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神の居ない神社

 ここは都内の神社。

 一般駐車場は無いので参道のど真ん中に小型トラックを駐車。

 車止めを抜き捨て参道と車が傷むのも構わず、神罰も恐れず乗り入れたのは佐々木友弥と麻生友子。

 普通ならこんな罰当たりなことはしないが、二人はこの神社が見た目は立派だがもぬけの殻なのを知っている。ここの神も既に異世界に疎開した。

 神罰などあろう筈もない。


 佐々木佳子が居残り神からの呼び出しを貰った頃、麻生友子には己が神から別の連絡が入った。それも急ぎだ!

 突然の神からの()()()()の報せに麻生は慌てた。

 転移ポイントの変更。

 時間の前倒し。

 速いバイクの要求。


 しかし、全ての運が良く(・・・・・・)麻生は都内に居て友弥も居た。要求に応えられるバイクも友弥のコレクションにあり、いつでも動かせるような状態。まるで今日の事を予想していたかのよう。

 だが、不便な事もあった。

 地球での転移ポイントは決まっている。名のある神社か、数百年以内に神の居が存在した場所。送る側の位置は融通がきくが、送られる側は限られる。

 そして居残り神の目を盗める場所というと多くはない。


 ここがその場所。


 降りると既に地上から10メートルの所に青い霧が出始めている。


「急いで!来るわ!」

「やってる!」


 荷台のバイクのロープをほどき、恐る恐るアルミラダーに青いバイクのタイヤを向ける。これからバイクを降ろそうとする友弥。


「 離 れ て ! 」


 空中の青い霧から大きな声がする!

 友弥は慌ててバイクを支えながら身体を少し避ける!


 見上げていた麻生は見た。


 青い霧から髪を靡かせた女性が落ちてきた。

 その女性は落ちながらも一度赤い鳥居を蹴飛ばし、トラックの運転席の屋根にざんっと着地した。ほんの一、二秒上からバイクを見た後、そのままダイレクトにバイクに飛び乗った。そして初めて見るバイクのエンジンをキックで始動した。


「ここで待ってなさい」


 そう言い残して女は荷台で強引に方向転換をしてアルミラダーも使わず飛びながら轟音と共に走り去る。

 最後に見えたのはノーヘル、ナンバー無しのバイクが道路に消えるところだった。


「俺達も!」

「駄目よ友弥君。待てと言われたら待つのよ」


「でも佳子が!」

「落ち着いて。神と戦うのよ私達には何も出来ないわ。それに佳子さんを信じなさい。それとあの人も」


 友弥は落ち着けない。

 愛する妻と義姉が殺されようとしている。

 情報源は麻生の言葉だが真実を言っていると知っている。

 上を見上げればまだ青い霧がある。あの霧に入れば異世界に行けるのだろうか?

 佳子が居た世界へと。

 だが見上げる友弥は入ろうとは思わない。未知のものは見たいが、行けば帰ってこれなくなる。それは地球との別れであり妻との別れ。



 ひゅん!



 霧から何か出た!

 霧からレンガのような物が斜め上に飛び出した。

 だがレンガみたいな物には糸がくくりつけられていて、レンガは数メートルいった所で糸がぴんと張って止まり、今度は下に落ちてきた。そして糸の長さ分、下にぶら下がるレンガみたいなもの。


 不思議そうにする友弥をよそに、麻生はレンガに手を伸ばしている。

 するとレンガの糸がどんどん延びてきて遂にレンガは麻生の手に渡る。

 近くで見れば糸はなんてことはない釣糸。

 糸を麻生がほどくと、糸はするすると霧の中に戻っていった。

 そして青い霧は風に溶けやがて消えた。


「なんです?」


 レンガにしては少し軽い。

「私も初めて見るわ。これが碧竜石よ。未来に必要になるって言われたわ」






 ーーーーーーー




 血まみれでお姉ちゃんの入ったドラム缶を背にする私。私の走った所は血の道になっている。

 ドラム缶を見ればドラム缶の下に流れる血が見える。

 私の血じゃない。

 不味い、お姉ちゃんも撃たれてる!早く止血しないと!

 しかし、私の斜め上には宙に浮く青白い顔の白人少女。

 そして歩いて私を包囲し始めたデモ隊。みんな銃を持っている。中には弾切れで刃物に変えた人もいる。


 何とかしたいのに体が言うことをきかない。全身痛いのに嫌な眠りに堕ちてしまいそう。きっとクラリスの御守りも力尽きる。

 もう、両手両足右胸と腹は撃たれた。血が足りない。


 頭と心臓付近は無事。

 女性器も。

 ああ、これは桃神様の加護だ。レイプ避けの防御が銃弾まで撥ね飛ばすんだ。凄いよ桃神様。きっとこいつらに強姦はされないんだろうね。

 ああ、たとえ死んでも友弥の妻として操は守れそう。有難う桃神様。



 でもお姉ちゃんは?



 お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだったってだけ。

 神様と知り合いでもなければ何かしたって訳でもない。

 運命の日を知っていても環境保護団体が危なすぎて関与しないと決めて生きていた。邪魔なんかしてない。情報流してもいない。

 もし、何かするにしても運命の日が()()()()と決めた。

 せいぜい個人的準備をしてるだけ。



 でもなんで!

 お姉ちゃん悪くないのに!

 貴方達に何したっていうの!


 叫びたいのに声が出ない・・・

 肺に力がない。

 血の味。


 せめてお姉ちゃんは・・・





 お願い誰か助けて。



「死ねよ」

 女性の声。

 銃を向ける数人。

 残りは弾切れか。

 今の私なら数発で終わるな。

 後ろのお姉ちゃんも静かだ。気を失ってるのかな。

 死んでないよね・・・




 ごめんみんな・・・





「がっ!」

「いいっ!」

「あがっ!」


 突然痛がってしゃがんだり倒れたりする銃を持った人達!

 閉じようとする目を必死に開けてそれを見る。

 私を殺そうとした人達の手や肩にふっとい針?棒が刺さっている。


 バアアアアアアアアアアア!ドゥ!


 この音は・・・


 私のやや後ろにバイクの停車する気配。

 誰?

 見たいのに首が言うことを聞いてくれない。


「 許 さ ん ! 」


 女だ・・・

 この声は知って・・・いる・・・


「佳子を殺すのは許さん!」


 ・・・懐かしい・・・・・・声・・・


 私の前で敵に向かい仁王立ちする足が見える・・・


「魂ごと消えろ」


 ドオオオオオン!


 轟音の後、地面に四角い黒い粒が何個も転がる。




「小娘が!」


「黙れ!私の佳子に手を出せば私は許さない!」


「神の怒りを受けよ!」


「それが神か!」




 初めて佳子って言ってくれたね・・・・




 クラリス・・・・・・

クラリスが遠くから射ったのは、バイクの後輪のスポークを削って作った串です。

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