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佳子のウエアルテニスチーム

 異世界にテニスを普及させようという試みが始まったのだけれど、問題は山積みだ。


 普及させようとさせるといっても、33年後にはボールやラケットが手に入らなくなるので期間限定なんだけどね。



 バンバンバンバン!

 バンバンバンバン!


 元ギルド系貴族の屋敷を更地にして、ユキオさんがテニスコートの地ならしをしている。

 なんつうんだっけ?

 あの地面をバンバン叩く機械。

 ペンペン機?

 そのペンペン機を操作するユキオさん。一度は完成してラインもネットポールも設置し終わったんだけど、

「地面が柔らかすぎ」

 といってユキオさんがまた整地しはじめた。


 そしてその合間に私は鬼斬りと奉行所剣士の非番の人に説明をしている。

 何を?

 テニスだよ!


「つまりぶつけたら点が貰えるのですな」

「そうだけどそうじゃない!」


「手で投げた方がよくないですか?」

「触ったら駄目!」


「最初に線の外から打つんなら、ここもアリ?」

「そこ、屋敷の外!しかも相手側!」


「なんで、15.30.40なんですか?1.2.3に変えましょう」

「ぐぬぬ!」


「線を半分以上出てたら出てたってことでいいじゃないですか?」

「いいの!ちょっとでも線に触ってればいいの!そういうもんなの!」


「え?二度打ち無し?いいじゃん。落として無いんだし」

「だーめ!」


「え?二度打ち駄目って言ったじゃないですか!」

「ワンスイングの場合はいいの!」


 練習の前にやることが多すぎる・・・

 そもそも、この世界に球技は無い。玉はないこともないが、弾むボールはない。

 この人達って、町の中でもトップクラスの運動神経の持ち主ばかりなのだけれど、ボール勘が全く無い。弾むボールの軌道にラケットを全く合わせられない。


 そしてコートはなんとか二面整備し終わり再解放。

 途端に野郎共がコートに突入した。

 なんで一面に十人もいるんだよ!それが玉を追えなくて、上手く返せなくて、皆で右往左往してまるで地獄!


 因みにオーリンでは、コート作成はガガガさんが受け持った。場所はエチゴヤ所有地。テニスのルールはコユキさんに一夜漬けで暗記して貰って、独自の練習を始めたらしい。心配だ。



 さて、こちらのテニス練習もどたばたしながら進んでいる。二日目、漸くラリーが十往復続くようになってきた。ポヨヨンラリーだけど。因みに一人としてバックハンドは打てない。みんな足だけは早いから全部右手側(フォア)に回り込んで打っている。まあいいか。


 そして、少し打てるようになるとみんな楽しくなってきたのか、どんどん強くなってきた、威力だけは。

 つまり、ボールが外に消え去る。朝100球用意しても夕方には50球しか残っていない。回収はするけど、ホームランになってしまったものは殆ど帰ってこない。

 地域の子供のオモチャになってしまったりしてると、返してと言いづらい。子供の笑顔は無敵だ、あげることにした。

 ああ、外野のネット欲しい。


 てなことで、異世界テニスの公式球は安売りのノンプレッシャーボールになりました。ユキオさん曰く、値段は気にしないけど高圧空気の入ってないノンプレッシャーボールの方が時間が経っても変化が少ないんだってさ。

 はあ、普通のプレッシャーボール打ちたい。


 因みにオーリンの様子を見てきたユキオさんによると、テニスコートはコユキさんを頂点にした公開処刑場と化してるらしい。

 サーブが終わったあとは弾道の低いバドミントンになってるとさ。殆どドライブボレー合戦。

 頭おかしい。


 しかし、これは考えようによっては、コユキさん達が未だにバウンドしたボールに手こずっていると言うことだ。

 しっかし、一体誰がコユキさんと渡り合ってる?

 そのコユキさんの練習相手をユキオさんはニヤニヤするだけで教えてくれなかった。



 で、こちらも進歩があった。


「ナガイデスカ?」

「インだよ!」


「サイドアウトデス」

「そう」


 まだ一週間なのに、私の玉を無難に打ち返してくる人物。


 クラリス。


 脳のプロテクトが外れたクラリスは既にこの世界の言葉を語り出していた。早すぎない?

 しかも、テニスの上達も早い。確か彼女は学生時代は学年六位で運動神経もよかったはず。つまり人材としても上流階級か!

 まだ手首の固定は甘いが、お嬢様っぽい弾道で全て返球してくる。左右に振ってもポロリも全て返してくる。


 しかも私のフォア()に!


 クラリス性格良すぎ!

 上達は早いけどテニスは人の嫌がる所を狙わないと勝てない競技。この人はテニスに向いてないかも。

 人が良すぎる。

 練習の玉出し係にはいいかもね。

 そして、最初にバックハンドをマスターしたのもクラリスだった。因みに片手打ち。そして元々筋力は高いので、両手打ちと変わらないスイングスピードを誇り、パァンと打つ・・・のだが、すぐお嬢様弾道に修正してしまう。なんなんだ。



 サーブ練習になると皆殺気だつ。

 打つ側と受ける側になって一騎討ち!

 これは剣士魂に火をつけるらしい。


「ホクサイ流、赤九龍弾!」どーん!

「甘い!」ばーん!


 サーブに変な名前つけてるし・・・


 そしてクラリスは・・・

「イキマス」ぽーん。



 弓なりなアンダーサーブです。

 このお嬢様め。





 その頃、桃神様は拾ったボールで子猫と遊んでた。

 つまり今日の私は白ぱんつ!

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