佳子、ど田舎に行く。
桃神様が来た。
桃神様の話では、昨日のラララさんの地球への種麦転送試験は失敗だったという。
桃神様曰く、
「まだまだだな」
らしい。
私は以前、桃神様が私の身体に乗り移って、時空の穴に矢を撃ち込み地球の敵の神を撃ったのを見た。だけど新米神のラララさんはまだ無理らしい。
ここから物送るのって大変なんだね。貰うのは楽なのに。
でも、物を送る実験というか試験というか何て言うんだっけ?ああ実習か。
実習が始まったと言うことは私が帰れる日はあるということだ。そもそも無敵の神子は出来るのだけども、ラララさんの教育の為にしていないのだし、神子が居れば私は絶望することはない。
さて、ここのところはウエアルの公務のお手伝いとテニスばっかりだったけれど、なにか足りない。
「そうだ田舎に行こう!」
「突然だな佳子」
桃神様が揚げパスタスティックをポリポリしながらこちらを向いた。因みにカレー味だ。
「あのね、私がサラコナーする世界はさ、もっと酷い状況だと思うの。ウエアルよりも、オーリンの村より原始的なんじゃない?」
「まあ、当然だな。発電所も油田も機能しない世界だからな。農業も一度壊滅した後だろうし」
「参考までに田舎生活見に行かない?」
「何故私を見る」
「パンツなんだから当然一緒だよね。行くよね?」
一人だと怖くて郊外に行けないなら護衛が居ればいい。コユキさんは忙しいし、クラリスも転送開発やら公務の護衛やらしてるし、ユキオさんとは二人っきりになりたくない。彼氏が居るのに長時間他の男の人と二人っきりは嫌だ。信用はしてるけどさ。
「それで私と言うわけか」
「そう」
「いいだろう」
「さすがはパンツ様!」
「そうだけどそうじゃない」
そして私は城に残ってたヤシチさんに、
「暫く旅に出るからご飯いらないって皆に言っておいて!」
と、言い放ち城を飛び出した。桃パンツ穿いて。
「佳子よ、言い方があるだろう・・・」
「あー、まあそうね」
この世界はウエアル、オーリン、クロマツ、タクトウの4つの町で出来ている。
しかし、情報では何処にも属さず町とは関わらず暮らす村もある。
大体、水や食料や気候が良い場所に都市が出来て、覇権をとれなかった団体は暮らしにくい場所をとる。
そういうところで暮らす村こそ私には参考になる。
「と、言うわけでどっち行けばいいの?」
「私が知るわけ無かろう」
「神なのに?」
「悪かったな。情報など持っとらん」
「けち!」
「まあ、確かにけちったのだがな」
「は?」
「いや、この世界に来たときに世界の管理団体から観光案内や歴史資料集とかを買わないかと言われたんだが、暫くニートするつもりだったから買わなかった。金も勿体なかったしな。米なら全部持ってるだろう。先輩は金持ちだからな」
「神に金持ちとか貧乏とかあるの?」
「有るに決まってるだろう」
知らなかった。
神にも貧富の差があったとは。
そして、あの神子は神の中では金持ちらしい。薄々このパンツ神と神子では格がちがうよなーって感じてたんだ。
やっぱりだ。
ならば歩く!
車はガス欠したら後がめんどくさいし、盗まれたら嫌だし、郊外は道が無いところだらけ。
しかも、桃神様がパンツ化してると私の身体も強化されて疲れ知らず。更には貞操も守ってくれる。
町を離れ、農地を抜け、ヤマカンで郊外の林に向かう。地図も無いが村があるならこっちだろうとヤマかけてずんずん進む。
「それにしても佳子、無計画過ぎだぞ。食い物くらいは持ってくるべきだろう」
「桃神様だして~」
「・・・」
桃神様はいつもユキオさんから色々出して貰ってるけど、それが100%ではなくて、たまにユキオさんが居ないのになんか持ってる事がある。
つまりはきっと自分も左手マジック使えるのにあえてユキオさんにタカっているに違いない。
「無駄に力を使ってもしょうがない。やるならば有意義に」
そういって桃神様は人化した。
うわ、スースーする。
桃神様は蚊に刺されそうないつもの姿で林を歩き、日当たりが中くらいの場所に立った。
そして左手からなにやら種を取り出すと地面に置いた。数は五つ。
「佳子、少し待っとれ」
「待ってまーす!」
地面の種に左手でばしゃって水をかける桃神様。どこから出したんだよ、その水!
そして桃神様が指パッチンすると種から芽がでた。
その後は凄かった。動画の◯◯倍再生のような凄い速度で成長する植物。
近くの木にとりついて朝顔のように、いや、藤のようにどんどん上に伸びる。
私より遥か上、絶対手が届かない高さまで伸びた弦になにやら実ができはじめた。
ぶどう?
いや違う。
茶緑の丸い実が鈴なりになっているが、果実に産毛が見える。
「何?」
「食べていいぞ」
「手が届かない」
「登れ」
桃神様は私にハイって手渡しはしてくれないらしい。ぐぬぬ。
しかし、なんかあの実が食べたくてしょうがない。
桃パンツは穿いていないが、桃神様の強化無しでも進化ヒールした身体がある。
「せーの!」
地味に木登りも考えたがノーパンでスレるのが嫌だから勢いづけて蹴り登ることにした。
バンバンと蹴り上がって木の枝を掴んでもういっちょ更に上の枝に登る!
おおう、謎の実はそこだ。
ぶどうに見えるがぶどうじゃない。
一本のヘタから10粒くらいの丸い実。
手が届く一番近い房をポキリと折って収穫。
謎の実を手に載せてまじまじと見る。
なんだっけこれ。
なんか見たことあるような無いような。
房から一粒もぐ。
この産毛の皮は食べないに違いないと爪で剥がしてみようとしたけど、ぶどうのようには剥がれない。桃に近い感触だが桃ではない。
無理やり三割くらい皮剥いて恐る恐る噛みついて見る。
「キウイ!」
これ全部キウイか!
味と食感はキウイだけどやや小粒。桃や梅のようにデカい種が無いので、小刀で半分に切って遠慮なしに噛みつく。四等分すると小さくなりすぎる。
そしてヘンテコキウイはどんどん増える。まだ成長中か!
ならばと手当たり次第どんどん掴んで食べる。
おおう、キウイだけで腹を満たしたよ。
「どうだった?」
「美味しかったよ。一体これは何?」
「今作った新種だ。ぶどうとキウイを掛け合わせた。五本も植えれば後は自然に増えるだろう」
「新種?」
「そうだ」
「じゃあ、町にも植えてくれるの?また食べたい」
「めんどくさい。食いたかったらまたここに来い。即興で開発したが、環境が合えば増えてるだろう」
「他には?他にはなんかない?」
「ええい、うるさい。また今度じゃ」
「えー」
ああ、もっと食べたいけれど先を急がねば。
さらば一口サイズのキウイ達よ。
そして、桃神様の力がまだ働いているのか、ムクムク成長してるヘンテコキウイを後にして先を急いだ。
そして、夕方。
もうこれは野宿かと思われたその時、目の前に三角コーン型の家が数件並ぶ村が目の前に現れた。
夕飯なのか小さな村の中心で物を食べる村人達。その数8人。
いかにも原始人っぽい衣装の村人達は全員男。
ユキオさんの村より小さい村。
村人全員が私に向く。
私も彼らを見る。
「・・・・・・」
「よ、」
「よ?」
「よ」
「よ?」
「嫁がキター!」
「ちがうー!」