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桃神様の釣り

 私はこの世界に落っこちてきた。

 地球はこの世界より上の階層で、まさに落っこちてきた。




 夕方、ウエアル城の私の部屋に戻ると、桃神様が私の部屋で釣りをしていた。

 ()()()()だよ。


 そうなんだよ。

 釣りだよ釣り。

 釣竿でさ、床に出来た黄色の霧の時空の穴に釣糸垂らしてんの。

 たまにリール巻いたり糸解放したりしたりさ、竿しゃくったりさ。

 ルアーでもついてんのかな?

 因みに道具はダ◯ワ。


 桃神様の竿先が動く。

 くいっ、ぶるぶる、すー、くいっ。


「よし!」


 桃神様が竿から感触を確かめる。アタリに合わせるというのとは少し違う。


「よっしゃ!」


 夜中に人の部屋で釣りをするとはなんだかなあ。

 しっかし、その穴どこに繋がってんのさ。

 桃神様がくるくるリールを巻くと竿の振動が変わってきた。もうすぐ現れる?

 糸の先はまだ見えないが、糸がぶるぶるしてる。獲物も暴れてるらしい。


「そろそろだな」


 桃神様は竿を右手で持ちながら左手をぷらんと振ると床にどでかい鳥かごが現れた。


 鳥かご?


 更にリールを巻く桃神様。そしてそれは現れた。


「ハチドリとったどー!」


「うわっ、キモ!」


 桃神様の釣竿の糸の先には大量のハチドリ。ざっと30羽はいる?

 しかもさ、釣糸の先がサビキになっていて、針の代わりに食中植物みたいなのが一杯ついてんの。ほらあの虫がとまるとぱくっと閉じるやつ。それにハチドリが一杯捕まってんの。ちっちゃくて可愛いハチドリがキモい食虫花に取り込まれてる!

 ハチドリは可愛いけど食虫花がキモい!


「ほれ佳子、ぼやぼやするでない。鳥かごを素早く開けろ」


 桃神様が食虫花に手を伸ばすと食虫花は桃神様に応えるようにじわじわ開き、中のハチドリを素早く掴んで鳥かごに。

 私はハチドリが鳥かごに入ったならば素早く閉じる。

 それを繰り返して全てのハチドリを確保した。


 ハチドリちっちゃい!

 ハチドリ綺麗!

 ハチドリ可愛い!



「すごーい!どうしたのこれ、」

「うむ。地球から釣り上げた。種の保存の一環じゃ。ハチドリは植物の受粉に使うでな。わしがこれから広める果物にはこいつらが必要なのじゃ。暫く馴れさせてから放鳥する」

「すごーい!」


 しっかし凄いなー。

 ラララさんとクラリスはまだ地球に物送るのに凄い大騒ぎしてるのに、桃神様は釣竿でひゅーんなんだもんなあ。凄い能力だ。

 でも、その針の代わりの食虫花はキモい。


 そして最初可愛い可愛いと喜んでいたけれど、流石に30羽も居たらうるさい。夜中もパタパタ飛んだり網をカシャカシャ揺らしたり。

 しかも1羽がチーチー鳴き始めたらみんな鳴き始めるし。


 寝れねえ・・・


 んもう。

 ハチドリ確保はいいとしてなんで私の部屋でやるかな。

 寝るときパンツになっていた桃神様を脱いでぺいって鳥かごのなかに投げ込んだ。

 暫くそこに居ろ!



 そして布団被って無理やり寝た。





「朝か・・・起きなきゃ」

 眩しい朝日とチーチーという鳥の囀ずりで目が覚める。

 ああ、ハチドリ居たんだっけ。じゃ、朝のハチドリでも見て癒されようかと思って鳥かごを見る。


「げ、なんじゃこりゃ!」


 ハチドリが増えてる!

 鳥籠もでかくなってる!

 寝る前の三倍は増えてる!


「どうだ佳子凄いだろう」


 鳥かごのなかはハチドリだらけで見えないが奥から桃神様の声がする。

 もうね、ハチドリの雲だよ。


「ふはははは! 一晩で随分増えたぞ!」


「ひええ」


 良く見れば鳥かごの床は卵の殻とうんこだらけ。神の力で増やしたのか!

 部屋が鳥小屋くさい!

 そしてハチドリが羽ばたくものだから臭いが更に広がる。


「早く外に出して!」


「2日後にな。さあて、お前ら餌の時間だぞう~」


 桃神様の声と同時に大騒ぎになる鳥小屋のハチドリたち。

 未だに桃神様の姿は見えない。どんだけ増やしたんだよ!





 朝食。

 サクラ姫が私に言った。

「佳子さん、臭いです」

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