまいちだし」


「缶?」

「缶?」

「ああ、あれ」

 コユキだけが思い当たった。


 俺は左手から空き缶を一個出す。左手内にはあと百数十個ある。


「へえ。凄い。鉄?でも軽い」


「これはな、車のガソリン、つまりエネルギー・・・・いや、車の食料の取り出したあとの空き容器だ」


「へえ。凄いなー」


「これ仕上げるのをラララの仕事にしようかと思ったけど、毎日やるほどの量はない。ところでこれ売れるかな?」


「うーん、売れると思うけどいくらなんだろう?すっごい綺麗で立派なんだけど、ただの入れ物だしなあ」


「同じのがあと140個くらいある」


「ひ、ひゃ・・・・」


 そう。

 良いものだと思うのだが、使い道がありふれてる。容器ならこの世界にも多数ある。


「鍋にする?」

「小さいし、火にかけると長持ちしないと思う」

 丈夫と言っても、毎日の鍋にするほど丈夫ではない、薄いのだ。


「コユキ、なんか思い付く?」


「うーん。良いものなのに、これといった使い道がないわ。数が有りすぎて価値が下がりそうだし」


「ラララ、なんかない?」


「いえ、全然。すいません」


「うう〜ん。まあ考えておこう」

 缶を左手にしまう。




 ガガガに本題を切り出す。

 今日の焼肉はこれのためとも言っていい。


「話は変わるが、ガガガ。ギルドに押し入った時に最後に協力してくれた女を覚えてるかい?」


「ああ、覚えてる。それが?」



 食が止まるコユキ。

 これから何を話すかもう解っただろう。


「彼女をどう思う?」


「どうって、ギルドの人間だしな。恨んではいるよ。協力してくれたのは都合よかったけど」


「ただ、彼女にも仕方がないことがあったんだ。人質を取られて仕方なくギルドの支配下にあった」


「そういうことか。なら分からない事もない。だけどやっぱりギルドの人間だった訳だし。たしかあのギルド嬢だろ?」

 そうだ、彼女は直接手を下してないと言っても、ギルドの一員だった。

 多くの人が不幸になった。その片棒を担いでいる。


「ああ。彼女はもう改心している」


「簡単には許せないな。だいたい人質って誰よ」




「息子よ」




 ガガガが声の元コユキに向く。

「え?」




「いや、でも、え?でもだからってギルドになんて!」


「ガガガ、コユキは元ギルド嬢だ。あのギルド嬢だ」

 信じられないと言った表情のガガガ。

 ガガガは暫く一緒にいても気づかなかった。確かに一緒にいた時間は短い。そして姿が変わりすぎている。


「私だって分かってる。どんな理由が有ってもギルドに行くのは悪い事だって。人の不幸で稼ぐギルドなんて死んでも駄目だって。そんなの分かってる。でも、子供の為なら人も殺すわ。あの子の為なら100人だって1000人だって殺すわ!」

少し声色が高い。



 沈黙。




「間違ってるのは私ね。御免なさい」


 そのままコユキは立って涙を隠しながら走り去ってしまった。

 こう・・・なるよな・・・


 ガガガが何かを言って欲しそうに呟く。

「ラララはどうなんだ?」


 悲しいのはラララも一緒だろう。

 最愛のトムムが死んだ。

 コユキが手を下したわけでは無いが、間接的にコユキも関係している。


「これは言っておかなければならない。この間、トムムとガガガを殺した男のナオトを倒したのはコユキだ」



「でも・・・ラララはどう思うんだ!」


 言い切れない答えをラララに言わせたいガガガ。

 だが、答えは違った。





「私は贄の子だから」






 そう言ってラララは席を立った。

 ラララも暗闇に消える。


 肉が焦げる。


 これはもう食えないな。

 干からびた肉を取って、七輪にくべる。

 黙り込むガガガ。


「なあ、ユキオ。先に言ってくれよ・・・」


「それが今日だ」


「ラララは知っていたのか?」


「コユキから聞いてなければ知らない筈だ」


「ラララ、あの様子だと許してるのか。トムムの仇だぞ」


「コユキはいつも心を痛めてた。いつも身を引き裂かれるような思いでギルドにいたんだ」


「解ってるよ・・・・俺だって人の親だ」


「そうだよな」


「頭冷やしてくる」

 そう言ってガガガはゆっくり立ち上がった。


「コユキのことは秘密だぞ」

「解った。言わない」


 そして別の方向に歩いて消えた。

 理解はしていても・・・・だよな。



 コユキが心配だ。






 風呂の場所より更に外。


 そこにコユキは居た。

 膝を抱えて泣いている。

 間違った人生。正義より自分の子供を選んだ。

 他人の命より我が子の命。

 会えない我が子の為に生きた日々。


 横にラララも居る。

 ラララはどう思ってるのだろう。

 立ち聞きは趣味じゃ無い。

 俺もコユキの側、ラララと反対側に座る。


「場を台無しにして御免なさい・・・」


「いいんだ。肉ならまだある。それに俺はコユキを手放す気はない。大事だからな」


「すいません」


 これは言って置きたかった。

 俺はコユキの味方だ。


「ラララ、御免なさい。私のせいで貴方を不幸にしたわ」



「コユキが殺せと言ったの?」


「言ってない」


「コユキが拐えと言ったの?」


「言ってない。でもギルドの一員だったのよ」


「憎んでます」


「・・・御免なさい」




「でも、私は贄の子。勇者が来ても魔王が来てもギルドが来ても差し出される女。あの時思ったの。ああ、この日が来たんだって。もっと村で生きて居たかったけど、いつ来るか判らないその日を待つのも疲れたの。もういいやって。全部諦めれば楽になれるって。でもトムムが死んで泣いたの。あの時思ったの」


 ラララも泣いている。

 コユキも泣いている。


「もっと早く死んでれば良かったって。そうすればトムム死ななかったって」




 ぱぁん!



 コユキがラララの頬をぶった。

 途端に大泣きするラララ。


「だって!だって!」

 更に泣くラララ。


「トムムの気持ちは良く解るわ! トムムは貴方の命の為なら全てを捨てて、全てを失ってもいいと思ったの!ラララの為に絶望も受け入れたの!たった一つのものの為に立ち向かったの! 死ねば良かったなんて言わないで!」


 息をつかせず、喋りきるコユキ。

 子供の為に全てを捨てたコユキ。ラララの為にし全てを捨てたトムム。同士かもしれない。




 

「トムムが聞いていたらどうするのよ・・・・」

 そしてラララはコユキにしがみ付いてついて泣いた。





 暫く泣き続ける2人。

 静かになったのは随分後だった。



 頃合いを見て声をかける。

「ラララ。どうするんだ?」




「分かりません。どうしたらいいか分かりません。コユキが憎いです。でもコユキが好きです。どうしたらいいかわからない」


「今日はコユキ()抱いて寝ろ」

「はいっ!」

「もう寝ろ」



 そして2人はコユキ号に向かった。

 ガガガは戻ってこなかった。

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