『第二十六話』
合流してからは、すべてがあっという間だった。ビーチボールで遊んだり、子供みたいに鬼ごっこをしてはしゃいだり、流れるプールを逆向きに泳いで競争したり。
……大体は須藤さんの想いつきだった。
四時ごろにはもう須藤さん以外へとへとで、休憩所でアイスクリームを食べ終えると、このまま帰ろうという話になった。
今は脱衣所で、長谷川と一緒に仲良く並んで着替えている。ぽつぽつ会話をしている間、長谷川はずっとじれったそうにしていた。そうして、ついに会話を打ち切る形で強引に切り出してきた。
「……なぁ、うちで働かないか?」
周囲には僕ら以外誰もいない。不穏な空気のセンサーでもあるのか、扇風機フル稼働の脱衣所が、今さらのように冷たくなる。
「なんでまた?」
とぼけた調子で返事をし、僕は着替える手を速めた。と言っても、髪や体についた汗や水滴は、そうそうすぐにはかわかない。
長谷川は、いらだった様子で髪にぐしゃぐしゃつめを立てて、ため息交じりに言う。
「……わかってるんだろ? このままじゃ、ダメだって。一生バイトで食いつなぐ気か?」
「それもいいかもね」
ひとごとみたいにつぶやいた僕に、長谷川はしびれを切らしたようにつかみかかってきた。
「なんとかなるって、思ってるんだろ? けど、そんなわけない。いつか必ず、どうにもならない時が来る! そうなったら――――」
遮るように、僕は長谷川の目を正面から射止める。
「――――同じこと、あの人にも言える?」
ハッと息をのんだのが、手に取るようにわかった。
「個人経営の服屋なんて、たいして儲からないんでしょ?」
自分でも、嫌味な言い方だと思った。だけど、このくらいで引き下がるような長谷川じゃない。
「そんなことはわかってる! けど、あの人は、それでもいつも笑ってる。あれは、見せかけなんかじゃないっ」
「そうだよ。だってそれが、あの人の夢だったから。何よりの、幸せだから」
肩すかしでもくらったみたいに目を見開く長谷川。歯ぎしりの音が、ここまで聞こえてきそうだ。
「……須藤さんは福屋、お前は超優良大企業、そして僕は、テールとの日々。いいじゃないか、みんな幸せで」
はにかんで笑う僕に、長谷川はどこか気の抜けた様子でロッカーにもたれかかり答える。
「……実は、須藤さんにも話したんだ。そしたら、今のお前とまったく同じようなことを言われたよ」
「だろうね」
『そのときは、そのときなんじゃない?』なんて、あの人ならきっとそう言うだろう。
「俺にはわかるんだよ。あの人は、どうにもならなくなったって、きっと俺には頼らない。俺だけじゃない。お前にも、お前の彼女にも、絶対にだ」
「そうだろうね。だってあの人は、みんなが大好きだから」
「なら、ならどうするんだよ!?」
「そうだな……」
じらすように、ほんの少し、考えるような素振りをする。
「……もし僕なら、世界で一番嫌いな奴の足を引っ張るかな」
口にしたりなんてしないけど、もちろんそれは、長谷川じゃない。




