何気ない平和な日
前回のあらすじ!
ついに出会った転生者
幸運に恵まれた少女、日和幸華。そしてなんか魔法の剣を使える柊心火。
神という強大な敵に復讐の剣は届かなかった。
平和な日常を過ごして仲間を増やして
いつか神に挑むその日まで、必死に牙を研ぐ。
5章「探偵部!」
「何お前その服どしたの?」
「服はどうもしないわよ。さっき美術部の子に絵の具の水かけられちゃってね。もう授業ないし帰るまで着替えなくていいでしょ」
見れば我らが指揮官のの服は真っ赤に汚れていた。場所はいつもの魔術研究部。時間はもちろん放課後。いつもこの描写だな?
いや、汚れていたと言えるのは説明を受けたからで事情を知らなければまず間違いなく血に見える。いや、こいつ幸運の持ち主だよね?
「この辺で事件でも起きたら犯人にされるんじゃねぇの」
「まさか。学校で出血事件なんてそうそう起こらないわよ。探偵部でもないんだから」
「あっ、お前」
「話は聞かせてもらったゾ!校内の事件は我らのモノ!そう!人呼んで!探偵部!!」
「来ちゃったよ」
どこから話を聞いていたか知らないが、パーン!というお手製のクラッカーと共に現れたのは、シルクハットに燕尾服、そして特徴的な顔の上半分を覆う白い仮面。
「そう!我が名は!門道翔!」
「そして私は!皆藤エル!」
同じくシルクハットに燕尾服、しかしザックリと膝上で切られたスカートを全て白で統一し黒い仮面をつけた相方も現れる。どこに居たんだ。
「「デティクティブダブルス!と呼んでもらおう!」」
「何しに来たのよクイズ同好会」
「探・偵・部!クイズはあくまで副業だ!」
そう、この二人この学校で探偵と呼ばれる仕事はほとんどないが、基礎知識を浅く深く取り入れていたらたまたま出たクイズ大会で優勝してしまったらしい。
以来、探偵としての仕事よりクイズ大会での活動報告が増えている、とはこの間部長の来栖から聞いた。というか、たまたまでクイズ大会に出るな。
「何やら事件の香りがしたのでね。華麗に登場させてもらったよ!」
「ヒマだったんでしょ?」
その言葉そのまま返すぞ隊長。そして素早くエルさんが繋ぐ。
「答えをどうぞ!」
「ヒマだったので校内を歩いていた」
「正解です!」
「いや、正解じゃなくて他の部室まで来て言うことか?」
思いっきりヒマだったんじゃねぇか。放課後に何してるんだオレら?いや、まぁ部長も居ないし今この部室の所有権で言ったら曖昧なんだけどね?でも今後の方針とか固めたいよね?隊長?
「よし。とりあえず10点ね」
「え?何点で勝ちなの?ゴールは何点なの?」
「しかしその服の謎は私が解くとしよう。この探偵!門道翔が、その服に付いた血痕の謎を!!」
「血じゃなくて絵の具なんだけど」
探偵は聞こえなかったフリをしている。なのでオレなりの推論を言わせてもらうと
「七色が前を見てなかった所で廊下の角でも曲がったんだろ」
「見てたの?」
「「えっ?」」
そうこの二人、推理力は低いのである。あらゆる知識はクイズでしか応用がきかない。何で探偵部なの?
「スマン!魔術研究部!助けてくれ!」
そこへ、探偵部の開けていた扉からすごいビジュアル系の鎖じゃらじゃらな奴が飛び込んでくる。真っ赤な上下でスタッズ?
なんか四角い銀のボタンがついてるし、ダメージパンツなのかやけに穴の開いた裾のビリビリのパンツ。髪型は赤に半分近くそり込みの入ったなんかカテゴライズしずらいショートカット。いつも思うがロックってのはオレには理解できないものだ。ロックってなんだ?
「誰かと思えば、えーと、演歌歌唱君だっけ?」
「熱血!熱血歌唱だ!明日のステージで使う予定のギターが魔力トラブルで音が出ないんだ!頼む!原因を調べてくれ!」
「今来栖部長居ないから判断は難しいぜ?」
部長の知り合いというか、魔術研究部は基本どこにでも協力していたらしい。部長の来栖さんがもともと人助けが趣味というか、それで活動が認められていたようなものなのだ。
人助けで人脈を作り上げただけに、誰もが魔力関係で困ったらここを頼るようになっていたらしい。たぶん今日遅れているのもそれが理由だろう。なんというか、騙されたらそれでも助けてしまうような、そんな危うい人なのだ。
「もちろん校内の事件は我らのモノ!同行しよう!」
「おぉ、クイ研も来てくれるのか」
「探偵部!」
もう訂正がめんどくせぇよ。
「人数は多いに越したことはねぇんだ。頼むぜ」
というわけで明日ステージで使うという楽器が置いてある部室へ向かう。魔術研究部は部室棟の3階なので地下の防音室までは少し遠い。なので疑問に思ってたことを口にする。
「軽音楽部ってお前一人じゃなかったか?」
「よく知ってるな。実績があれば人数が足りなくても部活動として成立するんだ。お、見えてきたな。見て欲しいのはこの正面のギターなんだが」
部室は打楽器、管楽器、弦楽器など大量にあった。両手で数えられないので数えるのは諦めた。というかお前一人なんだよね?あぁ、楽器は学校のモノなのか。
「どこも変には見えないけど。ジャックの断線じゃないか?」
「いや、最近線を変えたばかりなんだ」
「じゃあ魔力線は?」
と我らが司令官が聞く。詳しくない?というか魔力線とか初めて聞いたけど。そうか、電力用じゃなくて魔力をアンプにしたりとかあるのか。
「寿命ってもんがあるのよ。本体の強度を確かめていい?」
なんで楽器の魔力耐久度の強度検証なんて出来んの?なんでそんな技術勉強したの?うお、琴まであるよ。軽音楽ってなんだよもう。
「ほらここ、傷んでるわ。ここから魔力が逃げちゃってうまく音が鳴らなかったのね」
「これならオレでも直せそうだ」
「ん?探偵部は必要でしたか?」
あ、と作戦部長が気付く。顔!顔に出すな!感情を!
「もちろんよ!ジャックの断線から魔力線の劣化を気付いたんだもの!」
「答えをどうぞ!熱血さん!」
「お、おう。ありがとな、探偵部に、魔術研究部」
「正解!両者に10点ずつが加算されます!」
「いや、解決じゃねぇの?探偵なんだから」
思わず突っ込んでしまう。いつもクイズばっかやってるからそっちよりになっちゃったのか……
「すいません。歌唱さん居ますか?」
開けっぱなしの防音室の扉からひょこりと顔を見せたのは万年筆の先をイヤリングにしている間戸芽仕上さんだ。
いつも制服を着こなしていて二の腕のところに「報道部」とワッペンを付けている。と、思っていたら、来栖さんによるとアレはこの学校の制服ではないらしい。え?何でこの学校の生徒みんなちゃんと制服着ないの?
「校内放送用のマイクの調子が悪くて、見て欲しいんですけど」
「今手が離せないんだ。明日のギターを修理してチュ-ニングしなきゃならん。悪いが他を
「つまり!我らの出番!校内の事件は我らのモノ!そう!
「クイズ部でしたっけ?」
「探偵部!探偵部だ!」
報道部にまで間違えられるのか。割と情報通なイメージだぞ。
「まぁ話は歩きながらでも」
報道部は放送部と兼任している。報道放送部というか、よって立地は放送部のある部室棟の4階だ。上にあがるのか。
間戸芽から聞いた話をざっくりまとめるとこんな感じだ。マイクを今日変えたばかりで音が帰ってこないらしい。なるほど、軽音楽部のほうが向いている。
さっき防音室で見た限りでは歌唱は何本もマイクを持っていた。まぁ一本ごとに調整が違うのだろうが、それでもマイクの調整なら得意分野といった所だろう。
てかさっきと同じ内容で故障してないか?そうこう言っている間に放送室へ着く。
「このマイクなんだが」
「解決ね」
「え?では答えをどうぞ!」
「スピーカーのコンセントが抜けてるわよ」
「あっ……正か、解決!」
おぉ、今回は解決なのか。推理してないぞ。とゆうかマジでただのケアレスミスじゃねぇか。まぁよくやることだけどよ。なんでテレビのリモコンとかどっかいくんだろうな?
「おや?仕上君お客さんかい?」
安物のカメラを首から下げ手には大型高級カメラ、そして腰にもデジタルカメラを下げる情報収集のスペシャリスト白部進だ。
たぶん現像するときに服の反射光を気にしなくて済むように特殊な加工がされた上下黒のスウェットを着ている。
たぶん現像室には履いていかないからであろう靴におしゃれが集中している。髪はかなりのパーマで黒のアフロ一歩手前みたいな感じだ。
「そういえばチア部の部長が君を探していたよ。日和幸華さん」
「何かしら。探偵部も一緒に来る?」
「探偵……あれ?探偵部だ。いや、さすがに今回は遠慮するよ。謎に呼ばれたら呼んでくれ」
謎に呼ばれるって何?