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幼い頃彼女が見た夢がまさか現実になるなんて  作者: 久川梓紗
過去編〜白鳥華藍〜
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2015年



「白鳥さんっ!」

 華藍がまだ小学一年の頃、私立雪浜学園の理事長の孫娘、雪浜音譜(ゆきはまおんぷ)は彼女によく話しかけてきた。


 満面な明るい笑みを華藍に向け、ふんわりと柔らかそうな白い髪が宙を泳ぐ。

「雪浜さん。」

 控えめな声で音譜の名前を読んだのが華藍だ。華藍はもともと一人で読書をするのが習慣になっていて、あまり人と話して騒いだりする方ではなく、物静かに一人で行動する方だった。そんな彼女に明るい声で話しかけてきたのが音譜だった。


 音譜は、もともとクラスの中心的な存在であった。音譜がいる所には必ず生徒の誰かがいて、華藍は自分とは正反対の人。と音譜を認識していた。音譜に初めて話しかけられた時は驚き、自分がこんな相手と話していいのか迷っていると、彼女が「友達になろ!」と自分と同じくらいの手に伸ばしてきて笑顔を向けてきたから、華藍は安心して彼女の手を取り、頷く事ができた。


「今度私の家でパーティーがあるんだけど、白鳥さん来ない?」

 華藍の机に手をのけて上目使いで彼女の姿を見る音譜はどこか、子犬を連想させる。

「いいの?」

 華藍の控えめな声の中に嬉しさが混じっている。その声を聞いて音譜は嬉しそうにその場を勢い良く立ち上がって頷いた。

「もちろん!」



 華藍が音譜の家に行くのは初めてではなかった。先月、彼女の誕生日パーティーがありその時も招待をもらった。

 音譜の家は雪浜学園を建てた家だとすぐ分かりそうなほど雰囲気や形、作り方が何処か似ている。敷地は学校より開くはないが家族だけで住むとなるととても広すぎる。100人は楽に泊まれるのではないかと、その時の幼い華藍は思っていた。


「あっ、白鳥さん!きてくれたんだ!ありがとう」

 ピンクのドレスに白いシルクのフリフリレースを付けた音譜がやってくる。

「おはようございます。雪浜さん。」

 華藍が水色の可愛らしくもありながらシンプルなドレスの両端を手で持ち、綺麗にお辞儀をする。

「そんなに硬くならないで!今回のパーティーは私がやりたくてやってもらっただけだから。」


 音譜が華藍の腕を引っ張り自分の家へ招く。

 お金に困らない環境で育った音譜を始め、だいたいの雪浜学園に通う生徒は、パーティーは自分の遊戯の一つだと思っている。

 家柄が関係している硬いパーティーか、自分が考えてやる楽しいパーティー。その二種類がお金持ちには存在をしている。

 今回、華藍が誘われたのは後者の方だ。


「白鳥様。おはようございます。」

「おはようございます。」

 雪浜家の豪邸の中に華藍が入ると、雪浜家の執事だと思える黒いスーツを着た男の人が礼儀正しく華藍に頭を下げた。それにつられて華藍も頭を下げる。


「音譜様。お怪我のないようお願いします。」

「もう、わかってる!」

 雪浜家の執事だと思える男性はまだ二十歳前半だと思える男性で、とても顔の形が整っている。音譜はそんな執事の顔を見て、少し頬を赤く染めてから言葉を言い放い、華藍を引っ張り目的地へと急いだ。


「白鳥さん。おはようございます。」

 綺麗な着物と美しい黒髪がとても似合っている少女は華藍に向けお辞儀をする。

「おはようございます。」

 少女に向け、華藍も音譜にやったようにお辞儀をする。


 華藍が音譜に連れられて入った部屋は初めて入った場所で、辺りを少し見渡してしまう。

 天井には綺麗なシャンデリア。壁紙にはピンクと白の水玉が交互に描かれており、床は手触りの良さそうなカーペットが敷かれている。

 カーペットの気持ちよさは雪浜家のスリッパの上からでも確認する事ができた。


 それから四時間ほど、パーティーと言う名のお茶会がが始まった。華藍が来たあとにも五、六人くらいの同級生がやってきて楽しく話をしていた。

 華藍は基本聴き側で、みんなの話を相槌を打ちながら、楽しそうに話を聴いていた。

 時間が経つのはあっという間で五時になり、帰る時刻となる。


「じゃあ私達はこの辺で。」

「じゃあね!」

「さようなら。」

 明るい声が音譜の部屋に残り、華藍達は雪浜家をあとにした。

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