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コユキ バージョン2.0

 2045秒は長い。



 ユキオはしまったと思った。

 始める前に準備しておけば良かったと思った。


 まず、2045秒が何分か分からない。

 ユキオは引きこもりでバカだったが壊滅的って程バカじゃない。

 学校に通ってる頃は暗算もしたけれど、ニートになってからは全くと言っていいほどしてない。

 部屋でならパソコンの電卓機能を使うのだが、当然ない。

 電卓を取り寄せようとしたが、果たして大切なヒールの最中に取り寄せをしていいのか迷った。同時操作ができなくて『強制終了』されたらマズい。コユキが痛みを顧みず体を二箇所も傷つけてまで始めたヒール。エラーが挟まるのもマズいし、処理速度が大幅に落ちて長引くのもマズい。コユキは立っているのだ。寝てはいない。

 最悪、フリーズしたら大失敗だ。


 紙の上の計算もできない。ここには紙も鉛筆もない。

 地面に書いて計算しようとしたが、草がびっしり生えていて書けない。

 34分と分かったのは随分後のことである。





 ユキオはしまったと思った。

 始める前に準備しておけば良かったと思った。


 コユキのヒールが始まって、1分ほどで乳首が再生された。

 それはもう素晴らしいと言うほかない。

 至高のお宝の最後のパーツが蘇ったのだ!

 あまりの神々しさに(かしわで)を叩こうと思ったほどだ。

 だが、膳がコユキに聞こえる。

 コユキの意識の邪魔をしてはいけない。彼女は今神経を研ぎ澄ませてイメージを作っているのだ。

 寝ているはずはない、立ってるのだから。

 そうだ、ヒールを始める前にカメラを用意しておけば良かったと後悔。

 今なら、小雪は目を閉じている。

 デジカメは電気がない世界では使いづらいが、ポラロイドと言う手もある。

 始めに用意してテントの中に隠しておけば良かった。




 ユキオはしまったと思った。

 始める前に準備しておけば良かったと思った。


 コーヒーが飲みたくなった。

 以下略。



 ユキオはしまったと思った。

 始める前に準備しておけば良かったと思った。


 椅子を出して、コユキを座らせておけば良かった。

 30分は長い。立ったままは辛い。

 そして、力を抜いて座ってもらった方が景色がいい。色々と。

 姿勢がいい立ち姿はかっこいいんだけどね。





 2045秒で青い光は消えた。

 ヒールは終了した。

 長かった。




「コユキ、よく頑張ったね。終わったよ」


 その声の直後、コユキが膝をつく。

 立ちっぱなしは流石に辛かったらしい。

 だが、コユキがグラつかず立ち続け、イメージ作りを完遂したのは尊敬に値する。相当な精神力の持ち主だ。


「私は・・・・どうなったのですか?」


「待ちなさい。今、鏡を出そう」

 この間出した手鏡でなく、姿見の大きい鏡を出す。

 それをまだ地面に座り込んでるコユキの前に立てる。


 恐る恐る顔をあげ、鏡を見るコユキ。




「これが私・・・・・」

 コユキは食い入るように自分の姿を見る。

 立ち上がって全身を映したり、背中をみたり、手を上げてみたり。



「凄い」

 かなり感動してる。動揺ではなく感激だ。もう弛んだ腹もない。大きすぎる尻もない。体脂肪率は低いだろう。腹筋もある。肩にも肉がついた。足は逆三角形の筋肉がぎゅっとついているがゴリラではない。顔も精悍になった。そして、背が5、6センチ高くなっている。以前もそれほど小さくないコユキだったが、男に比べれば低い。これで目線が男と同じくらいになった。だいたい170センチくらいい。


 裸のまま俺に抱きつくコユキ。

 相当嬉しいようだ。服のことも気にせず男に抱きつくなんて。


「ユキオ様ありがとう!」


「ああ、よかったね。コユキが頑張ったからだよ」


「主様もお疲れになったようですね。すいません私の為に!」


「あはは、疲れてなんて居ないよ」



 疲れてなんて居ない。

 Cカップに激減したおっぱいにガッカリしただけさ・・・



 解ってるよ。これが最善だって。

 解ってるよ。剣士として爆乳は好ましくないと。腕に当たるし。

 解ってるよ。走ることすら苦痛の胸は邪魔だって。

 解ってるよ。爆乳は社会生活にも邪魔だって。スケベが見てくるし。

 解ってるよ。今のプロポーションだってスーパーモデル級だって。


 解ってるよ、解ってるよ、解ってるよ・・・


 ただ、あの胸に飛び込んでみたかっただけさ。

 耳も隠れてしまいそうな谷間に顔を埋めてみたかった!

 手で抑えきれないのを味わってみたかった!

 仰向けにして揺らして乳津波をさせてみたかった!

 こうなると解っていれば先に・・・・




 もっと良い作戦もあっただろうに。

 俺のバカ・・・・・



 ーーーーーーーー




 さて、ヒールも終わったし、服を着てしまったコユキ。

 精悍になった顔。伸びた足。

 筋肉がつくと何気ない動作にもメリハリが出る。


 益々美人になったよな。

 胸減ったけど。

 なんていうか機能美つうか、強さが美しさになったというか。

 胸減ったけど。


 だが本人は、軽い!動きやすい!と言って大満足。

 良かったですね。ええ。


 肉体改造の次は装備だ。

 押し付けに近いが、スポーツ用シューズを履いてもらった。

 足の踏ん張りが悪くては動きが鈍る。

 物のない世界の人は靴を変えたがらない。使えるうちはもったいないから変えない。

 だが、この世界の靴はひどい。

 上の足の甲の方こそデザイン重視でまとめてあるが、靴底は硬すぎる木製か柔らかすぎる革製だ。


「変な感じ」

 とコユキは言っているが、

「騙されたと思って暫く履いていてくれ」

 と押し付けた。

 色は目立たない茶色が欲しかったが無いので黒にしておいた。

 アイテムボックスの左手の中には合わなかったサイズが何足か転がってる。



 そして。


「コユキ、これをつけてごらん」

 そう言って渡したのはスポーツブラ。背筋も伸ばしてくれるし揺れも減って良いと思うんだが。

 男の俺が付け方指南するのは変な光景だが、コユキはふむふむと聞いて居た。

 以前、暴れる爆乳に悩まされていたコユキはすぐさま飛びついた。

 そして装着。後ろを向きながら作業。


 ねえ、さっきまで裸で立って、裸で抱きついて来たのになんで見せてくれないの?


「凄い! これ、素晴らしい!」

 良かったですねえ・・・・

「そうか。良かった」


 そして、もう一つのブラを出した。

「実はこれを用意してたんだ・・・」

 それは今つけてるブラの4倍はある爆乳サイズ用ブラ。

 無駄になってしまったが。






「改めて見ると人間のサイズじゃ無いですね」

(元)貴方用です。





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