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桃神様がなんか言い出した

 パンツが喋る。


「佳子よ、カルボナーラが食いたいぞ」

「桃神様、さっき食べたばかりでしょ!」

「あれは焼きうどんではないか。カルボナーラが食いたい。すぐ戻れ」

「ええ・・・」


 この神様は遠慮がない。

 さっき、ユキオさんのところで朝食食べたばかりなのに、また食べたいと言い出した。


 桃神様は米神様(神子)程の力は無いらしく、無料通販なる能力は無い。左手マジックはあるがカルボナーラは在庫に無い。そもそもあんなことは普通の神には無理で、神子にしか出来ないんだそうだ。神の間でも神子は凄い存在らしい。

 んでもって、食事はもっぱらユキオさんの所で食べている。神って食べなくても生きていけるのに。



「ううむ、旨い」


「早く食べてよ。これからお手伝いに行くんだから」


 子猫と遊んでるユキオさんの横でホットパンツとタンクトップであぐらかいてパスタ食べる桃神様。見えるってば、上も下も!


 それから桃神様が人の姿をしているときは私はノーパンになる。凄い迷惑だ。

 以前、ノーパンにされるのが嫌なので私のパンツも履いておいたら、

「二枚履きするやつがあるか!」

 と、私のパンツパンツを投げ捨てられた。こんのやろう!


「ふう旨かった。ユキオがうちの子ならいいのにのう。とはいえ、米あってのその力か」


「食ったなら出掛けるわよ。今日は家建てるの手伝うんだから」


 そう、今日は田舎で縦穴式住居を作るのだ。

 これはきっと将来役に立つ技術だ。人類滅亡後のヒャッハーな世界では原始的な生活をしなければならない。絶対これは役に立つ。


「わかったわかった。それからユキオよ、これを密かに準備しておいてくれ」


 そういって桃神様は左掌から手帳を取り出し、その一ページを切り離してユキオさんに渡した。


 受け取ったユキオさんはにやりとする。

「面白そうですねえ」

「そうだろう」


「なんです?」

「後で説明してやる。急ぐのであろう行くぞ」


 そういって桃神様はしゅるんと消えて、私の服の中に戻った。


 その後、私は指定の村に行って家作りを手伝った。案外簡単だった。

 小学校の時に社会科の先生の縦穴式住居のうんちくを延々聞いて、きっと難しいんだろうなあと思ったのに、実際の建築現場は作業員の思いつきとノリでどんどん作ってた。途中でちょっと間違えるくらい気にしな~い!

 今思えば、あの社会科の先生は小難しいこと言ってドヤりたいだけだったんだな。



 そして夜。

 ウエアル城で夕飯後休んでいると、ユキオさんがやって来た。今は桃神様は人の姿をしている。そしてニヤニヤしてる。


「なに?ユキオさん」

「やあ、佳子さん。この中から自分のシューズ選んで」


 そういって、私の前にサイズ別に数足のシューズを出す。

 ランニングシューズではない。スパイクでもない。

 バスケ用とは似てるけどソールが違う。



「いったい何をするの?」


 そこで話始めたのは桃神様だ。


「テニスだよ」

「テニスって、私にも知ってるあのテニス?」


「そうだ。今後鬼斬りは重要になる。だがいちいち模擬戦をしていたのでは怪我ばかりして、強くしてるのか怪我をしてるのかわからん。しかし、鍛える事は必要だ」


「それがテニス?」


「その通り。それともう一つ目的がある」


「もうひとつ?」


「あの恐い隊長に勝ってみたくはないか?剣技では到底敵わん。だが、テニスでなら互角に戦えるぞ」


「いやいやいやいや、それでも無理!」


「そうでもないぞ。テニスは力を込めれば勝てるというものではない。ラインがあるからな」


 確かにそうだ。

 どんなにパワーがあってもラインアウトすれば負けである。野球のホームランとは違うのだ。

 コート内に落とすためにトップスピンかけるにも限界がある。ラケットには邪魔なフレームもあるし、長さも規定で決まってる。そしてコユキさんは高く跳ぶが、それは実際には、筋力だけでなく地形を利用したり何かの反動を使っている。

 鳥ではないのだ。


「身体能力はあの隊長が上だろうが、知識ならお前の方がある」


 そうだ。

 コユキさんは強い。

 きっとテニスもすぐ上手くなる。でも、試合なんか見たこと無い筈。

 私は少しだが経験がある。

 そして試合も結構観た。



「ふふふふふ」


「ふふふ、やる気になったようだな」

 桃神様も悪い笑いをする。


「次はラケットーー」

 ユキオさんが左手に右手を突っ込む。見本を出すのだろう。


「97M 15Vでグリップsize2で!」


 私の言葉にユキオさんが止まる。まさかモデル指定してくるとは思わなかっただろう。


 しかし驚いたのは私だった。

「97Lの方がよくないか?」


 まさかのアドバイス!

 ユキオさん何者?

 97Mはプロツアーモデルで15Vはその最新型。硬いと言われる。

 対して、97Lは女性向け低振動モデル。

 何故知っている?


「ひょっとしてユキオさん経験者?」


 あ、ユキオさんがドヤ顔してる。


「俺は85のMIDだよ。ついでに大会で負けた事はなかったよ。中学の頃の話だけどね」


 ここにとんでもない伏兵が居た!

 85MIDはテニスバカが一度は憧れる有名クラシックモデル。感触はまるで板。そして使いにくい。

 友弥も中学からテニスしてた。大会もだいたい出てた。

 つまり・・・



 隣町程度の距離の二人は同じ大会に出てるはず。

 しかもユキオさんは無敗。



 敵はコユキさんじゃない。

 ユキオさんだ!

 友弥の仇!(かたき)(死んでません)



「それから。ガットは全員共通のナイロン太ガットで推奨ポンドで張らせて貰うよ。それからラケットは三本までね」


「え?」


「俺が張るから」


「ははーっ!」


 私はひれ伏した。

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