『第十九話』
電車を乗りついでいる間も、君から熱い視線を頂戴していた。揺れっぱなしのツインテール。かすかに届く鼻歌。こんなに上機嫌な君は久々だった。
そして、完全に僕がおごる流れだった。
まぁ、それは別に良い。……問題は、到着したレジャーランドの長蛇の列に、見覚えのある後ろ姿が混じっていたことだ。
短髪黒髪ストレートと、ゆるふわにまいた長めの茶髪。その組み合わせには覚えがあった。
が、手をつないで並んでいるところを見るに、人違いだろう。
どのみち二人は長蛇の列の前方付近。対する僕らはその中ほどだ。セミが鳴かないのが不思議なくらいの猛暑の中で、日影のないこのポジションは辛かった。
とはいえ、この分なら鉢合わせることもなさそうだ。
「意外と混んでるね」
コクリと小さくうなずく君。汗だくでちょっと辛そうだ。
「飲む?」
途中で買ったスポーツドリンクを差し出すと、君は途端に目を見開いて、ひったくるように受け取った。飲みかけなのもおかまいなしに、ものすごい勢いで飲んでいく。
普段なら、嫌がるか遠慮するかしそうなものだ。ひょっとしたら気づいていないのかもしれなかった。
と、突然ゴクゴクうなっていた喉が大人しくなった。ペットボトルを急な角度に傾けていた手元も、半端な位置で止まる。
君の目が、さっきとはまた違った風に見開かれた。
「テール?」
返事はない。まばたきを忘れた視線の先には、例の二人がいた。
不意に我に返ったのか、ゲホゲホ咳き込み出す君。残り少ないスポーツドリンクは、フライパンみたいに熱いコンクリートの上にこぼれてしまった。
「大丈夫?」
軽く背中をさすってあげる。
ワンピースを着込んだ背中はベタついていたけど、いい匂いがした。
ひたすら汗臭くなるだけの僕ら男子とは体の作りが違うのかもしない。
その後、しばらくして無事ゲートをくぐった後も、テールはあの二人を探していた。
……僕としては、見間違いだと願いたい。




