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先鋒戦!

神子は村でお留守番。

 今日は先鋒戦だ!

 明日は私の出る副将戦。

 最終日が大将戦。


 1日1戦なのは主審のユキオさんの都合だ。

 今回は3セットマッチ。

 難しいタイブレークは無しで、6ゲーム制。6-6になった場合は次を最終ゲームとする。

 いやね、2ゲーム差つくまでって案もあったけれど、拮抗して無限ゲームになると終わんないし、タイブレークはみんな理解でききれていないし、何より観客は更に理解出来てない。

 同点最終ゲームだけはサーブかコートかを話し合いで選べる。



 さて初戦の、ウエアルのナラ君 対 オーリンのカツオ君。

 会場は満員御礼。

 3分の1はオーリンからの応援団だ。

 私とクラリスと次点補欠はロイヤルボックスに収まっている。

 暇があったらサクラ姫も見に来ると言っていたのに、居ない。

 こともあろうかサクラ姫、オーリンのロイヤルボックスでエチゴヤ様の隣に座ってニコニコしてやがる!

 エチゴヤ様もデレってない?

 ねえ、仕事の話?仕事の話だよね?

 それとも?

 エチゴヤ様って独身?どうなの?

 かつて奉行エチゴヤはギルドに弱味を作らない為に妻子は持たないと聞いた事あるけど、実はこっそり娶ってるんじゃね?とか言われてたけどどうなのさ。今はギルドなくなったし。

 エチゴヤ様も無敵床上手のサクラ姫の餌食になっちゃうの?

 これはサクラ姫の政略?戦略?

 サクラ姫(あなた)本当は男に興味無い人よね?

 いいのかなー!

 いいのかなー!


 しかし、問題はそれだけでは無かった。


 試合の少し前に、忙しい屋台の仕込みを抜け出してラララさんがうちの先鋒のナラ君を激励に来たのだ。


 まだ屋台は火入れしてないから焼きそば臭くないラララさん。

 幼顔で小柄で巨乳のラララさんが天子のような笑顔をナラ君に向けぎゅっと両手を握って。


「お願い、勝ってください」


 と、問題発言!

 ナラ君、顔真っ赤。

 絶対勘違いしてる。

 その子(ラララ)、子持ちよ!

 しかも次の結婚相手予約確保してるのよ!

 そんなラララさんを見たコユキさんは額に手を当ててガックシしてるし。

 何?

 何が?

 何が起こってるの?

 そもそもラララさんナラ君を知らないよね?

 ラララさん、オーリン側の人よね?

 まさかこのテニス大会が賭博の対象になっててラララさんがナラ君に賭けたとか?

 神様って賭博大好きなの?


 解せぬ。


 そして入り口左右に別れて繰り広げられる屋台合戦!

 今日から本戦なので客が多い。ついでに屋台の噂が広まって更に客が増えた。屋台だけに来る客もいる。それでラララさんにはオーリンからエチゴヤ邸の女中さんが助手としてついた。

 一方、桃神様は猫が居る穀物倉庫の若い衆(男)を手伝わせている。

 この若い衆、顔が良い。

 そうか、女性客狙いか!

 しかもだ、今日からミートスパに続く新メニュー。

 揚げパスタが絶賛発売中!

 味付きショートパスタの揚げ物でスポーツ観戦にはお手軽おやつでもってこい!

 これが大ヒット!

 スパゲッティは確かに旨いがあくまで食事。

 しかし揚げパスタなら観戦しながらちまちま食べられる。

 ラララさんサイドも一皿餃子を売り出した。餃子は旨いけれど食事の延長。あっという間に食べ終わってしまう。観戦のお供には向かない。

 そして、ラララさん、桃神様共に食材庫にしているのは車。(桃神様は私の車使ってる)

 クーラーかけて保冷庫にしているのだが、どうやら一食分の体積がラララさんのほうが大きい。

 そして試合中はユキオさんからの補給は両者受けられない。

 桃神様有利!

 と、おもいきや、桃神様は水と油がとんでもなく必要だ。お手伝い君は定期的に煮込みの水確保に走らされる!

 水はまだいい。

 油は大量に用意したがなくなればそれまで。ウエアルではそんなに大量の調理油は急には用意出来ない!


 まあいいや。

 私達は全種類を買い漁って呑気に観戦プチパーティーに勤しんだ。



 さてさて。

 試合はというと、カチンコチンになったカツオ君のサービスゲームから。

 ゲーム開始前に大声で「勝ったら告白するぞ!」と宣言したカツオ君を応援したくなったが、いかんいかん、私は敵だった。会場は盛り上がったけどね。

 そのカツオ君は緊張のせいかサービスを全滅させ、0ゲームでサービスを明け渡した。やたらめったら強打するからだよ。


 次のサーバーになったナラ君もイマイチ乗れてない。

 なんかチラッチラッっと入り口ばかり気にしてる。

 カツオ君ほどじゃ無いけどフォルトの大盤振る舞い。

 あちゃあ。

 ラララさんに惚れてしまったか!恋する少年かよ!

 試合に集中しろ!

 ここからカツを入れたいけど、試合中は何人(なんぴと)たりとも助言は禁止である。これはテニスのルール。

 なんて低レベルな試合!

 昨日の模擬戦のほうが見応えあったわ。

 そしてカツオ君の調子は戻らず全てナラ君がゲームをゲットして(カツオ 0-2 ナラ)

 そしてカツオ君はまた青春のサービスを失敗し続けゲームを落とす。

 し、試合にならん。

 そしてカツオ君が強打戦法をやめたのは(カツオ 0-5 ナラ)になってから。そこからは互角になったけれど、最終的には(カツオ 1-6 ナラ)で1セット目を終える。


 さて、休憩を挟んでセカンドセット。

 この流れならナラ君有利。

 しかし、運命の女神は気紛れだ。

 途中経過を気にしたラララさんがチラリと入り口から顔を出す。得点ボードを見つめるラララさん。

 それをナラ君は見逃さなかった!

 ナラ君リード表示に嬉しそうに去るラララさん。

 嬉しそうにニヤけるナラ君。しかもラララさんが消えてからも入口ばかり気にしてる!

 こんのすっとこどっこい!前に集中しろ!

 てなことで、冷静さを取り戻したカツオ君にナラ君はセカンドセットを(カツオ 6-4 ナラ)で落とす。


 あんのやろう!

 上手くいけばストレートで勝てたのに!

 そこでまたラララさんが得点ボードを見に現れる。

 ラララさん、今度は不快感を露にしてキツい視線をナラ君に突き刺す。その視線に反省するナラ君。


「なんでラララさんはこっちの味方なの?」


 そんなぼそりとした言葉にクラリスが反応した。


「キイテミマス」


 あ、そういえばクラリスにはラララさんの通信用孫脳が付けるという話があったんだった。もう繋がったのか。


「佳子サン。カツオサンの告白スル相手デスガ、村ノリエサンダソウデス」


「あー、ラーメン屋の人ね。ふーん。いいんじゃない」


「リエサンハ男デス」


「ぶっ!」


「佳子サン。コノ世界デハ男性同士ハ結婚出来ルノデスカ?100年間見タコト有リマセンガ」


「な、無い筈」


「デスヨネー」


「あ、でもどうなんだろ。うちの世界には同性婚あったし。男同士とか女同士とか」


 ざざっ!

 クラリスが私にドン引きした!

 その目やめて!


「私は違うから!」




 3セット目。

 これが勝負の最終セット。


 初球はナラ君のサービス。

 初手で目一杯強く追い出すサーブを打つナラ君!

 カツオ君のレシーブをネットダッシュで逆サイドに落として15-0。

 このナラ君の遅い宣戦布告を皮切りに泥臭い死闘が始まった。


 緊張がとけ球威が上がったカツオ君。だが疲れから最高の威力は出ない。その分捕球で稼ぐ。

 一方ナラ君はラリーを続けてチャンスを待つなんてしない。普通のストローク戦はカツオ君の方が強いからだ。ストローク合戦を呑気にしていれば負けるのは自分(ナラ)

 兎に角奇襲と振り回しでカツオ君を揺さぶる!

 そしてゲームはまさかの(6-6)

 最後のゲーム。

 審判のユキオさんが二人に訪ねる。


「サービスとコートどちらを選びますか」


 カツオ君は、

「サービス」


 ナラ君は、

「ならコート。入れ換えで」


 案の定カツオ君はオーリン勢らしくサービスを選び、ナラ君は太陽を背にするサイドを選んだ。


 カツオ君の告白はこのゲームにかかっている。

 真剣な眼差しが怖い。

 そしてナラ君までまさかラララさんに告白とか良いとこ見せようとか思ってないだろうな!

 なんて不毛な二人。


 そして勝負のゲームが始まる。


 カツオ君の渾身のスピードサーブが次々と炸裂。

(15-0)

(30-0)

(40-0)

 と、ファーストサーブだけで仕留める。

 だが。


 ぼふっ!

 勝負の一球がネットする。


「フォルト!」

 ユキオさんの声。


 そして。

 ぼふっ!


 またサーブがネットする。

 勝利に手が届く所に来たらカツオ君が狂いだした。

 これだ。

 これが試合の怖さ。

 実力はメンタルでいくらでも狂う。

 上にも下にも。

 そしてカツオ君のミスは増える。

「アウト」

 ユキオさんの声がカツオ君に崖っぷちを教える。


「アドバンテージ、レシーバー」


 最後のサーブの準備をするカツオ君。

 苦しそうだ。

 筋肉痛じゃなく、毒でもない苦しみ。

 それはプレッシャー。

 ひとつの決意をもって今日の日を迎えた。しかしたどり着いたのは崖っぷち。




「フォルト。ゲームセット!」


 終わった。

 カツオ君のサーブはネットを確かに越えた。

 だが、ほんの少し長すぎた。恐らくはボール一個分の距離。インだったならば理想的なサーブ。

 だがアウト。



 試合は終わった。

 審判と選手は粛々とした挨拶を交わし、観客と応援団の拍手の中、初戦は終わった。

 カツオ君が悲しくコートを去り、ナラ君がキョロってる。

 そしてナラ君の元にラララさんは現れなかった。

 クラリスがラララさんに通信で結果報告したらそれで満足したらしい。

 ラララさん惨いことを。

 ナラ君待ってるよー!



 そして。

「佳子さん」

 イベント初日終了後、私の元に来る一人の女性。


「ツバキさん」

「完売です!」

「よっしゃあ!」


 実は今日から私も売店を展開していたのだ。

 スタッフは佳子まんじゅうのお店で紹介して貰った離婚調停中のご婦人。なんでも夫が娘とデキてしまって、怒りで家を飛び出したらしい。いかんなあ。

 この人は飲み物類の専門家だそうで、たった一晩で全てを用意して出店してくれた。準備金は私持ちだけどね。

 でもってラララさんと桃神様の濃すぎる味付けと脂っこさを利用して、ドリンクの販売を始めた。

 お茶に野菜ジュースに果実ジュース。材料はコネで手に入れたらしい。

 ラララさんや桃神様と違ってユキオさんに頼らず現地調達だけで商品展開。

 しかも私は金を渡しただけでツバキさんが全部やってくれた。


「明日も頑張りましょう!」

「任せてください。佳子さんも!」



 あああ、明日は私の試合だあ!

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