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華藍の幼馴染み登場です。
「華藍。一緒に遊ぼ。」
華藍よりも少し大人びた少年が彼女の名を呼ぶ。
「うん!」
華藍は周りにいた執事やメイド達から抜け出してその少年に抱きつく。
腕を少年の体に巻きつけ、頬を服になすりつける。そうすると彼からいい匂いと体温を感じることができて落ち着いたのか、体重を少し少年に傾ける。
「華藍。今日は何をしたい?」
少年は優しく華藍の頭を撫でながら今日の予定を聴く。
「えっとね…」
華藍は瞳を生き生きさせて少年と話す。
教室では音譜に話しかけらるとき意外、いつも一人で行動をしている彼女からは想像が出来ないくらいとてもはしゃいでいる。
その姿は華藍も幼い子供だと安心できる数少ないことらしく、執事達は嬉しそうな顔をして少年と華藍の元に来る。
「堺斗様。華藍様をお願いしてもよろしいですか?」
一人の執事が少年の目線に合わせ、微笑んでから聴いた。
「はい。勿論です。」
少年、神宮寺堺斗は執事の微笑みを返すように笑顔で答えた。
「堺斗お兄様。勉強で分からないことがあって…教えてもらっていもいいですか?」
華藍はまだ堺斗に抱きついたままで真上には彼の顔がある状態で上を向いて話しかける。
その時の華藍の姿は、堺斗にとても心を許していることがとても分かる画だった。
「勿論だよ!」
堺斗はそんな妹のような華藍の表情を見て嬉しくなったのか、自然と優しい笑みが零れ、自分の背中に回されていた小さな手を引いき長い階段の先にある二階に向かった。
「華藍の部屋でいいの?」
「うんっ!」
「それで、1×3は3になるのは分かったよね。じゃあ2×3は?」
堺斗がノートに書いた数式を華藍に差し出す。
「2×3は…2が三個だから…2.4.6で…6だね!」
「うん。正解!」
華藍がノートに答えを書き終わるのを待ち、丸を付けてから彼女の頭をくしゃくしゃっと優しく撫でた。
華藍は嬉しそうにふふっ。と笑う。
私立雪浜学園はとても頭の良い学校である。授業レベルも通常の2年プラスと言った形式で、一年生の頃には2、3年生の勉強をする。
小学部に入る前に幼学部があり、そこで一年生の勉強をする。なので小学部にはいるとすぐに小学二年の勉強から始めることができる。
それが、完璧学園である雪浜学園を守るためのごく一部の対策。
それから華藍と堺斗は一時間くらい勉強をする。堺斗は堺斗が勉強している間は本を読むことにした。
「終わったぁ!って堺斗お兄様。なに読んでるの?」
華藍が書き終わったペンをおいて本を読んでる堺斗に近づく。
「やまと…歌?」
堺斗が読んでいる本に目を向け、なんとか読めた字を口にする。
「これは小学6年生くらいになると習うかな?」
「え?でも堺斗お兄様まだ小学部4年生ですよね?」
あれ??と華藍は頭にはてなマークを作りながら考えだそうとする。
「こう言う先の勉強をすることを予習って言うんだよ。」
「よしゅう?」
うん。と堺斗は頷いてから補足する。
「華藍ももう少ししたらこう言うことをすることになるかな。」
「そうなんだぁー!」
華藍は堺斗が読んでいた本を堺斗と同じようにみる。
そこには見たことのない感じや文字があって華藍には外国語に思えてきた。
「堺斗お兄様…頭いいね。」
そんな外国語みたいな難しい文字を読める堺斗をすごいと思った華藍は自然と口から尊敬の言葉が出た。
そうかな。ありがとう。堺斗は笑顔を浮かべて華藍の頭を撫でた。
「でもこう言う字は読み慣れてるんだ。家に置いてあって結構読んでるからね。」
「堺斗お兄様の家は外国関係でしたっけ…?」
「外国?違うよ。これは昔の日本語。」
堺斗は少し笑ってから優しい笑みを浮かべて説明する。
神宮寺堺斗と言う少年は、華藍より三つ歳上のわりには一回りもそれ以上知っていることが多かった。
それは自ら進んで学んだことなのか、それとも教育としてなのか。それは堺斗自身にしか分からないことである。
それでも堺斗がここまで勉強から逃げずにいられていたのは、親同士が仲が良く、とても小さい頃から遊んでいた華藍の笑顔を見ることが支えになっていたからかもしれない。
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