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もう一度世界を救うなんて無理っ  作者: 白石有希
未踏章 もしもの世界
302/305

未踏章 1話 魔王少女の行き先

※本編とは違う世界線での話ですので、IFルートが苦手な方は注意を。


・灰原エレナHappy END『魔王少女の行き先』

解放条件

・6章終了時点で『灰原エレナとの親愛度がMAX』『ギャラリーとの親愛度が70/100に到達』『6章のラフガ戦(強制敗北イベント)において、ラフガのHPを50%以下に減少させた状態で敗北』を満たすと解放。


本編との差異

・6章終了時にエレナ離脱イベントが発生しない

・6章終了時にギャラリー加入イベントが発生

・エレナ、ギャラリーの《彩襲形態》習得イベントが発生しない


ラスボス

――ラフガ・カリカチュア


総評

・エレナの離脱を防げるため、薫子の奪還に集中することが可能となり全員生存ENDが目指しやすい。

 半面、エレナとギャラリーの強化イベントが発生せず、ラスボスがラフガということもあり最終決戦においてシズル、メディウム、アッサンブラージュが参戦しないなど戦力が不足しがち。


 ――ついにこの日が来た。

 

 蒼井悠乃にとって、おそらく人生でもっとも特別な日となるであろう本日。

 天気は快晴。

 この上なく晴れやかな気持ちで歩みだせる。

 ――新しい人生を。

「良い天気じゃの」

「僕としては、別に曇っていても良かったんだけど」

 隣にいる少女――いや、女性に悠乃はそう笑いかけた。

「灰色は、僕の好きな色だからね」

「むぅ」

 悠乃の言葉に女性――灰原エレナはわずかに戸惑いを見せた。

 彼女は一瞬で動揺を抑え込み、口を開いた。

「と、とはいえじゃ。晴れるに越したことはないじゃろう?」

 そう言うと、エレナは顔を伏せる。

 顔を隠したかったのだろう。

 だが残念ながらそれは無駄な努力だった。

 今の彼女は、耳まで赤いのだから。


「せっかくの……結婚式なのじゃから」


 恥ずかしそうにエレナはそう言って、ウエディングドレスの裾を掴んだ。

 彼女は花嫁衣装を身に纏っている。

 純白にして潔白の――戦うための衣装ではない。

 一人の女性の新たな人生を祝福するためのドレスだ。

(本当に……綺麗だ)

 悠乃の視線は自然とエレナに固定されてしまう。

 魔法少女となったことで魔力の自力供給が可能になったからだろう。

 彼女の体は順調に成長をしていた。

 再会を果たした時は一切成長のなかった幼い体は、すでに大人のものへと成熟している。

 妖艶ささえ漂わせる大人びた顔立ち。

 締まった肢体とは対照的に強い主張を見せる膨らみは、彼女が女性である事をどうしようもないほどに認識させる。

 これは少し不甲斐ないが、エレナの身長はすでに悠乃を越えていた。

 そんな魅力的な女性と相思相愛であれること。

 この奇跡に悠乃は感謝する。

「思えば、本当に奇跡の連続だったなぁ」

 悠乃はそう呟いた。

「最初は敵同士だったエレナが仲間になって――最後は家族になった」

 途方もなくわずかな可能性の未来だっただろう。

 偶然と呼ぶには奇跡的すぎる。

 運命と呼んでしまいたくなるような奇跡。

 そんな未来に悠乃は立っている。

「そうじゃのぅ。妾もまさかこうなるとは思ってもいなかった」

 感慨深そうにエレナは息を吐く。

 決して平坦な道ではなかった。

 この未来を掴むため、何度も死線を乗り越えた。

 今、彼女の目にはこれまで乗り越えてきた過去が映っているのだろう。

 苦しくて、辛くて――それでも必要な試練だったと思える日々が。

「でも、こうなって良かったって心の底から思ってるよ」

「……妾もじゃ」

 二人は照れながらも笑いあう。

 彼女と家族になれることは何物にも代えがたい幸せだ。

 悠乃は心からそう感じていた。

「ぁぅ」

「……?」

 そんなことを考えていたら、彼女への想いが抑えきれなくなってきた。

 気が付くと悠乃はエレナへと歩み寄り、艶やかな灰髪を撫でていた。

「ちゃ、ちゃんとセットしておるのじゃから、あまり触れては駄目じゃぞ……?」

「そうだったね。ごめん」

 腰まで伸びたエレナの灰髪は綺麗に編み上げられている。

 不用意に触れてしまえば髪型が崩れてしまうかもしれない。

 悠乃はもう少し触れていたいという気持ちから目を逸らし、手を引いた。

「ぁ――――」

 その時に聞こえた切なげな声。

 最初は、名残惜しさのあまり自分が漏らしてしまった声かと思った。

 だが、そうではないことはエレナの紅潮した顔が如実に語っていた。

 彼女は落ち着かない様子で目を泳がせている。

 白魚のような指はただ意味もなく曲げ伸ばしを繰り返していた。

「ゆ、悠乃……」

 エレナは頬を染めたまま、か細い声で言葉を紡ぎ出す。

「えっと……あれじゃ」


「口紅なら……すぐに塗り直せるのじゃが……」


「…………!」

 遠回しな言葉。

 だがその一言にどんな意味が込められているかなど明白で――

「ええっと……」

 悠乃は裏返りそうな声を必死に制御しながらエレナを見る。

 心臓が痛いほど脈打っている。

 我慢は――できない。

「じゃあ……」

 悠乃は一歩踏み出した。

 ほとんど密着するような距離感。

「ちょっとフライング気味だけど――ここで誓うよ」

「うむ……」

 エレナが目を閉じた。

 彼女が悠乃を受け入れた。

 そのサインを確認すると――


「――永遠の愛を」


 二人の影がつながった。



「ぐぬぬぬぬ…………」

 この世界において、万人に受け入れられる事象は存在しない。

 誰かの利益は誰かの不利益。

 幸せの形でさえ共通しない。

 だからどんな物事でも、全員から等しく祝福されるとは限らない。

「あ……アンタをお兄様と呼ぶ日が来るだなんて……!」

 そう言って唇を噛むのはギャラリーだった。

 彼女は最後まで――厳密にいえば今でもエレナの結婚に反対していた。

 もっとも、式において誰よりも泣いていたのも彼女なのだが。

「そうは言ってものぅ。妾は悠乃の妻となったのじゃ。そればかりは慣れてくれとしか言えぬのぅ」

「わ、分かってますけど……」

 ギャラリーは「ぅ、ぁぁ……」などと呻きながら頭を抱えている。

 彼女としてはどうにも処理しがたい事態らしい。

 悠乃たちの複雑な立ち位置を想えば、仕方のないことかもしれないが。

「それにこの程度でうろたえて――」


「――子供が……できたら、どうするつもりなのじゃ」


「「…………!?」」

 頬を染めながら投下された爆弾。

 その威力に悠乃とギャラリーが硬直した。

「ぇ……ぁ。それってつまりコイ――お兄様の……が、お姉様の……を?」

 ギャラリーの視線は震えながらも悠乃とエレナを交互に移動する。

 少しずつ言葉を咀嚼し、理解するにつれてギャラリーの顔が茹であがり――

「い、いやぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!?」

 そして発狂した。

 どうやら精神ダメージが許容値を越えたらしい。

「ああ、あ、アンタは男にもなれるじゃない! じ、自分ので産めばいいじゃないのよ……!」

「セルフ出産!? というか、僕のメインが女の子みたいに言わないでくれないかな!?」

「じゃ、じゃあアタシが産めばいいんでしょ……!? アタシの事はどうしても良いから、お姉様を穢さないで!」

「え、えぇ……」

「ってアタシは何言ってるのよぉぉぉ…………!」

 再び頭を抱えるギャラリー。

 錯乱しすぎて、自分でも言っていることの意味が上手く認識できていないようだ。

「僕が欲しいのは子供じゃなくて、エレナとの子供なんだけどなぁ」

 悠乃は困り顔で頭を掻いた。

 誰に聞かせるつもりでもない呟き。

 だがそれは聞こえてしまっていたらしく――

「わ、妾も……悠乃とでないと嫌……じゃ」

「ふわぁ……」

 エレナの言葉に悠乃は赤面する。

 これまでの人生で何度も繰り返した言葉。

 しかし色あせることなく、何度でも重ね塗ることのできる気持ち。

(やっぱり、僕は心底エレナのことが好きみたいだ)

 いつも通りの、分かりきった気持ちを再確認する。

 この気持ちが揺らぐことはないと断言できる。

 それはきっとエレナも同じだ。

 だから二人は見つめ合うと、同時に微笑んだ。

 照れと喜びが入り混じった笑顔を浮かべあう。

 まるで二人しかいない世界。

 そんな空間で二人は着実に愛を育んでいく。

 これからもずっと、ずっと、ずっと。変わることなく。



「――――――――――――きゅぅ」

 一方で、ギャラリーは卒倒し床に体を投げ出していた。

 二人きりの世界に入り込んだ悠乃たちがそれに気付くのはもう少し後のことだ。

 時系列的にはラスボス戦から6年後くらいのエピローグです。

 大体、悠乃の大学卒業&エレナの高校卒業を待った感じですね。

 原作時点においてエレナは世間からの扱いは小学生となっているので、戸籍的には悠乃とわりと歳の差がある設定となります。


 次話の投稿がいつになるかは未定です。

 ちなみに予定としては『永遠も悪くないわね(天美リリスHappy END)』を書くつもりです。


 他の予定としては――女神マリアルート、世良マリア(素体)ルートなんかも考えています。

 

 


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