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もう一度世界を救うなんて無理っ  作者: 白石有希
最終章後編 天魔血戦・滅亡編
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最終章 33話 民に捧げる心臓

 後編における最初の山場は薫子とグリザイユの戦いです。

「《敗者の王(グランドグレイ・)の最期(ディストピア)》」


 純白にして潔白の花嫁衣裳がふわりと広がる。

 清純さと艶めかしさが同居する姿。

 グリザイユはまっすぐに薫子を見据えていた。

「――――《花嫁戦形(Mariage)》ですか」

 薫子は目を細める。

 魔法少女化した《怪画(カリカチュア)》。

 それは前例のないことだ。

 しかもそんな魔法少女の《花嫁戦形》。

 はたしてどんな成長を遂げるのか。

 薫子は警戒の度合いを引き上げる。

(いくら速くても、未来が視えていれば対応できます)

 薫子はグリザイユの動きに集中した。

 そしてついに――グリザイユが動く未来が視えた。


()()


 グリザイユが――消えた。

 薫子は未来に従ってガードを固めるも――

「ぃッ……!?」

 気が付くと、薫子の体は横に吹っ飛んでいた。

 ――見えていた未来では、グリザイユは正面から攻撃してきたというのに。

(未来が変わった――)

 未来を読み落とした。

 いや。未来が変化した。

 想定外の出来事。

 しかし薫子の直感はその答えを導き出していた。

(これは――反応速度)

 薫子は攻撃を完璧なタイミングでガードした。

 しかしグリザイユは、薫子が攻撃を読んでいるのを見てから狙いを変更したのだ。

 刹那を争う戦いの中の、さらに小さな単位での反応。

 あまりにも直前の反応だったため、変わった未来を薫子が確認する余裕もなく攻撃を受けてしまったのだ。

「ここに来て、地力の差が広がりすぎましたね――」

 元より、身体能力ではグリザイユが勝っていた。

 それでも薫子が有利に戦いを進めてきたのは、的確な読みと、それを支える未来視だ。

 それらの要素で差を埋め、覆してきた。

 だがついに、その差が埋められないほどに開き始めた。

 未来が視えていても、対応ができないほどに。

(もしも今ので変身を解除させられていたら――)

 そこまで考え、思い至る。

(先程の攻撃で、わたくしに血を流し込んでいたのなら戦いは終わっていたはず)

 グリザイユは己の血を敵に注ぎ込むことで、相手の変身を解除できる。

 だから、さっきの攻撃は血液を使ってするべきだったのだ。

(判断ミス? そうとは考えにくいですね)

 彼女がそんなくだらないミスをするとは思えない。

 なら――

(血流操作の能力は――別の目的で使用されている?)

 だから血液を使用した攻撃はできなかったのではないか。

 そう仮定した。

 思考をめぐらせ、薫子は瞬時に仮説を組み上げる。

「貴女の異常な強化の理由は分かりました」

 薫子は微笑む。

 種明かしの時間だ。

「貴女の《花嫁戦形》の能力は身体強化。本来なら《花嫁戦形》の副次的な効果でしかない基本性能の向上に特化した進化」


「そして、《彩襲形態(オーバーコート)》による血流操作で血の流れを加速させ、さらに身体能力を底上げしている」


 それこそが薫子の出した結論。

 血流を速めれば酸素の供給速度は上がり、パフォーマンスの限界値が上がる。

 潤沢な酸素は脳を活性化させ、反応速度も強化する。

《花嫁戦形》と《彩襲形態》による恩恵をすべて身体能力の向上に注いだ結果。

 それが今のグリザイユだ。

 すべての歯車が噛み合った、高い近接能力を持つ《怪画》だ。

 おそらく、ただの速度ならグリザイユはキリエと大きく差がない。

 一方で、キリエにはその速度を制御するだけの反応速度がなかった。

 無論、戦士としては充分に優秀な反応速度ではあったのだが、それでも足りないほどのスピードだったのだ。

 対して今のグリザイユは、限界の速度の中でも繊細さを失わないだけの反射神経を兼ね備えている。

 結果として、体感的にはグリザイユのほうが一段速い。

「油断、なりませんね」

 薫子は静かにグリザイユを見つめる。

 これまでは大技を持つが攻撃の当たらないグリザイユと、威力に欠けるが何度も攻撃を当て続けている薫子という構図だった。

 しかし、今のグリザイユの攻撃は――届く。

(少し、戦い方を変えましょうか)

 ゆえに薫子も作戦を変更する。

 ――別に、今グリザイユを倒す必要はない。

 ラフガが死んだ以上、薫子に時間切れはない。

 焦らずじっくりと戦ったとしても、すでに《正十字騎士団》の勝利は確定している。

 そう言ってしまえば消極的に聞こえるが、これはこの場で最も合理的な一手だ。

(時間が経てば経つほど、わたくしの女神としての覚醒は進んでゆく)

 今でもリアルタイムに魔力の最大値が伸びている。

 このまま完全覚醒したのなら、再び形勢は戻る。

(それに、もしもわたくしの予想が正しいのであれば――)

 薫子が出した解答が正しいのならば。

 グリザイユが得た能力が予想通りならば。

 戦いが長引けば最期は――


()()()()()()()()()()()()()()()()()


 身の程を越えた願いに手を出した王は、無残な末路を迎えるだろう。


 グリザイユの《花嫁戦形》の詳細はもう少し後で説明しようかと思います。

 言えることは《敗者の王の最期》という不穏な名前に恥じない、わりと不穏な能力ということです。

 彼女らしい魔法ではあるのですが。


 それでは次回は『はじまりの君』です。

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