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『第三十一話』
「ね、あのさ……」
「何?」
味噌ラーメンを吐息で冷ましながら、私は平静を装って尋ねる。
「おかめは、その、もし、彼氏、か何かできたときとかに、どうやって話す?」
ちょっぴりしどろもどろになってしまったものの、おかめは気に留めていないようだ。心の中でホッと一息。
「どうやってって?」
「え? それは、ほら……」
聞き返されて、返答につまる。
「け、敬語か、タメ口か、とか」
「敬語がいるような相手とはそもそも付き合わない」
「……いや、それは、まぁ、そうなんだけどさ」
はっきり切り出せない自分がもどかしかった。
かといって、思い切って打ち明けて、バッサリ一刀両断されるのが怖い。
だって多分、悪いのは私なんだ。
分かろうとしない、私の。
数秒間の沈黙の後、トントン心地良く響いていた包丁の音が、前触れもなく止まった。
「……前から気になってたんだけど、あんたたち、なんで付き合ってるの?」
「え?」
答えられて当たり前のはずの問いに、私の頭は、真っ白になった。




