元ギルド嬢 コユキ
お白州=裁判
沙汰=ここでは判決
お白州。
普段のお白州は公開のことが多いが、今回は非公開。
恐らくはギルドの残党とかの襲撃を避けてのことだろう。
かつての仲間たちが次々と沙汰を言い渡される。
半数が打ち首。
2割が懲役。
残りが捜査取り調べ延長、勾留。
以前ならギルド員は逮捕されても証拠不十分とされ釈放されて居たが、今回は違う。
釈放は無い。
おそらくは我が主ユキオというバックが奉行所についたからだろう。
犯罪も正義も力がなければ出来ない。
なにせ、ギルマスがあっさり打ち首を言い渡されたのだ。
以前なら、人々の目の前で犯罪をしても無罪だったのに。
「コユキ」
私の番だ。
打ち首だろうか。
女郎堕ちは勘弁してほしい。女郎なら死んだ方がましだ。
「本来なら打ち首なれど、最後に見せた正義。見るところがある。また、今回の功労者ユキオ殿のたっての希望で放免とする。身元引受け人はユキオとする」
緊張が一気に溶け去る。
一途の望み、とても細い望み。それが叶った。
ユキオ殿に賭けたのは間違いではなかった。
「ははっー!」
頭を下げたのは奉行エチゴヤに向いてだが、心はユキオ殿に下げた。
お白州は終わった。
ーーーーーーーー
お白州が終わり、私だけが小部屋に移された。
簡素な椅子に座らせられるが罪人の扱いじゃない。
ギルドの男たちは皆私を恨んで睨んで居たな。
ギルドの裏切り者、それが私。
ドアが開く。
入って来たのは奉行エチゴヤと我が主ユキオ。
番が私の手の縄を解く。
手首をさするが、なんとも無い。赤くなっただけだ。
主とエチゴヤも座る。
「コユキよ、ユキオに感謝するがよい。お前の死罪をひっくり返したのはユキオ殿だ。ユキオ殿がお前を相当かってるようだ。感謝するように。そしてまた悪の道に戻る様なら容赦はせん。それはユキオ殿も同じだ」
ユキオ様に逆らうなんてありえない。
あの強さは本物だ。どんな手を使っても勝てはしない。
私は強い。
あの場所で一番強かった。でも、ユキオ様には勝てない。戦わなくても判る。
私は美しい。だが、それは不幸なことだ。
美しいと言うことは皆が奪いに来るのだ。
ギルドの2階にも居た。美しいが故に奪われるだけの娘たち。
私は違う。奪われたく無いから強くなった。
虐げられたく無いから強くなった。
だが、最後は負けた。
ギルドに負けた。
だからギルドの犬になった。それがあの時の最善だった。
あの位置なら私は安泰。
ギリギリのバランスの安全を得た。
だが、ユキオ殿が来た。
だがユキオ殿を見て観念した。勝てない。無理だ。
だから下った。
そして賭けた。
これは終わりと始まりになるのでは無いかと。
「コユキというのだね。いい名前だ。迎えに来たよ」
「お待ちしておりました。ご主人様」
ああ、助かった。
「これは君の物だ。返しておくよ」
黒い小箱が置かれる。
ああ、こんな物まで。もう戻ってこないと思ったのに。
「ありがとうございます」
言葉は少なくていい。
この先の私は主の駒だ。感情は出さなくていい。判断は主がする。
「君を釈放して貰う代わりに、仕事を受ける事になった」
「なんでしょう?」
「元ギルドのナオトの討伐だ。君には手伝って貰う。今現在彼の行動が読めるのは君しか居ない。どうだ?」
ああ、ナオトか。あの忌々しいナオト。
それは願っても無い。
「主、それならば私が囮になりましょう。この裏切り者という餌に食いつく筈です」
「いいのか?」
「ええ。なんなら私が斬りましょう。少々恨みがございます」
少々でもないんだが。
主よ察してくれ。
「なら、武器が要るな。すぐ出かけよう」
「え!」
「おい!」
驚くエチゴヤと私。
そりゃそうだ。ついさっきまで犯罪者だった私に武器をと言うのだから。
「問題ない筈だ。それより時間が惜しい。すぐ出よう」
我が主はせっかちらしい。
ーーーーーーーー
主と武器屋に来た。
店主は驚いて要る。逮捕された筈の私が居るのだから。私がギルドの賄賂で釈放されたと思ったのだろうか?そうじゃないんだが。
しかも堂々と武器を吟味して居る。
「コユキ、良さそうなのを探してくれ」
「はい」
金はどうするのだろうか?
私は全財産没収された。
主は金持ちなんだろうか?
あんなジュエリーをくれる位だから金持ちなんだろう。
だが何でもかんでも貰うのは忍びない。
いざとなればあのネックレスを・・・・
まあ、まずは剣を探そう。
女性用で好みのものというのは少ない。そもそも女性用のサイズがない。男性用の年季が入って短くなったやつがあれば・・・
これだな。
長さ、重さ、厚み、バランス。
「主、これがいいです」
「ふむ」
私から剣を奪い、色々観察したり測量したりする主。
「まさかこれを選ぶとは・・・・」
なんだろう?なにか思うところがあるのだろうか?
「どうでしょう?」
「分かった。一旦店を出よう」
「?」
店を出ると人気のない場所を狙って歩く主。
当然私もあとを歩く。
「ここでいいか。座って」
「はい」
そうして、主はうんうん唸りだした。
何を考えて居るのだろう?
「コユキ、今から見せることは秘密だ。実は金はないんだ」
「え?」
金がない?
金持ちそうなのに?
「まさか日本刀とはね」
そう言いながら、主は自分の左手に右手を刺した!
手の中に手が潜る!
そして主人が手を引き抜くと、さっきの店で私が見ていた刀とほぼ同じ刀が生えて来る!
手から刀が生えて来る!この人は何者?
「気に入ってもらえると嬉しいが」
「そんなことって・・・」
「これは秘密だからね。それでこの刀はどうだい?」
「大変すばらしゅう御座います」
これがコユキの素です。




