桃神様が来たよ
地球の人口は78億人と言われるが、その全滅の為に日々世界中を駆け回り、賛同者に協力を貰い、必死に温暖化ガス削減を叫ぶ少女。
当の本人は自分のやっていることが、人類滅亡への道だとは知らない。
33年後の生存率は4パーセントから3パーセントに落ちた。そう、0.7億人の殺人予約を果たした事になっている。そしてまだまだ増える。
そんな少女の演説をテレビの短いニュース番組で眺める女。
女はとある神である。
自分の親派は既に別の世界に送り届けた。つまり、種の保存は終わらせた。今地球に残っているのは惰性。
そして画面に映る少女がベジタリアンだと紹介される。
「野菜だって喋れたならば、食べないでくれって泣き叫ぶ。菜食主義を名乗るということは、野菜専門の殺戮家だと宣言しているようなものなのに気付いてないとはな。まったく、無能程喋りたがる。君の巻き添えで消滅するものの怨みが、大気に渦巻いているのが見えないとはお目出度い奴だ」
この神も地球に見切りをつけた。後は去るだけ。
女は、
「君も来な」
そういって、鉢植えの姫りんごの木を光る右手で己が体内に取り込むと、風のように消えた。
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蛇の肉かたい!
誰だよ蛇の肉は鶏肉と同じだと言った奴は!
硬いし小骨だらけだし。
まあ、おかずに文句はいいまい。心の中にとどめよう。そして硬い蛇肉だけど、母猫は丈夫な歯でがじがじ旨そうに食べている。
ええとね、私も猫見に来ました。
今、ここには神子とラララさんと私。
いやあ、子猫可愛いわ。
手のひらサイズの猫最高!
私も欲しくなったけど飼えないしなあ。
因みに、ラララさんは三番目と四番目の子猫を貰う予約をしているという。両方♂だ。♀は連れていかない。あれだな、♀猫に嫉妬してるね。そこは許しなさいよ、自分だって子供産んでるんだし。
そのラララさんだが、神になるための各種資格試験は済んで、その他の技能の講習とか免許とかで今は忙しいらしい。つまりは神見習いから新米神になった。
試験とか講習といってもそれは神だけが入れる空間で行われるので私は見ることが出来ない。
見てみたいのに。
ラララさん、クラリスを普通にするための法術の準備というか勉強が大変らしい。
で、クラリスのサブルーチン雇用の為に雇用者講習と申請。これが手間らしい。
それとクラリスにかけられたプロテクト外しの為に肉体のクリーンナップという名の肉体ロンダリング。これは簡単なんだそうだ。なんせ、プロテクトかけた術者が幼稚すぎて簡単に術を騙せる。
そして聞いてぶったまげたのが、脳の複製!
神子のテクノロジーは凄まじく、脳を高性能化するだけでなく、自分の脳を複製して、元祖脳を頂点にして木の枝のように子脳を繋げる。脳の置場所は裏多重世界なんだそうだが、話聞いてもようわからん。
まあ、スパコンの一種だと考えることにした。
で、クラリスは今二つ目の脳のコントロールの練習中なんだそうだ。
そうかそうか、普通の人間になりたいと言っていたのは嘘ですか。そうですか。
因みにラララさんは現在副脳は36個。
神子に至っては2048個だってさ。わけわからん。
神子は生まれ変わりにより、一旦本体を変えたけれど、データを副脳に保存してメイン脳を新品にして再接合したのだとかなんだとか。うむ、わからん。
だって、前の本体って神社にあった盃でしょ?脳があるの?
更にここで驚きの神子テクノロジーを紹介された。
ラララさん、コユキさん、サクラ姫は神子と脳内通信できるけれど、それは神子の孫脳を三人にそれぞれひとつづつ接続されてるのだそうだ。
私には接続しないでください。
でもって、近いうちにラララさんの孫脳がクラリスに接続されるらしい。それって部下というより社畜?凄いブラック臭。
でも、繋がってるのは話しやすくて便利かも。でも、繋がりっぱなしはイクない!
ユキオさんには神子の孫脳が繋がっていないのは何故?と神子に聞いたら、
「男と男が繋がってもつまらない」
だそうだ。
そうですか。
つうか、米の神様に性別あんのかよ。
私が猫じゃらしで子猫トローリングで遊んでいると、突然部屋の中がピンクに光る。
といっても、眩しい程ではなくて、さりげない桃~い光。
光の中からなんかケバいねーちゃん出てきたぞ!
「桃か」
「米、久しぶり」
ケバすぎる桃色髪の毛、濃いシャドウ、ホットパンツにタンクトップ。タンクトップの中身はノーブラで・・・おっ、同士だ!
これ前屈みになったら見えるぞ。胸チラはすとーんの方がエロいのさ!
「桃、君もこっちに来たのかい」
「ああ、ここはプロテクトが優秀だからな。先輩が選んだだけのことはある」
どうやら、このねーちゃんは神子の後輩らしい。ケツでかいな。
「その子が米の跡取りか?」
「ああ。生まれたてだ。名前をラララという」
ラララさんが頭を下げる。
「これはまた面白い。米の後継者のくせしてメロンをぶら下げておる」
私もそう思います。
しかも後で盛ったやつです。
「神子様、こちらの方は?」
多分桃の神様だろなと思うけれど一応聞いてみる。
「ああ、彼女は桃。桃の神だが、梅や梨も面倒見ている」
「お会いできて光栄です!」
なんという素晴らしい神様だ、桃に梅に梨とは!ひょっとしたらキウイも?
「残念だがキウイは面倒みておらん。呼び出せん事もないが」
おっと、思考を読まれた。
「そうですか。でも、桃は好物です!」
「正直だな。どれ、桃が好きなら少しサービスしてやろう」
「へ?」
露出高めの桃神様は歩いて私に近寄り、右手で私の腰を抱き寄せ、左手をズボンの後ろに突っ込んで来たよ!しかもベルトもあった筈なのにパンツの内側に一発で到達しやがった!
うお!
掌でかいな!
そして揉んでやがる左右真ん中と!
「ひゃあ! い、い、い、いったい何を!」
「サービスだと言ったろう。揉み心地を良くしておいた。それからお前には少しだが私の加護をつけておいた。きっと役に立つ」
そういって、引っこ抜いた手の指をペロリと舐めるねーさん、それキモい。
「それより米よ、どこか住める場所はないか?他の神と被ってない所が欲しい」
「それは大丈夫だよ。ここはどこもスカスカだから、どこでも選びたい放題だから」
「有難い。なら暫くここに住むとしよう」
「ああ、僕も近所に住んでる。宜しく桃」
なんかここに住むっぽい。
いいのか?
ウエアルは穀倉地帯だぞ。
まあ、仲がいいならいいのか。
それより納得いかないのが、米の神が山あい(オーリンの村)に住んで、果樹の神が平野に住むって逆じゃない?
私が気にしすぎなのかな。神に距離は関係ないのかも。
「それから米よ、鬼対策はどうしている?」
「ああ、今は有能な鬼切りがよくやってくれてる」
「そうか。この先鬼が増えるぞ。大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
鬼退治?
コユキさん達のことだよね?
「あの、鬼が増えるんですか?」
「うむ、増えるぞ。地球ではアマチュアの神がイキって地球人を転送しまくることが考えられる。ここにも来るだろうが99パーセント以上は鬼に堕ちる。これから30年間は忙しくなるだろう。それを過ぎれば落ち着くがな」
「そうなんですか・・・」
鬼の元の姿を知っているだけに悲しくなる。私の同級生も一杯鬼になって死んだ。友弥が異世界転移したら鬼になるのだろうか。私は世界を跨いでも鬼にならないけれど、友弥はどうなんだろう。
友弥をこっちに呼んで一緒に生きたいという願望も無いことはない。家族や友達は?
そして、鬼になってしまうかもしれないのに呼べる訳ない。
それとも魂の強度が弱いものでも安全に呼ぶ事はできるんだろうか?少なくとも私には無理だ。神子なら?
「米!」
「桃、わかってる」
神二人が何かに反応した。
「娘よ鬼が来る。すまないが倒してくれ。あれはクズ神が私に向かって鬼をぶつけるつもりで人を投げたのだ」
「どういうこと?」
「私への攻撃というか嫌がらせだ。地球から人間を投げている。こちらに出現するときには鬼になるからな」
「なんで狙われてるんですか!」
「底辺陰キャ神が私に告白してきたが、フッたからな。誰があんな無能となんか」
「えええ・・・」
「すまんが私を守ってくれ。人の姿をするのも疲れる。どれ娘よ、お前は貞操と心臓どっちが大切だ?」
「えええ?し、しんぞ・・・あ、いや、貞操!」
なんなのこの質問!
なにをするにも生きていてこそと思ったけれど、生き永らえても『くっ殺せ!』な生き地獄になったら友弥に顔向けできん!
ゆる~い桃色の光がまた現れて、ねーさんが輝き、光が消えるとねーさんも消えていた。どこいった?
しかし、ねーさんのいた場所には何故かパンツ。
しかも見覚えのあるパンツ。
「ぎゃああああ!」
なんで私のパンツが床にあんのよ!
じゃあ今の私はノーパン?
いや、すーすーしていない。
慌ててパンツ拾ってポケットに突っ込み、上着をちょい持ち上げてズボンを引っ張ると、見覚えのないピンクのパンツが。
「暫くここで匿って貰うぞ。まだ力が安定してないものでな。なあに、ここ位は守ってやる」
「パンツが喋ったあ!」
「お前がそう言ったのではないか。因みに心臓守りたいと言ったならヌーブラになるつもりだった」
「あ、それありかも」
「今更遅い。それとサービスでパンツの中に私の加護を与えておいた。サービスだ。
性病の免疫力を高めておいたし、避妊のオンオフも思うがままだぞ。なあに、物理攻撃なら私が防ぐ。それとカッコよくしておいた」
「カッコよく?」
私は再びズボンを引っ張るり、今度はそのピンクのパンツも伸ばす!
「・・・・・・」
黒からピンクに変わってた・・・
どうすんねん、これ。
「カッコいいだろう」
「・・・・・・」
「では行くぞ」
「まじで?」
ええと、私は桃の神様に言われるがままにウエアル近郊に車で移動して、現れた鬼を倒しました。しかも単独で。
なーんかいつもより体のキレがよかったわ。前は鬼1体倒すのに数人がかりで10分近くかかったのに、単独で1分で倒せたし。桃神様がナビしてくれるし楽だわ。
「佳子さんすげえ!」
「魔王斬った女は流石だ!」
「流石は隊長の認める女!」
後からついて来た鬼切り隊の人もやんややんやの喝采。
ヤバい。魔王、勇者倒したと言われてるから、実力より過大評価されて困ってるのに、鬼退治も強かったら益々評判になってしまう。
本当の私はこんなには強くないんです!全部桃神様の力なんです!
身に余る過大評価に震えていると、桃神様が喋った。
「ちょっと体を借りる」
パンツからの声に鬼切り隊の人達は私が変な独り言してると思ってる。
それよりなによりなにすんのさ!
桃神様は鬼切り隊の人から弓矢一式を借りて仁王立ち。私の体で。
体の主導権奪われた私は、桃神様何すんだこのやろうと思いながらも様子見。
「鬼だ!」
「でやがった!」
何もないところから現れた鬼!初めて現れる瞬間見た!
鬼切り隊が危険を感じて号令を叫ぶ!
でも、桃神様は私の体を素早く走らせ、何もないところから現れた鬼の脇を駆け抜け、鬼の背中を取る!
鬼の背後には紫色のグロい時空の穴!なんじゃこりゃ!
桃神様はその穴に向かって矢をぶっぱなした!
そして矢はグロい穴に吸い込まれて消えた。次第に消える穴。
「手応えあり」
『へ?』
「体を返す」
『はい?』
ん?
どああああああっ!
鬼の真後ろじゃねーか!
しかも、刀納めたまんまだし!
あたふたしてたら鬼が両手をブンブン振り回して攻撃してきやがった!慌てて地を這って逃げる!
そして、どたばたしながら鬼切りさん達とやっとこさ鬼を退治した。
死ぬかと思ったわ。だってさ、パンツの加護がエネルギー切れなのか、体が元通りのへっぽこだし。
居合わせた鬼切りさん達に感謝。
鬼切り隊さんにさんざん礼を言って、ヨイショもしておいた。
鬼切り隊の人からは、なんで鬼を斬らずに背後に行ったのさと質問されたが、私にも説明出来ないので笑って誤魔化した。折角鬼の背後を取れたのに関係ない場所狙って矢を射ってるから馬鹿だと思われてるかも。
というか、あの禍々しい紫の時空の穴は鬼斬りさんには見えなかったらしい。あんなにくっきり見えたのに。
不思議だ。
鬼騒動も終わり、桃神様にあの時何をしていたのか聞いてみた。
「ああ、あれは地球にいる不細工神を撃ったんだよ。喜べ、お前もこれで神殺しだ」
「うわああああ!神殺しいいいいい!」
魔王倒した、勇者倒したに続いて遂に神殺し!
勝手に戦歴あげるなあ!
「心配するな。どうせ戸籍のない神だ。殺っても構わん。それに私に手を出そうだなんてヤツは許さん。不細工は特にな」
「あわわわわわわ」
こえええええ!
この桃神様電車で痴漢されたら犯人をホームから迫る電車に蹴落とすタイプだ!
マジこえええええ!
「心配するな。お前のケツは私が守ってやる」
そうだけど、そうじゃない!
【拝啓友弥様。私は神殺しをしたようです。】