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もう一度世界を救うなんて無理っ  作者: 白石有希
最終章前編 天魔血戦編
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最終章 4話 不確定要素

 悠乃たちも参戦します。

「――始まったね」

 悠乃はそう呟いた。

 彼女たちはすでに魔法少女となり大通りの中央に立っていた。

「ついに……この日が」

 美月は緊張した面持ちで灰色の空を見上げている。

 敵の姿は見えない。

 だが戦闘音は聞こえていた。

「町中で戦いが起こっているんだよね……?」

 春陽も不安そうな表情で周囲を見回していた。

 戦いが勃発したことにより、一般人は走りながら逃げている。

 一人でも多くの人が無事でいられることを悠乃は心の中で祈る。

 とはいえ、彼らを守ることに全力を注ぐこともできない。

 この戦争は、悠乃たちでさえ生き延びられる確率の低い戦いなのだから。

「どーするよ」

 璃紗は大鎌を肩にかついで一歩歩み出した。

 彼女の視線と悠乃の視線がつながる。

 二人は頷き合うと――


「僕たちは、()()()()()()()()()()()()()


 悠乃はそう宣言した。

「厳密にいえば、()()()()()()()()()()()()()

 今日のために悠乃が考えてきた戦略だ。

「僕たちの目的はラフガを倒すことでも、マリアを倒すことでもない」

 世界を救うためならば、その二人を倒すことを最重要と考えるべきだろう。

 だが、今の悠乃は世界を守る魔法少女なんかじゃない。

「僕たちじゃ、もう一度世界を救うだなんて言えない」

 言えるだけの力がない。

 だから――


「僕たちは、救いたい人だけを救う」


「そのために、この戦争を長引かせる」


 負けそうな陣営を支え続け、戦争状態を維持する。

「両陣営を疲弊させつつ、ラフガとマリアを戦わせて――」

 結局のところ、魔王と女神のぶつかり合いがこの戦争の中心だ。

 二人のどちらが勝つかにすべてがかかっている。

 勝った側の陣営の欲望のままにすべてが運んでゆく。

 その運命を――覆す。


「――勝ったほうを暗殺する」


 正面から戦えば勝ち目はない。

 だから、暗殺する。

「もう、僕たちに選べる手段はない」


「勝つためなら――大切な人のためなら……やらなくちゃ」

 

 悠乃は思い出す。

 かつて、薫子に黒百合紫の暗殺を提案された時のことを。

 その時、悠乃は難色を示した。

 だけど、今回は自分からその選択肢を選び取る。

 これ以上、大切な人を失わないために。

 奪われたものを、取り戻すために。

 手段は選ばないと決めた。

「僕たちはこの戦争の不確定要素だ」

 そうあらねばならない。

 運命を覆し得る要素になれなければ、悠乃たちは何も為せない。

 運命に抗い、砕かねばならない。

 そんな不確定要素でなければ。

「魔王も女神も。すべて乗り越えて――」


「みんなで、一緒に帰ろう」


 それが悠乃の願い。

 大切な人が揃った世界。

 また一緒に笑える世界。

 誰かが欠けていたのなら実現しない未来。

 だからこそ、死地を前にしてそう言う。

 全員で生き残ろう、と。

「安全マージンを取るなら、全員で動くべきだろーけどさ。どうする?」

「どうせこれほどの戦力の衝突だからね。戦いが始まれば、離れていても状況は分かるだろうし――固まって行動しよう」

 散開するメリットは、索敵効果の向上。

 今回に関していえば、薫子やグリザイユたちを見つけやすいという利点。

 だが強力な戦力が揃っている以上、戦いが始まれば目立つ。

 わざわざ味方と別れてまで探さなくとも、戦闘の余波を目印にすれば索敵能力は必要ない。

 それならば、一緒に行動してリスクを避けるほうが得策だ。

「今回の戦いは、私たちより強い相手も多いですからね。単独行動は危険だと私も思います」

「みんなで協力だねー」

 黒白姉妹も同意を示す。

 方針は固まった。

 あとは、動くだけだ。

「それじゃあ――行こうか」

「おう」「はい」「うんっ」

 悠乃の宣言に、仲間は思い思いの言葉で応える。

(皆と一緒なら、運命だって変えられるよね)

 悠乃はそう心に刻んだ。

 不安と、自信を込めて。

 言い聞かせるように。

 誓うように。

(それに――)


(なんだか今日は……魔力の調子も良いし)


 悠乃は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 はたして、悠乃に起こりつつある異変は光明なのかさらなる苦難をもたらすのか。


 それでは次回は『会敵』です。

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