修学強化月間
「私、生徒会って嫌いなのよね」
思った事を素直に口にする。2人もきっと同じ感想を抱いている事だろう。唐突にあんな事があったのだ。日和から「やれ」と言われて「はいそーですか」とは納得がいかない。あいつ部長ですらないわよね…?
「しかし、何故負けたのか理由もわからないうちは強くなれる機会も無いのが事実。自分が負けた理由を潰していくのは成る程、最短でゴザル」
「冠の言いたい事もわかるけどね。日和さん以外は一度こてんぱんにされてるわけだし」
「そもそも生徒会で何するのよ?何すれば実地研修の特訓になるの?」
「その質問には私が答えよう」
値の張る競泳水着の上に生徒会である事を誇示するように引っかけて着る学校指定の制服。そしてアイデンティティであるギザギザの歯を見せつけるようにニヤリと笑う。睦月鯱その人だ。
突然バチリと視界が切り替わる。一人称視点のゲームをしていたら誤ってリモコンを踏んづけてチャンネルが変わったかのような感覚。
「さて、どうしてここに呼ばれたかわかるかい?」
見た目は20代、気の強そうな女子大生。パンツスタイルの裾をすっぽり覆うロングブーツ、肩までかかる黒髪ストレートに大きめの丸眼鏡、キリリとした眉にイタズラっぽく微笑む八重歯
「心当たり無いわね。私予定詰まってるんだけど」
「そいつは良かった。ボクの魔法は記憶に干渉する。もう一度聞こう、どうしてここに呼ばれたかわかるかい?」
とゆうことは初めましてではない。そしてもう一度会う必要があった。それが今でなくてはならない理由も。それらを総合すると
「その歳で『ボク』はキツくない?」
「失礼だなキミは。『どんな魔法が欲しいか決まったか?』って聞きたかったんだよ」
「『今のところは必要無い』って答えたんじゃない?」
一瞬驚きの表情を見せるが正解だと言うように片目を閉じ「続けて」と先を促す
「私が欲しい魔法なんて決まってる。単純な火の魔法?応用の効く水の魔法?戦況を支配する精神魔法?違う違う、『神に勝てる魔法』よ。それさえあれば他はどうでもいい。例え他の何に使えないとしても目的を果たす為に必要なもの、それしか求めないハズ」
「そしてボクが何て言ったかまで予想がついてるんだろ?『その代償をキミは払えない』ってね
魔法を渡すにはルールがある。ボクに会える事。そして代償を支払える事。この魔法都市の住人で代償を払えないとどうなるか。卒業時に学校での記憶の一切を失い戦闘能力を無くす。では代償は何か」
改めて周りに目を向けるとどこかで見覚えがある気がする。思い出せない。忘れている?コイツに干渉されているから?何か違う気がする
「ボクの魔法を『自分の魔法』に成長させる事、これが簡単に聞こえて意外と難しい。ボクは魔法として一皿の料理の材料と完成図は見せるけどそこからアレンジを加えて一食の食卓を完成させる。そこで改めて食卓の図面をもらうのさ。代償としてね
これを改めてキミの魔法に当てはめると例えば神に勝てる食材と完成図を見せてもそれはもはやアレンジも派生もありえないのさ。何せ手を加えれば料理が形を変えてしまうからね、とまあ、ここまでは2度目の説明なんだけど」
だから『今のところは必要無い』何か引っかかる、思考にモヤがかかるような。さっき「記憶に干渉する」と言っていた。違う。そうじゃない。こいつじゃない。もっと前だ
「って訳で別に魔法渡せない事も無いんだけど渡すとしたら『一回きりの制限付きで代償は全ての記憶』になるって話。ここまで代償を貰えば『神に勝てる魔法』渡してもいいよ」
「アンタもしかして神なんじゃない?」
そうだ。あれは一度死んだ時。この世界に来る前。ここと同じ空間を見た。あの時の話相手とは違うが
「……キミの復讐相手は『菊』だね。彼女以外あり得ない。彼女は遊び半分に才能を残す事がある」
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