/ reminiscene : 2
引きを作る都合上小分けになってしまいました。読みづらくなってしまいすみません。
何の為かはわからない。
ただ、そこで沢山の人が亡くなった。
彼女も。
頭がその事実を認めると同時に、ポケットの中の婚約指輪を握り締めた。
そして、迷わず復讐を誓ったのだった。
奴を造ったのは、「林」という名の科学者だった。アンドロイド研究の界隈ではそこそこ名の知れている人物らしい。
事件時、警官の発砲によりエラーを起こしたその殺人マシーンは林からの帰還コマンドを受け付けず、夜の街に消えた。
後日、捜査が入ったときには既に、林の家はもぬけの殻だった。
だが、ようやく見つけた。俺が単独で。
原動力は執念。林への憎しみ。
辛い6年間だった。彼女の死それ自体というより、過去に囚われて復讐の準備を進めるということが辛かった。
これは本当に俺が望んでいることなのか?と何度も葛藤した。もしかしたら、誰かの強い望みを、知らず知らずのうちに自分の望みと誤認して、代行して叶えようとしているのではないか?
親の意向で店を継ぐ子、仲間の遺志を継いで仇を討つ主人公。皆が皆、自分の望みのもと目標を目指していると、どうして言えようか。
では、俺にそうさせるのは誰か?俺と同じくあの場にいた、被害者遺族?彼女?
誰かの意思を代行して人を殺す、ということ。殺すもの自身には、相手を殺す理由も責任をとる覚悟もない、ということ。
それでは、あの殺人マシーンと同じではないか。
だが、そんな俺の苦悩に答えをくれたのも、彼女の言葉だった。記憶の片隅に残る、彼女の言葉。
「わたしはこれまで出会ってきた色んな人達の言葉でできてるよ。わたし固有の要素なんてひとつもない。
きっとあなたもそう。あなたは、素敵な人達と沢山出会ってきたんだね。
でも、あなたの意志は他の誰のものでもない。あなただけのもの。」
身内の死を嘆く色んな人達の言葉が今の俺を作った。そんな俺の意志は俺だけのもの。
俺は林への殺意を肯定した。
自分の意思で、彼を殺す。
躊躇うな。
こうすると決めたのは、お前だ。