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平和を訴え心を病む少女

 みんな死んでしまえばいいのに。







 いつもの公演。

 いつもの拍手。

 いつもの質問。

 いつもの回答。


 いつもの静寂。


 役目が終わればいつも独り。

 世界を味方につけたら友人が消えた。

 知り合いが増え続けるが名前を見てもそれが誰だかは知らない。


 初めて理想を訴えた電子の世界は今は敵が溢れている。

 あの頃は世界の入り口だつたが、今は私の敵味方が戦争をする魔境。もう怖くて入れない。ネットを彷徨えば自分の批判と悪口が目に入ってしまう。見に行かなくてもニュースサイトが態々押し込んでくる。

 そして今は、かつて浅はかに見えて嫌いだったテレビが唯一の情報源。




 死ねばいいのに。

 死ねばいいのに。

 死ねばいいのに。

 死ねばいいのに。


 少女の怨念は反対派に向かい、無関心者に向かい、役に立たない味方に向かい、味方でありながら安全圏に居る者に向かう。


 少女は人類を救うつもりだった。

 しかし、救いたくない者も居る。救いたい者だけを選んで救う方法はあるだろうか?


 そんなものはありはしない。


 何かが違う。

 公演で回った世界に違和感を覚える。

 人々の表情に違和感を覚える。



 少しずつ心の深淵に歩み寄る。






 ーーーーーーーーー






 異世界初の紙芝居に挑戦してみた。


 題名 シンデレラ

 語り 佳子

 作画 クラリス



「ーーーーーシンデレラは王子様と結婚して幸せにくらしましたとさ」


 目の前には子供達。

 話し終わったけれど微妙な反応だ。


「はい! ダンスパーティーって、なんですか?」

「踊りながら嫁探しする事です」

「うちのとーちゃんしてません」

「きっとそのあと踊ったのよ」


「はい! なんでシンデレラはネズミを食べなかったんですか?」

「ネズミが好きだったからです」

「そのうち食べるんですね」

「そうじゃない!」


「かぼちゃの馬車はたべれますか?」

「終わってからならいいですよ」

「勝手に食べて継母怒らない?」

「ぐぬぬ」


「靴で探すってことは王子様はシンデレラの顔覚えてなかったんですね。踊ってる時シンデレラの何処を見てたんですか?」

「君、私に何を言わせようとしてるのさ」

「つまりは女は家柄でも顔でもなく・・・」

「心というワードを一回は出そうよ君」


「姉たちは?」

「まだ婚活中です」


「魔法使いの正体は誰なの?」

「ええと・・・」


「魔法使いと結婚したい!」

「あのさあ」


 こんのガキども!

 どうして普通に感動しないのさ!


 異世界で漫画を普及させようとしたけれど、この世界には印刷の技術がなかった。

 某物語のように紙作りとか印刷とか地道に開発する程私は勤勉ではない。別に図書館欲しいと思ってないし。


 あれは?

 めんどくさい。

 これは?

 時間かかりそう。

 結局行き着いたものは紙芝居。


 印刷で量産しなくていいし、役者大量に雇わなくてもいいし、荷物が少なくて済むし。

 いやね、紙芝居でなくて落語のように喋るだけでもいいのだけれど、実はクラリスが神絵師だと知ってその絵を使いたかったのよ。花素麺を見た時から絵も上手いんだろなと思ってたけれど、描いて貰ったら凄まじい程の腕前なのよ。

 やっすい重ね塗りが出来ない絵の具でCGみたいな絵を描くんだよ、すげえよ!

 絵が綺麗すぎてシンデレラの普段着までドレスに見えちゃって泣く泣くリテイクしたのよ。

 そして魔法使いまで美形に描かれていて、フードで顔を隠しているように描かれてるけど、場面が変わると綺麗な顔がちょっと見えるのよ。てのをリテイクせずにスルーしたら、子供達に魔法使いファンが発生してしまった。


 そして大人達はもっと酷かった。


『あの魔法使いは御令嬢達に雇われたエージェントでしょう。そもそも嫁の決まらない王子はおかしい。みんな王子と結婚したくないのでシンデレラという第三者を担いだに違いないわ』サクラ姫


『魔法使いは敵国の工作員だ。王子と国の有力者の娘が結ばれないのは国防で不利になる。そもそも舞踏会のセキュリティ甘い!』コユキ


小娘(シンデレラ)より熟女(魔法使い)の方がそそります』ヤシチ


『父親と後妻の連れ子がデキてるかもね。邪魔なシンデレラは体よく出されたのね。次に追い出されるのは後妻。魔法使い忙しいわ』ツバキ


 こいつら・・・


 クラリスは公務のお手伝いが忙しいので絵は書く暇があまりないのだけれど、花素麺の各団体には一枚ずつ絵を贈ってるってさ。それを何枚か見たことあるけどめっちゃ上手い。

 そしてなんか家宝みたいに扱われてるのすげえわ。花素麺の団体に贈られた絵を売ってくれと良く言われるらしい。それも何十万という大金を提示されるとな。でも誰も売らないって。


 ならばと、リテイクで使われることがなかった紙芝居のボツ絵を売り出すことにした。そう決めたのはサクラ姫。

数日間城の下の部屋で展示して、購入希望者には入札額を受付さんに書いて渡してもらう。後日最高入札者に連絡する。

 なんせ城も財政苦しいし、少しでも足しになればねえ。結果だけ言えば高値完売!


 そしてこのボツ絵がまた凄いのよ。

『竜に乗ってる魔法使い』

『馬に乗るシンデレラ』

『綺麗過ぎる普段着のシンデレラ』

『美人過ぎた脇役御令嬢』

他。

 まあ、他にも色々あったのさ。ボツ絵は全部で12枚。

 でも、そのうち二枚は売りに出さなかった。


 一枚はシンデレラの顔がモロ私のやつ。これはクラリスが自分のにしてしまった。

 ええ?クラリスのシンデレラって私なの?それは盛りすぎだよ。


 もう一枚は意地悪義姉の絵。

 だって、義姉の顔がどう見てもコユキさんなんだもん。スッゴい悪役っぽい悪い顔。クラリスのなかのコユキさんのイメージはこうなんだ・・・



 こんなの売りに出せないわ!

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