表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度世界を救うなんて無理っ  作者: 白石有希
7章 もう一度ここから始めよう
175/305

7章 11話 姫騎士VSメイド隊

 仲がいいのか分からないメイド隊戦は続きます。

「あららぁ?」

 アッサンブラージュは声を上げた。

 彼女の前には大穴が開いている。

 それは、彼女が倫世を殴り飛ばしたことで作られたものだ。

「あんまり美人さんだったからぁ、ムカついてぶん殴っちゃいましたぁ☆」

 アッサンブラージュは舌を出すと、頭を軽く小突いた。

 彼女は将軍ではない。

 しかし彼女には一つの特化した能力がある。

 パワー。

 あるいは筋力。

 あの肉体から放たれる一撃は、ラフガを除けば《新魔王軍》最強。

「出てきませんねぇ」

 巻き上がる砂煙は倫世の姿を隠している。

「大丈夫ですかぁ? それとも、殴られてブサイクになっちゃいましたぁ?」

 

「――――《多重層(エスクード・)魔障壁(エスペシャル)》」


 砂煙の中から倫世が姿を現した。

 彼女は――無傷。

 倫世の胸元には六角形の障壁が浮かんでいた。

「? あのバリアはアージュ先輩の馬鹿が砕いたんじゃ――」

「誰が馬鹿ですかぁ?」

「あ、馬鹿力っす」

 メディウムはアッサンブラージュから目を逸らす。

 音の外れた口笛を吹きながら。

「悪いけれど、この《魔障壁(エスクード)》はさっきまでのとはまったくの別物よ」

 倫世は立ち上がる。

 体にダメージはないようだった。

「《多重層魔障壁》は666枚の《魔障壁》を重ねた絶対防御。馬鹿力で突破できると思わないでちょうだい」

 倫世の手中に鎗が現れる。

 彼女は身を反らしそれを――投擲した。

 射出される投鎗。

「おっと……! 当たらねぇって!」

 その標的になったのは――メディウム。

 しかし一直線の飛来物など、身軽な彼女にとって苦労する攻撃ではない。

 彼女は軽いステップで鎗の軌道から逃れるが――

「曲がった……!」

 鎗がカーブした。

 ――メディウムを追うように。

「やば――!」

「《想い寄せ(ラブ・ホールド)》」

 追い詰められたメディウムを救ったのはアッサンブラージュ。

 彼女が生み出した黒球は鎗を吸い寄せ、軌道を強引に修正した。

「ナイス! アージュ先ぱ――」

「あ。こっちに来ちゃいそうですぅ。解除しまぁす」

「やめろぉぉぅぅぃっ!?」

 ――もっとも、中途半端なタイミングでアッサンブラージュが能力を解除したせいで、危うく脳天を貫かれそうになったメディウムだったが。

 脳天強打を恐れないブリッジで回避するメディウム。

 彼女は頭に走る痛みで涙目になりながらアッサンブラージュに抗議する。

「アージュ先輩、保身早すぎっ! 後輩の命と自分の命どっちが大事なんすかぁ!?」

「うるさいですよぉ。死ねば静かになりますぅ?」

「物騒だなぁ!?」

 とはいえ、やられっぱなしではいられない。

 メディウムは倫世と対峙する。

「このまま舐められっぱなしじゃ終れねぇよな!」

「……別に舐めていないけれど」

「舐められてるんだよ! 先輩に!」

「それ……私は関係ないと思うんだけど」

 そう言いつつも、倫世も剣を構える。

 アッサンブラージュの能力のせいで飛び道具は無意味と判断したのだろう。

 だが、白兵戦ならメディウムの得意分野だ。

「破ァッ!」

 メディウムは二本の青龍刀を取り出し、構えた。

 両刀。そして、片足を上げた構え。

 そこから繰り出されるのは――

「せぁッ!」

 猛烈な――蹴り。

 鋭い一撃が空気砲のように倫世へと叩きつけられる。

 ――だが倫世は動じない。

 左手の籠手で軽く防いで見せた。

 しかし――

「らぁッ!」

 独楽のような円舞と共に繰り出される斬撃。

 二本の青龍刀が竜巻となり倫世を襲う。

「アタシはシズル先輩みたいに巧くないし、アージュ先輩みたいに馬鹿力じゃないし、キリエお嬢みたいに速くもないけどッ!」

「!」

 

「アタシは、全部持ってる!」


 青龍刀の独特な形をした峰を巧みに使い、メディウムは倫世の剣を――引っ掛けた。

 そのまま回転の勢いで倫世の手から剣を弾き飛ばす。

 攻勢に転じるメディウム。

 そのスピードは、倫世に武器を再顕現させる余裕を与えない。

 放たれたのは――ハイキック。

 豪快な蹴りが《自動魔障壁》ごと倫世の顔面に突き刺さる。

 メディウムは特化した力はない。

 だが、すべての能力が二番手クラス。

 総合力ならば彼女もまた強者だ。


「危ないわね」


 それでも、最強には届かない。

 ヒットの直前に反応したのだろう。

 倫世の右手が、メディウムの足を捕えていた。

 しかし――

「危ねぇのはこれからだっての」


「《永遠(ネバー・セ)の絆(イ・ネバー)》」


「……!」

 メディウムの能力が発動した直後、倫世は異変に気がついたのかわずかに驚いた表情を見せた。

「――離れない?」

「アタシの能力は()()()()。今、アタシの足と、アンタの手はくっついちまってる」


「アージュ先輩ほど重くねぇけど、動きを止めるには充分だろ」


 こうして、メディウムは倫世をこの場に縫い止めた。

「《想い寄せ》」

 そして、再びアッサンブラージュが飛び道具を使えない空間を生み出す。

 彼女はメディウムの意図を察しているのだ――


「ここでメディウムさんが死ねば、どっちが重いかなんて分からないですよねぇ?」


 ――伝わっている……はずだ。


「――――終わりです」


 シズルの声が聞こえた。

 彼女がいるのは――倫世の背後。

 それに倫世が反応しようとするが――

「そっち向くんじゃねぇよ……!」

 メディウムが足を引くことで、倫世を振り向かせない。

 彼女の足は、倫世の右手とつながっている。

 そうなれば倫世は迎撃の構えさえ取れない。

「《貴族の血統(ノーブルアリア)》」

 シズルを狙って放たれる刀剣の嵐。

 刃の一斉射撃は――()()()()()()()()()()()

 アッサンブラージュの能力により、進行方向とは逆へと引き寄せられ――失速したのだ。

 逆に、シズルは吸引力を追い風にして加速する。

 

 そうして倫世は無防備な体勢のままシズルを迎え撃つこととなる。

 

 突き立てられるナイフ。

 《自動魔障壁》が発動するが、今回は勢いが乗っていたこともありシールドは砕けた。

 そのまま――


 ――切っ先が倫世の首を突く。

メディウム「アタシは、全部持ってる!」

アージュ「でもぉ、おっぱいと知能は持ってないですぅ」

メディウム「……まぁ~あ? アージュ先輩みたいな体重も持ってないっすけどぉ?」

アージュ「…………今すぐ、命も持っていないようにしてあげたいですぅ」



リリス「ところでさ――なんで666枚なワケ?」

倫世「え?」

リリス「700枚作れなかったワケ?」

倫世「つ、作れるけど……」

リリス「じゃあ何で作らないか気になるんだケド」

倫世「ま、魔力の節約……です」

リリス「34枚って誤差だと思うケド」

倫世「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」



 それでは次回は『剣閃の姫騎士』となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ