幸運に恵まれた少女
1章 「神に!復讐を!」
自分でも壮絶な人生だったと思う。
私は運のいい娘だった。特別に、特殊に、神にすら愛されていた。じゃんけんで負けたことは無いし、なんだったら町の福引も外れたことは無かった。
そこに目を付けた親は物は試しに、宝くじを買ってみた。これが間違いだった。たちまち生活は安定し、家計を支えてしまった。
最近ランドセルが外れたばかりの女の子が。共働きだった両親は仕事を辞め、ギャンブルにずぶずぶと、沈んでいった。ただの人間が、神に愛されるべきではなかったのだ。
それから一年が経った。いつものように父親に連れられて競馬に大金を突っ込んでいた。いくら勝てるからといって大金を突っ込んでいたらレートが下がってしまい黒字は少なくなる。
しかし勝つとわかっているならいくら少ない黒字でも、早く終わる方がいい。時は金なりとはよく言ったものだ。当たると言っても宝くじでは億はもらえず、せいぜいひと月に20万とかそんなものだ。
人を狂わせるのはいつも、人なのだ。私は何かが、狂ってしまったのがわかった。しかし分かった時には遅すぎた。
さらに一年が経った。ある日私たち家族は、と言うより私は、ヤクザに目をつけられてしまう。ありがちなことだ。彼らだって生活しているのだ。負け続けるというのは商売が成立しなくなるのだ。
実際、私たちが勝ち続けることで会社が傾いたなんて話は聞いたことは無い。しかしだからこそ目につくのだろう。ある程度、利益を出しながらも依存する、と言う分には問題なかったのだ。
しかしギャンブルにおいて「絶対に負けない」というのはどうしても目を引くのだ。だから一つの勝負を持ちかけた。これに負ければ一生ヤクザの手足として働くらしい。私の命と引き換えにサイコロを一つ差し出した。
「サイコロを振るんだ。これが『お父さん』これが『お母さん』そしてこれが『妹』の分だ」
一つのサイコロを見せながらそれぞれ『3』『4』『5』を指し示す
「最後にこれが君の家族だ。ただし、これを出せばキミの自由は保障しよう。最高峰の待遇を用意するし、それなりの地位も用意する。なんなら一人でも生きていける環境と時間と金を用意して君とは一生関わらないと約束を取り付けるのもいい」
と、『6』を指し示す。つまり、『1・2』は、私以外は助かる。『3・4・5』は、私と家族が助からない。『6』は、私だけ助かる。振らないという選択肢は無い。
私は『6』を出した。出してしまった。どれだけ幸運でもそれは「自分にとって」なのだ。目の前で家族が死んでゆくのを見ながら、ゆっくりと呪った。
こんなことが許されるなら、人生を恨むことが許されるなら、世界を恨むことが許されるなら、私はゆっくりと神を呪った。
その後の事はよく覚えていない。はっきりと覚えているのは、そのヤクザのトップに会い、刃物を借りて逆手に持ったソレを自分の胸に当て声の限り叫んだ。
「神に!復讐を!」
ゆっくりと遠くなる意識の中で、次はこんな人生じゃなければいいな。と思った。
序章です。続きます。