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巨大フレアはいつ? しらないってば。

「はい、山岸さん、義理チョコ」

 2ヶ月遅れのバレンタインチョコを貰ってしまった。



 平井君はうちのロケット工場に来た。



 3県をバイクで越えて来たのだが疲れてないのだろうか。友子と一緒ならここまで新幹線とレンタカーだが、単独だとバイクで移動するのか。

 ここまで何をしに来たと思えば、平井君はロケット最上段に落書きし始める。

 現在、ロケットは積んでいないので最上段も床にある。

 わざわざ来て描くのだから余程大事なメッセージかと思えば、ネットで知り合ったWeb漫画家が描いてたキャラクターらしい。

 落書きはA3用紙程度の大きさ。どうやら流行らせる為にロケットに描いて話題性を上げる作戦らしい。

 本来ならこんなことはさせない。その漫画家が来たなら門前払いにするが、この人物だけは特別。好きにさせることにする。

 なにせ、絶望の先の為に必要な人物だから。

 本人は知らないだろうが、打ち上げでロケット先端も高温になるからその落書きもあっという間に燃えて失くなる。


 流石に目を離す訳にはいかない。命を狙われてる人物でもあるし、話をしていれば思わぬヒントを貰うこともあるかもしれない。そもそも、大事なロケットの部品から目を離す訳にはいかない。


「平井君。巨大太陽フレアのできる時間はいつだと思う?」


「分かるわけないっす」


「神様から何か聞いていないかい?」


「ぜんぜん」


 平井君はマイペースに下絵を見ながらロケット最上段の分割カバーに絵を描き続ける。

 割りと上手いが、見せて貰った下絵とは随分イメージが離れている。同じキャラクターも別の作者が描くと別人に見えるというやつだ。それでもまあ似ている。

 そしてそのキャラクターを描き終わるとまた反対側のカバーに全然別の絵を描き始めた。これもA3程度の大きさ。発射台にロケットが立ったなら肉眼では絶対に見えない。

 今度は本当に子供の落書き程度の画力。本来の平井君の画力。



 神?



 その絵を見て何故かそう思った。



「友弥から話聞いているとさ、どう考えても二十数年先の太陽の予想なんて無理じゃん。でも起こるんだよね。起こるって神様達は知ってんだよね。なんか隠してるのかな。それとも神様達の産まれる前から決まってたのかな。タイマー式だったりして」


「それは僕も教えられていない。ただ話を聞くに、全滅だけが予定外だったようだ」


「それって、ノアの箱船したかったんじゃない?育ちすぎた人類の文明を消して、やり直ししたかったとか。少なくとも人間は原始人に近くなるよね」


「そうかもしれない。だが真実は誰にもわからない」


「想像だけならいくらでもできるけど、考えても答えを教えてもらえないんじゃねー。

 前にさ、なんかヤバい神様が敵かもしれないって言ってたじゃない。

 じゃあさ、その神様かラスボスかは知らないけどそいつが嫌いな奴が住んでる地域が昼間の時に狙うんじゃない?」


「そうも考えられるか。だけども僕はその敵が太陽活動のタイミングを変えられるとは思っていない。太陽を動かせるパワーがあるなら既に地球で好き勝手できてるだろう」


「それもそっか」


「今は観測して太陽の動行を見続けるしかないか」


「そうねー。友弥もそういってるし」


 平井君はマジックの細い下書き線に塗料がついた筆を上塗りし続ける。線の幅は一定で陰影もあまりなく、見るに描いてるのは何かを両手で大切に持っている中年女性で衣装はローマっぽい。本当に素人じみた絵だ。


「ところでそれは何の絵なのだい?」


「う~ん、神様?仏様?聖女?救世主?思いつきで描いてるからなあ。あ、私じゃないよ」


 彼女にはやはり未来が見えているのだろうか?

 友子はluckygirlと言っていたが僕から見たらやはり預言者にしか見えない。

 僕のやろうとしていることは口止めされていて平井君は知らない筈。

 でも彼女はこの絵を描いている。

 完全に無自覚で。



「ところで平井君は何処か安全な所に引っ越したりはしないのかい?」



()()()()



 平井君ははっきりと答えた。

 僕が知りたかったことはこれだ。





 ーーーーーーーー




 山岸から敵と言われた男。


 大病院から出ると黒服の部下が出迎え、豪華な車の後部ドアを開ける。

 男は自分で運転することはない。免許を持っていないからだ。ついでに言うと戸籍もない。





 さんざん利用した娘が壊れた。長くもったほうだし、彼女は役を全うした。

 壊れた後は見苦しいので軽い脳溢血をさせて眠らせた(だまらせた)。今はほぼ植物人間。

 完全に殺さなかったのは保険だ。必要が出来たなら復活させて利用させてもらう。その時は脳も支配下にしなければならないのは面倒だが。しかし、そんな必要は無いかもしれない。潰しておけば良かったか?

 どうせ天寿を全うさせるつもりはない。


 平井佳子の暗殺をやらせた団体からの連絡が途絶えた。二回暗殺失敗したのは知っている。

 恐らくは三回目も駄目で怖じ気づいたのだろう。

 電気自動車で儲けさせてやっているというのに、言われたことをせずに逃げる気か。罰が必要なようだな。




 そしてに目障りなあの女は消す。








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