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地球への転送試験 その2

『佳子には任せられん』


 結局、あの八人の村では桃神様が全て事をざくざく進めた。

 きっとあの八人は私を怖いねーさんだと認識したに違いない。桃神様のせいだ。

 桃神様は殆んど強引に村を接収し、八人をウエアルに連れ帰った。


 彼等は二つのグループで出来ていて、あの中の二人が女の子をギルド員から庇って命を狙われる羽目になったそうで、もう六人は工房の従業員だけれどギルド員に因縁つけられて財産と工房のお嬢さんを奪われそうになり、そのギルド員を殺めた。


 奉行所で調べた所、この八人が恐れていたギルド員は既に逮捕獄門になっていて、晴れて町に戻れることになった。

 良かった良かった。

 五人は帰れる所があったので元サヤ。

 三人は佳子まんじゅうのお菓子やさんの紹介でツバキさんの新事業のメンバーとなった。

 ツバキさんの新事業。

 それは屋台だ。

 資本主はツバキさん、私、お菓子やさんの出し合い。

 商品は地球文化の麺類だが、はっきりいってユキオさんや桃神様のパクりで二番煎じ。如何に珍しい新商品を売るかではなく商法こそ大事。特にユキオさんや桃神様から文句は出てないから好きにしている。


 オーリンのラーメン屋は話題になっているけれど、場所が田舎過ぎて客数は思ったほど伸びては居ない。

 あのラーメン屋の客の三割はコユキさんのとこの合宿の泊まり客で、彼等には評判がいい。

 想像だけど、味だけじゃなくて生きて五体満足で食事できる感動もあるんじゃないかな。なんせ師範は鬼斬りなのに鬼だし。


 ここでラーメン作っても流石にあのラーメンの評判には負ける。

 ということで、桃神様監修でパスタを作り始めている。

 私としては日本蕎麦を売りたい。この世界(ウエアル)にも蕎麦粉は有ったのよ。この世界では蕎麦粉を麺にする習慣は無かったけれど、饅頭に使っていた。

 蕎麦粉さえあれば麺にするのは容易い。

 ユキオさんからざる蕎麦を出してもらってお菓子屋さんとツバキさん達に試食して貰ったら評判が良かった。今後はこれを参考に蕎麦打ちも始めるという。


 実はオーリンではこのお菓子屋さんでは作れないようなふわふわまんじゅうが開発されて、その影響でこっちのお菓子はちょっと行き詰まってた。それで蕎麦粉が余ってたのね。

 ふわふわ饅頭の製法を開発したのはエチゴヤの女中頭なのは間違いない。あの人は頭が切れる。

 女中頭はお菓子やさんでもないのに自分で製粉して、ふわふわまんじゅうに桜餅に八ツ橋、手打ちうどんに素麺まで作る粉マスター。

 あ、ワンタンもだっけ。

 そしてエチゴヤ傘下の工房で生産されてるらしい。

 今や食文化の最先端はオーリンと言っても間違いない。

 クラリスがいつもお小遣いで買ってる素麺もオーリン産。

 原材料の麦はウエアル産なのにね。

 そしてオーリンの発展は止まらず近くタクトウを完全に併合するという噂だ。




 今日は地球への物質転送試験。

 前回は私は仕事で立ち合えなかったけれど、今回は見学に来た。

 関係者以外立ち入り禁止の広い部屋。この秘密の部屋には神子、桃神様、ラララさん、クラリス、私が居る。


 真ん中には大理石の丸いテーブル。

 そのテーブルには二重丸を元にややこしい模様が描かれてるけれど、それは術ではなくて、なんちゃらのかんちゃらと言ってた。よくわからん。

 そしてそのテーブルを挟むようにラララさんとクラリスが向き合う。

 ラララさんが術を操作してクラリスを使う。

 つまりはクラリスがパソコンでラララさんがプログラマーというのだと理解した。

 因みに私はお姉ちゃんのノートパソコンを床に落とした事がある。お姉ちゃんごめん。


 クラリスの体内にはあの日見つけた碧竜石が入っているんだそうだ。埋め込まれてるのではなく、副脳のように別次元に片付けてあるのだってさ。私はよくわかんないけれど。

 あの鉱石全部はクラリスでも持ちきれなくて、9割は桃神様預かりとなってるってさ。

 生身になった神子はいっぱい持てないし、ラララさんもまだダメ。

 でもって桃神様が、

「将来のために私がちゃんと預かっておきます」

 とお母さんみたいなことを言って左手に格納した。



「弾道確立」


 クラリスの声と共に黄色いモヤがテーブルの上に現れる。これが通路?異次元の登り坂?


 テーブルの下から小瓶を取り上げて載せるクラリス。

 小瓶の中には種麦。

 これが壊れず生きたまま地球でスタンバってる麻生さんの元に届けば成功だ。


「初弾発射」

「初弾発射」


 ラララさんとクラリスの言葉の後に黄色いモヤに消える小瓶。

 ふっと消えたよ、マジで。


「軌道誤差無し」

「誘導限界を越えます」

「観測不能」


 どうなった?

 事前の説明では、コントロールつけて投げつけるようなもんと聞いていたけど、どうなったのさ?


「地球で初弾確認。予定位置より七メートル東に着弾。ラララ、クラリス、誤差修正後第ニ射だ」


 地球に小瓶が到達した!

 そのたどり着いた瞬間が見たいー!

 しっかし、神子と麻生さんはどうやって連絡取り合ってんだろう?

 でもまあ着いたのは間違いないらしい。

 前回は三回やって三回失敗だったのだって。

 今回はパワー上がったから大丈夫だろうと言われてたけれど本当だった。

 へえ、あの温泉の元にそんなパワーが有ったとはねえ。健康の害になるようなもんじゃ無いよね?あの八人はいつも風呂として使ってたらしいし。桃神様も私の身体で温泉に入ろうとしたけれど必死に止めた。だって皆が見てるんだもん。


 そして二回目。


「次弾装填」

「次弾装填」


 次弾装填って主砲の発射かな?

 どこの軍隊だよ。


「発射」

「発射」


 またもや黄色いモヤに消える小瓶。


「軌道誤差無し」

「誘導限界を越えます」

「観測不能」


 さてどうなった。


「ロスト」


 失敗?

 ダメだった?


「いや待て、弾道データを見せなさい」

 真面目な口調で神子がデータを求めるけれど、データは紙ではないらしい。私からは見えない。

 私も見たいと思ったけれど見てもどうせわからんか。


「地下に出たな」


 地下?


「たどり着いてるが、これだと目標の三メートル下だろう」


 げげっ!

 つまりは、地下に出現したってこと?

 さっきまでわくわくしながら見てたけど、地下と聞いて怖くなった。私の時は大丈夫だよね?

 上空1万メートルとか地下のマントルの中に出るとか嫌だからね!


 ずっと早く!早く!と思ってたけど、急に慎重派に鞍替えする。


 そして三回目は東一メートル、地上ニメートルの位置でまずまずだったと麻生さんから連絡が来た。ふう。

 残りはニ射目の掘り起こしと、瓶の中身がどうなっているかの検証らしい。


 私はそこまで見届けて、昼から仕事に出掛けた。

 今日も暑いわー。



 ー ー ー ー ー ー



「さて、諸君。これから碧竜石の磁力変換実験を開始する。言ったように最終目標は20秒間だ」

 神子の言葉で次の実験が始まる。

 佳子に秘密の実験。

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