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小雨が連れてきた出逢い

作者: 深瀬 空乃

「・・・・・今日は雨か」


日曜の朝8時。私は目を覚ました。日課として、ベットの隣にあるカーテンを開ける。


さんさんと、あたたかな太陽の光が部屋に入ってくることもある。しかし、今日は違った。


窓の外を見ると雨。それだけで気分が憂鬱になる、という人がいるが、私はそうではない。


天気は日替わりで、違う顔を見せてくれる。私はそれが好きだ。


会社がある日は早起きして、できるだけ散歩に出る。そしてその日の天気を満喫する。休日も同じく、だ。


しかし昨日、天気予報の警告を無視して出かけた私は、大嵐に巻き込まれひどい目にあった。


服はびしょぬれ、お気に入りのスニーカーは一晩乾かしてもまだ生乾きだ。靴の替えはあるから問題ないけれど。


___今日は散歩に出られるか。昨日の今日だから、少しは警戒心が強くなっている。


しかし窓の外を見る限り、今日は小雨だ。外に出ても大丈夫だろう。


隣のタンスの上に置いてあるラジオをつけて、ベットから降りる。


着替えながらラジオに耳を澄ませ、一応、参考までに(たいてい参考にしないが)天気予報の流れる時間を待つ。


そして時間になり、ラジオから流れてきた天気予報が私に、「外に出るなよ」と釘を刺した。


さて。そんな警告を聞く私ではないことを、毎日私の行動を見ているラジオは悟っているだろう。


もちろん参考までに聞いただけのラジオ。ありがとうとスイッチを切った。


濡れてもいい恰好をして、カギと財布と携帯(防水)だけを持つ。私の相棒の傘を持って、アパートの玄関を出た。




今日のゲストは小雨だ。小雨を主役として、私は今日の天気を精一杯盛り上げてあげよう。






***





家から10分ほど、近くの公園につく。天気予報と曜日のせいもあり、いつもより人が少ない。


というよりは、いない。


いつもの日曜なら、子供の声で満たされるはずの公園は、少し寂しそうに見えた。


昼間なのににぎわっていない公園は、構ってほしいというオーラが目に見えるよう。


うん、誰もいないのなら、私が遊ぼう。


人がいないのをいいことに、傘を持ったままジャングルジムのてっぺんを目指す。ズボンなので心置きなく登れた。


そしてさらに、濡れてもいい恰好をしているのをいいことにそこに座った。


誰もいない公園を見渡したのは久しぶりだ。ジャングルジムに上ったのも。


ニコニコしながらジャングルジムの上で景色を堪能していると、下から声がした。




「おはようございます」




「・・・・・?」


下から声がしたのだが、まさか私に話しかけたわけじゃあるまいと思って返事をしなかった。


大方通りかかった人が、知り合いに声をかけただけだろう。


当たり前だ。昨日の今日の雨の日に、大の大人がジャングルジムのてっぺんに座っている(しかも女)。誰も話しかけてくるわけがない・・・とか考えているのは。


ジャングルジム下方向からかちゃかちゃと金属音がする。・・・近づいているような?上ってきているのだろうか?


ん?と首をかしげると、どうしたんですか?と声をかけられた。


すっかり自分の世界を楽しんでいた私は、声をかけられた違和感を感じ取らず返事をしようとする。


あ、あのねー・・・、と言いかけて、驚いて隣を見た。驚きで足を滑らせて落ちなくて助かった。


・・・・いつの間にやら、隣に人がいる。いつから?


私はずっと前を向いて自分の世界に浸っていたから、そんなことはわからない。ひとつわかるなら、この人は私と同じような物好きであること。


「おはようございます」


「・・・おはようございます?」


私の頭は冷静な分析をしている。しているけれどもそれを行動にはうつせていない。疑問形になった挨拶にも嫌な顔一つせず、にこっと笑った彼。どこかで見覚えがある気がする。


数秒の間があり、頭が答えを導き出す。ああそうだ、私が散歩しているときによく見かける男だ。会釈すらしたことないけれど、よく見かけるから顔だけは覚えていた。


・・・なんで私に話しかけてきたのだろう。雨の中、わざわざジャングルジムに上るような女に。物好きだとしてもよくわからない行為だ。


そんな私の疑問。その答えが出るのは、もう少し先のお話。







大嵐の後の、小雨が連れてきた出会い。今日のゲストは小雨と、運命の人。

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