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もう一度世界を救うなんて無理っ  作者: 白石有希
最終章後編 天魔血戦・滅亡編
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最終章 63話 最終血戦

 ついにマリアとの決戦が始まります。

「……はぁ。じゃあ、もう移動しようか」

「……はい。取り乱してすみませんでした……」

 うなだれる薫子。

 悠乃はそんな彼女の手を掴んだ。

 そのまま彼女の手を引いて歩き出す。

「…………!」

「? どうしたの薫姉?」

「……いえ。女神になるなんて考えなければ、わたくしにもチャンスがあったのでしょうかと――」

「?」

 薫子が言わんとすることが分からず悠乃は首を傾げた。

 とはいえ薫子は妙に聞き返しづらい雰囲気を放っている。

(僕も戦いに集中しなくちゃ)

 悠乃は薫子の言葉を一旦忘れる。

 すでに戦争は終わりが近い。

 だが、いつ敵と出会ってもおかしくないのだ。

 気を抜くことは赦されない。

 何より、今一番遭遇する確率が高い相手は――

(マリア……)

 世良マリア。

 悠乃たちの前に現れた身元不明の魔法少女。

 そして、始まりの魔法少女。

 最強の魔法少女。

 おそらく、女神化してなお届かない高みにいる存在。

 そんな彼女を打倒しない限り、この戦争は終わらない。

「とにかく身を隠して、みんなと合流――」

 悠乃がそう言いかけた時――


「《捜索網羅(サーチ&デスカバリィ)》」


 天から光が降ってきた。

 一筋の光明は――

「薫姉ッ……!?」

 一条の光が指し示していたのは薫子だった。

 彼女の手の甲を照らし出すように光が差し込む。

 それだけではない。

 光に照らされた箇所には不可思議な模様が浮かぶ。

 悠乃の目から見て、意味があるようには思えない紋様だ。

「これは――」

 一瞬の間。

 この場にいる全員が、目の前の現象の意味に考えを巡らせる。

「皆さん! わたくしから離れて――!」

 そして、その意味を最初に探り当てたのは薫子だった。

 警告を飛ばす彼女の声は緊迫している。

「これは――」


「マーキングですっ……!」


 薫子が叫ぶ。

 だがそれは――


「大正解~☆」


 ――もう遅かった。

 チラリと空中に青緑の光が走る。

 火花のようにも見える一瞬の光。

 それが瞬き消えた時、そこには――

「……マリア」

 ――世良マリアがいた。

 彼女はピンクの髪をなびかせ、空中に立っていた。

 純白にして潔白のドレスを身に纏い。

 輝く光翼を広げて。

「見ぃつけた☆」

 マリアは笑う。

「――嘘吐きのお姉ちゃん☆」

 無垢な笑顔の裏に、隠し切れない非難の色を宿して。

「……マリアさん」

「薫お姉ちゃんさ、言ったよね? アタシを助けてくれるって」

「それは――」

「それって、嘘?」

 薫子が言い淀む。

 彼女が女神にならないということは、マリアは女神を続けるしかないということ。

 女神システムが空席となることは、世界の破滅と同義なのだから。

 だから、薫子が人間として生きるという決意をした裏で、マリアが救われる道が途絶えてしまったことも事実。

 だからこそ、薫子は言葉を紡ぎ出せなかった。

「あ、嘘でもいいんだよ?」

 マリアは微笑む。

「だって、逃がさないから☆」

「「「「「ッ!」」」」」

 マリアの雰囲気が変わった。

 開戦の予兆を肌に感じ、悠乃たちは一気に距離を取る。

 しかし――

「《反則的神速(チーター)》」

「ッ!?」

 薫子がびくりと体を震わせる。

 それも当然だ。


 ――マリアが、背後から薫子に抱き着いていたのだから。


(いつの間に――!)

 速い。

 移動する彼女の姿が見えなかった。

 動く前兆さえ分からなかった。

 ――たとえば、ギャラリーの空間転移であれば事前に察知できる。

 空間を開くために、わずかなりとも魔力を使うからだ。

 極限まで研ぎ澄まされた神経は、それを見逃さない。

 転移そのものは一瞬でも、さらにワンテンポ前の時点で行動を予測できる。

 だが、マリアの移動にはそれがない。

 前兆を感じる間もなく、すでにマリアは移動していた。

 マリアが移動したことを理解した瞬間には、彼女は薫子に抱き着いていた。

 つまり、彼女の移動を察知して悠乃たちが反応した時――すでにマリアは悠乃たちを殺せるということだ。

 人間の反射速度は0.1秒を切ることはないという。

 しかしマリアの移動するための所要時間はそれより短時間。

 どうあがいても、人類の反射神経では間に合わない。

「にゃぁぁッ!」

「あわわわわわ……!」

 寧々子の蹴りがマリアの側頭部を狙う。

 すると彼女は慌てた様子で薫子から離れた。

「そっかぁ。人間の反射速度を越えて動いても、未来が視えるなら話は別だったね」

「マリアちゃんが死角に移動してなくて良かったにゃん。だから、すぐに気付けた」

 寧々子はマリアを見据える。

 彼女が持つ魔法は未来視。

 だからこそ、マリアが現れる場所をあらかじめ知り、反応できたのだ。

「んー。でも、この対応ってことは、寧々子お姉ちゃんもあたしの敵ってことかな?」

「ねえ、マリアちゃん。女神システムって本当に必要なのかにゃ?」

「?」

 寧々子はマリアに問いかける。

「マリアちゃんは女神システムを熟知してる。マリアちゃんが協力したなら、誰も犠牲にしないシステムが作れるんじゃにゃいの?」

 誰も犠牲にしない新システム。

 女神を据えることなく、人の手を借りない自浄装置。

 そんなものがあったのなら、誰も女神になる必要はない。

 マリアも、薫子も。

「ん~?」

 マリアは腕を組んで考え込む。

「多分、頑張ればできなくはないんじゃないかなぁ? 女神システムは、あたしが一人で組んだわけだし。改善の余地がないとは、さすがに言えないかなぁ」

 マリアは最初の魔法少女。

 女神を原点とした魔法少女に関するシステムは、全てマリアによって組まれている。

 つまり、マリア以外の協力者がいれば、より良いシステムの構築も夢物語ではない。

「なら! そうすれば誰も犠牲にせずに――」


()ぁっ~」


「…………え?」

 寧々子の言葉を遮ったのは、ひどく子供っぽい拒絶であった。

 マリアは不満げに頬を膨らませている。

「もし失敗したらどうするの? せっかく人間としてまた生きられるのに、世界が滅んだら嫌だもん」

「だから、薫子ちゃんを犠牲にするの?」

「うん。安定志向ってやつだよ☆」

 確かに、新システムの開発に失敗をしたのなら、世界が滅ぶリスクもある。

 マリアが全知全能の女神でなくなる以上、悠乃たちではカバーしきれない世界の危機もあるかもしれない。

 それをマリアは嫌った。

 せっかく目的を達したのに、世界が滅んでは意味がない。

 だから、自分以外の誰かをシステムに捧げる。

 そうすれば、確実な平和が手に入る。

 そんな論法なのだ。

「なんで……みんなが笑えるかもしれない未来があるのに――それを目指そうとは思わないの?」

「え~? だって、あたしはもう一杯頑張ったもん。もう、一抜けしても許されるでしょ☆」

 悠乃が尋ねるも、マリアはあっさりとそう言い返した。

 ――マリアの言い分も強く否定はできない。

 彼女は幾星霜もの間、一人で戦い続けた。

 そんな彼女が、いまさらリスクを負いたくないというのも批判できない。

 安寧を求める権利が、彼女にはあるのだろうから。

 でも――

「ごめんマリア。やっぱり、僕は君と戦うしかないみたいだ」

 新システム。

 それをマリアと目指せるのなら、それが一番だと思った。

 そうすれば、マリアを見捨てなくて済む。

 彼女とだって、同じ未来に生きられる。

 そんな未来があるのなら、何よりだと思ったから。

 でも、マリアはその道を拒んだ。

 だから、悠乃たちの意見は永遠の平行線だ。

 交わるためには、どちらかが折れるしかない。

 自分から折れる気がないなら、相手を叩き折るしかない。

 そんなお話だから。


「僕は――君を救わない」

 ちなみに本編が完結した後は、様々なヒロインとのIFエンドを書くことを計画しています。

 さすがにルート全体を書くことはできないので、エンディング部分だけにはなりますが。


 それでは次回は『Deicide』です。

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