『最終話』
「――――テール!?」
ぶち破るように開けた扉から、玄関に転がり込む。
そこに君の靴がそろえられているのを見止めると、僕はせき込みそうになりながらも、猛然と床を駆けた。
リビングの横、開けっぱなしの寝室の扉から、ほのかに明かりが漏れている。
「テール!! ――――うわっ!」
駆け込むと、なぜか布団が敷かれていたらしく、勢い余ってつまずいてしまう。
枕の両サイドに手を突いて、すんでのところで激突をまぬがれたそこに、ツインテールの君がいた。
泣きはらした真っ赤な瞳で、僕の布団から顔を出している。
何度も、何度もつっかえて、むせ返りそうになりながらも、僕は、〝自分に〟言い聞かせるように叫んだ。
「――――テール、俺、……君が好きだ。……だから、だから、どこにもいかないでくれ」
瞳から垂れたなにかが、テールのほほを濡らす。
「俺、俺さ、ちゃんと、働くから。仕事探して、就職するから。だから、だからその時は、……僕と、――――結婚してくれないか」
ほほを濡らしたなにかが、テールの、真っ赤な瞳からあふれたそれと重なって、音もなく流れていく。
君は、うなずくでもなく、首をふるでもなく、いじけたようにそっぽをむいて、消え入りそうな、か細い声で言う。
「――――今じゃなきゃ……」
「え?」
次の瞬間君は、僕を正面から見つめ返すと、口をいっぱいに開けて叫んだ。
「――――今じゃなきゃ、やだっ!!」
今度こそ、はっきりと届いた。冷え切った汗だくの手が、しびれたようにぴりぴりと震える。
両の拳を握りしめ、僕は、その震えを抑え込むように、ゆっくりと口を開く。
「…………わかった」
そのまま、どちらからともなく僕らは、そっと、唇を重ねた。




