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総合神(仮)クラリス

佳子の愛車

スズキGSX-R1000R


コユキの愛車

スズキRM-Z450


クラリスが乗ったやつ

ヤマハWR450F-2Trac

「49時間47分か」


「先輩の予測よりも長かったな」


「予測がうまくできないとは私も老いたか。あの居残り神が四種のハイブリットだったとは分からなかった。せいぜい二種だろうと思っていたのだが」


「全てを見切っていると思ったら大間違いだよ、先輩殿。しかしクラリスは勝ったか。人間側のフル装備戦闘兵を弾にした絨毯爆撃隊との交戦はぞっとしたぞ」


「銃剣フル装備の神兵が空から雨のように降ってくるのは僕も初めて見たよ。それを少しの神力と足技と刀だけで制圧するとはな」


「師が良かったんじゃよ」


「全く。大股開くなんてする娘じゃなかったのに」


「私はいつも開いておるぞ?」


「桃はズホンを履け」


「パンツさえ履いていればどうということはない」




 ーーーーーーー




 既に神が居なくなった神社の本殿。いや拝殿?

 畳じゃなくて板張りだよ。


 麻生さんに呼ばれて来てみたけれど、既に多くの人が集まっていた。半分くらいは友弥(だんな)の仕事関係で見たことある人。あとは運命の日を知る人達。そのなかには当然両親も。お姉ちゃんは私と一緒。

 場が広くないのに4~50人もいてかなりぎゅうぎゅうだ。どうしてこんなに狭いのに男の人ってあぐらかくかな!

 こんな大勢の男多めの所でお姉ちゃん大丈夫かな?と思ったけれど大丈夫そう。三人の男にレイプされる途中だったお姉ちゃん。男を見たらおかしくなるかもと心配したけど大丈夫だった。

「姉の心配するなんて生意気」

 だってさ。

 でも、言えないけど犯人が死んだと聞いてからお姉ちゃんの空気が変わったのよ。

 なんか怖い。


 見える外にはトラックに載せられた無惨なGSX。荷台は漏れた油と水でべたべた。タイヤ空気抜けてるし。

 その他に何台かミニバンがある。神社って車入っちゃ駄目じゃなかったっけ?いくら神は居ないっていってもねえ。

 そしてその脇に青いモトクロッサー。

 誰の?


 暫く待っていたら神社の人と麻生さんと山岸さんとクラリスが歩いて入ってきた。クラリスひっさしぶり!こっち見て!

 そして場の一番すごい場所に陣取り椅子に座る。

 つまりはこの人達が一番偉い?


 クラリスの衣装はこの間とは違う。ドラム缶にもたれながら見たクラリスは、あっちの世界のちょっといい普段着みたいな奴だったのに、今は神社の巫女さんが着ているような赤い袴の衣装。巫女衣装を借りたな。

 巫女衣装はいうなれば和装なのに、そこに載ってる顔が白人で金髪。白人っぽい八割美人だ。なんか変。

 まあ、素っぴんだし。


 本当はクラリスにきゃあきゃあと飛び付きたかったけれど、こんなに人が居るんじゃ迷惑だしクラリスも疲れてるかもしれないし、感動の再会の儀式はぐっと我慢だ。


 そして山岸さんが立って話を始める。


「私の挨拶は無しにしよう」


 うん、おっさんの話は長いから賛成だ。


「紹介しよう。彼女の名はクラリス。新たな神だ。生物と人類の存続の為に来てくださった」


 そういうと、選挙の立候補者の紹介シーンのようにクラリスが立ち上がり山岸さんの少し前まで出る。

 因みに私が知ってる選挙は生徒会選挙だ。

 うおい!

 わたし、友達に神様が居るってすごくない?


 全く緊張していない低い声が響く。

「クラリスです。本名はクラリス・ニジェ・640。リー・ストビア国の出身です。貴方方が異世界と呼んでいる場所とは違う異世界出身です。私は二度目の異世界転移です」


 ううむ。

 ここにいる(ほぼ)おっさん達は異世界のことは知っているのだな。運命の日のことも知ってるだろうし。

 しっかし、名前の最後に数字がつくとは変だよ。


 尚もクラリスの選挙演説は続く。


「先程、最大の障害である居残り神を倒しました。彼の為に当初9パーセント有った生物生存率は0.2パーセントまで減らされましたが、これで生き残る努力をしても邪魔する存在は居なくなりました」


 ええっ!

 クラリス、神様倒したの?

 それはそうと、最初は9パーセントもあったの?

 あんのやろう許さん!


 するとクラリスは皆の見ている前で左手に右手を突っ込んだ!

 手首までずぶずぶと左手に沈む右手。

 そしてゆっくりと引き出すとなんか冷蔵庫よりでかい四角い何か機械が出てきた。

 絶対に重い筈なのに楽々片手で持つクラリス。

 クラリスを見つめる人々は未知の能力に驚いているが大騒ぎせず自制している。特にロケット屋さん達は驚きを行動に出さずおさえている。社長命令か。

 うむ、怪力クラリスに殴られたら頭ぽーんだな。


 そんな四角い機械を見て、ちょっと空気だった山岸さんがポツリと言った。


「旧い型だな」


「ええ。もう30年以上も前のものですから。これが居残り神の本体です。大丈夫、もう死んでます」


「こんな()()のものに・・・」


 山岸さんは愕然としているがよく分からない。

 AIの暴走じゃないの?

 映画でよくあるやつ。


「まあ、活動は殆んど『枝』を使ってたようですし。本体は驚くほど単純で、命令を出しているだけで苦労は全て枝に押し付けてたようです」


「そういうことか。なら解る。つまりは神は自分ををプログラムに移植したのか?敵は人間の神と聞いていたが人間の神はこれだったのか?」


「そうですね。昔は違いますが最近の神体にはこれを使っていたようです。これはAIと呼ぶには稚拙です。しかし、複雑に思えても知性体の欲求も突き詰めれば単純になります。そしてプログラムは日本製ではありません」


「ではどこの?」


「それは伏せておいた方が良いでしょう。でも想像は容易いでしょう?」


「い・・・いや、やめておこう」


「そうしてください」


 山岸さん、『い』って言ったよね?

『あ』でもなくて『ろ』でも『ち』でもなく。

 私、考えすぎ?


「しかし、人類滅亡を目論むとは」


「まあ、後押しした、協力した他の神、憑依した神が本体のほかに三体も居ましたから苦労しました。全て滅ぼしましたが」


 そういうと、クラリスはその四角いガラクタをガンっと魔力みたいな力で黒い粒にした。

 しかもみんなの目の前で。

 そして黒い粒は床に落ちてばつんと床板に穴を開けた。

 やべえ、あれ足に落としたら大変だ!

 あ、クラリスは平気か。


「その憑依した神とは?」


「それも伏せておいた方がよいでしょう。人に恨みを持っていた種を守っていた植物の神とだけ」


「植物?雑草か?除草剤の恨みか?」


「ふふふ。違いますよ。雑草って人間の生活範囲でこそ増えるのですよ。彼等は思っているより老獪です。犯人はとある作物で身近なものと言っておきましょう」


「??教えてくれないか」


「少しは考えてください。山岸さんは先週も食べましたね?まあ、あれの神だけではありませんが、最初に人間の神に憑依したのは彼です」



 悩みこみ縮む山岸さん。

 うん。

 学問というよりなぞなぞだわ。

 因みに私もわからん。



「しかし、人間の神を倒したって、人間は大丈夫?神が居なくなって私達滅ぶのじゃないの?」


 食いついたのは麻生さん。

 麻生さんのいうとおりでクラリスが倒したのは三種の神に寄生された人間の神。悪神とはいえ人間の神を倒したのだ。今後を心配するのは当然だ。

 山岸さんは未だに謎の神を考察中。


「心配はないかと。ここ数百年の人間の神の仕事は人間を減らす事でしたから。神が消えて、逆に増えすぎることを心配した方が良いかも」


「食物連鎖の頂点故の淘汰作業なのね」


「そうです」


「もともと人間の数を見ながら殺すことが仕事の神に、人間に恨みを持った神が取りつくのは容易かったでしょう」


「そういう理屈・・・」



 折角の質問タイムだし私も聞いていいかな?


「はいはいはい!」


「何でしょう」


「あの娘はどうなったんですか?名前しらないけどテレビに出てたなんちゃらちゃん」


 雑な説明にも関わらず場のおっさん達は誰のことか察したらしい。


「死にました。もっとも、死んだのは十日前で自殺です。ずっと寝たきりでしたが意識が戻った時に自殺しました。残り神は肉体と精神を捨て魂だけ回収して端末として使っていました。佳子さんの前に現れたのは残り神に憑依された魂です。それも私が消滅させました」


「うわあ・・・」


「人間に利用されるだけ利用され、神にも利用されるだけ利用され、最期は自殺。魂まで利用され、利用されっぱなしですね」


 クラリスの表情が全く悲しんでない。あの子を軽蔑しているようにさえ見える。


「もうひとつ、もうひとつ!」


「何でしょう」


「彼氏出来た?」



 場のおっさん達の顔がぐんと10センチづつ前進した!

 神秘的な美人(八割美人)のプライベートに一同食いつく。

 山岸さんだけはひとりトンチ大会で下向いてるげど。

 ん?

 麻生さんまでガン見してる。

 あー、ユキオさんの彼女だったらいいなあとか考えた?

 ユキオさん、私が向こうの世界を去るときはまだ御一人様だったし。


「彼氏は居ません」


 お↑お↑う↑というおっさん達の声が聞こえるようだ!

 狙ってる?

 狙ってる?


「私にとって死んだ夫が全てです。私は夫の永遠の妻です」


 こんどは空気の抜けたような お↓お↓う↓という声が聞こえそうなおっさん達。


「話を戻しましょう。私がここに来た最終目的ですが、地球の神になるためです。障害になる居残り神は消しました。雑魚神もいずれ去るでしょう。地球は生命が殆んど滅び無神の地になります。しかし、そんな星でも神々の評議会は私にこの星の神になっていいとは言ってくれません」


 うーむ。

 生物がいないと神にはなれない?

 したっていいじゃん。

 評議会って頭固いなあ。

 それにこの星の評議会じゃないんでしょ?変な利権持ちすぎだよ。



「評議会は私にひとつの課題を出しました。星ひとつ委ねるのです。当然でしょう」


「皆、聞いてくれ。ここからが重要だ」


 山岸さんがトンチモードから復活。謎は解けたかな?

 でも山岸さんの顔が自分ちの社員の方に向いてるんだよな。

 山岸さんクラリスの話すことを知ってるの?


「評議会が私に出した課題。それは地球を死の星にしないこと、住める環境にすること。それが私が地球の神になれる条件です。

 知っての通り、巨大フレアは起こります。私が巨大な力を持っていると言っても地球まるごとなんてカバー出来ません。私の力で地球の磁力の強化もたかが知れてます。

 ここからは私からのお願いです。皆さん必ず生き抜いて下さい。どんな手を使っても構いません。人間だけではありません。環境まるごとです。生物の比率を維持しながらなるべく生きて下さい」



 え?


 方法は?


 なんか有るんじゃないの?


 まさかのお願いだけ?



「巨大フレアで地磁気の弱った地球は砂漠化します。一年半地磁気は弱ったままです」



 それは知ってるの。

 だから?







「運命の日の一年半後に私が水を持って帰ってきます」



 はあ?




「諸君、我社はクラリス様を宇宙に打ち上げる。そして一発で地球の楕円軌道に乗せる。その後は彼女はその神の力を使い自力で楕円軌道を伸ばして数周後太陽に向かう。そして太陽スイングバイを行って反転加速して太陽系の外周を目指す。そして一周限りの彗星になる」




「これが私の計画です」

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