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41、初日の出

 

「月乃様、お正月はご実家に帰省されるんですか?」

 抹茶のケーキの表面が枯山水を意識した模様になっていると気づいて感心している月乃の耳に、桜ちゃんの軽やかな声が届いた。

「帰りますわ。でも二日間だけ」

「ふ、二日間だけですか?」

 ここは和風のメニューがやたら多いちょっと変わったカフェだが、紅茶もなかなか美味しいし、ロワールハウスからも近いので月乃はよく利用している。

「ええ。二日間で戻って来ますの」

「それで、寂しくないんですか? ご家族に会えるチャンスは滅多にないのに」

 月乃はストレートのダージリンのティーカップを口元に運びながら、ここぞとばかりにカッコイイお嬢様の眼差しを桜ちゃんに向けて答えた。

「あら、学園にいる生徒たちも、わたくしの大事な家族ですのよ」

「わぁー・・・! さすがです、月乃様!」

 学園を代表するロワール生徒会の一員としてこれ以上ないベストな回答に、桜ちゃんは素直に感動している様子である。月乃は自分の美しいティータイムに惚れ惚れした。

 大晦日のベルフォール女学院には意外にも生徒が多く残っており、今年の自分と別れ新たな自分に出会う瞬間をそれぞれの最高の過ごし方で迎える準備に心を踊らせている。

「ロワール会のお三方はやっぱり、大聖堂にお祈りですか」

 桜ちゃんはこの真冬にアイスレモンティーを飲みながら小倉あんのアイスを食べている。

「お祈り? そ、そうですのよ。年が明けたらすぐにベルフォールの神様にお祈りをしますわ」

 ロワール会メンバーに限らず、この学園の生徒たちには正月三が日に初詣感覚で大聖堂広場へ足を運ぶ慣習があるらしく、これ以上神様を怒らせたくない月乃ももちろんお祈りに行こうと考えている。

「それでしたら、いっそ元日に日付が変わる瞬間に大聖堂へ行きませんかっ!」

「え、日付が変わる瞬間ですの?」

 桜様もなかなか面白いことを考えますわねと月乃は思った。月乃は定期試験で四回連続学年順位2位を獲得するほど2という数字に愛されてしまっている女だが、人一倍1位に固執している完璧主義者でもあるので、全校生徒の中で一番最初に大聖堂でお祈りをするという計画に心が踊っちゃったわけである。月乃は教室に一番乗りした時にする深呼吸の気持ち良さを誰よりも深く知っている。

「しょうがないですわね、桜様がそこまでおっしゃるならわたくしも・・・」

 と言いかけたが、月乃は昨夜の会議のことを思い出した。西園寺会長が話してくれた年始の予定に、大聖堂でのお祈りが入っていた気がしたのだ。三日のお昼くらいにロワール会の三人で揃って大聖堂に行くことになっているのに、自分だけが年越し大聖堂を楽しむわけにはいかない。

「やっぱりダメですわ・・・西園寺様たちと行くことになっていますのよ」

「心配いらないわ」

「ひい!」

 背後から思いもかけない人の声がしたので月乃はケーキのお皿をひっくり返してしまいそうになった。月乃ほど驚きのリアクションが大きい生徒も珍しい。

「さ、西園寺様・・・!」

「驚かせてごめんなさい。窓にお二人の姿が見えたから立ち寄ったのよ」

 この学園で最も尊敬されている無表情のクイーン、西園寺美冬様の登場である。彼女ほどオーラがある女性は他にいないのだが、自分のお嬢様っぷりを上げるにはどうすればいいか考えている時の月乃は異常な集中力を発揮しているので背後の会長に気づかなかったのである。

「お昼頃にゆっくり大聖堂へ行こうと思っていたけれど、桜さんのアイディアも面白いわね」

 褒められた桜ちゃんは顔赤くしてアイスティーをちゅうっと飲んだ。なんだか今日の桜様はいつも以上にかわいいですわねと月乃は思った。

「林檎さんも誘って皆で行きましょう。もし林檎さんの都合が悪かったら私と彼女は予定通り年が開けてからゆっくりお祈りに行くわ。週末までは冬休みだもの」

「分かりましたわ」



「都合が悪いです」

 ロワールハウスの大浴場の湯船を小さなスポンジで丁寧に磨きながら、林檎さんは答えた。

「林檎様が行くなら西園寺様も一緒に来て下さいますのよ?」

 月乃も洗剤をシュッシュと吹きつけて林檎さんのお風呂掃除当番を手伝っている。

「・・・西園寺会長には申し訳ありませんが、大衆がこぞって参加する年中行事に興味がありませんし、ましてや一番乗りなどどうでもいいことです」

 林檎さんはハッキリものを言う。

「大衆がどうこうじゃありませんわ。大聖堂の神様に祈りを捧げる、我々ロワール会メンバーにピッタリの神聖な儀式ですのよ」

「確かにそうかも知れませんが・・・実は私は明日の朝が早いのです」

「朝?」

「私も月乃様同様、元日に帰省するのですが、私の地元は遠いので早朝に出発しなければならないのです」

「地元はどちらですの?」

「モスクワです」

「え!?」

「冗談です」

 ご自慢の帽子に洗剤を吹きかけて差し上げようかしらと月乃は思ったが、仕返しが怖いのでやめた。

「とにかく私は夜更かしが出来ませんので、パスさせて頂きます」

「つれない人ですわねぇ・・・」

「群れるのは嫌いです」

 以上のような経緯で、月乃は西園寺様や林檎さんとは別行動で、夜中に大聖堂に行くことになったのである。


 三人で食べた今年最後の夕ご飯はいつもよりちょっぴり美味しくて、それぞれにこの学園とロワール会の将来について語り合う素敵な時間となったが、三人は戒律を徹底して守るため全員終始無表情である。

 柱時計の針が23時を回る頃、林檎さんは早々に眠ってしまい、西園寺会長も自室で読書をすると言って三階に上がってしまった。大晦日なのに皆さんあっさりしているが、夕方にこっそり一時間程寝ている月乃と違って眠いのである。

「さて・・・」

 部屋着から制服にチェンジした月乃は、一階廊下の突き当たりにある姿見の前で胸の黒いリボンを何度もいじって整え、お嬢様精神を統一した。一階の廊下は床暖房が効いているので結構快適である。

 特に待ち合わせの約束はしていないが、おそらく桜ちゃんも一緒に行くはずなので、彼女の住むマドレーヌハウスへ迎えに行ったほうがいいのかしらなどと月乃が考えていると、玄関ほうに人の気配を感じた。月乃は黒いコートを羽織って鏡に向かってお嬢様ポーズをキメてから、林檎さんたちを起こさないように静かに玄関に向かった。

「あら」

「あ! 月乃様!」

 桜ちゃんだった。自分の顔を見ると嬉しそうに駆け寄ってきてくれる友人のいる生活はなかなか幸せである。

「西園寺様たちはどうですか?」

 今夜の桜ちゃんは三つ編みにしていないし、ほんのりシャンプーの香りもするので、月乃と同様お風呂上がりと思われる。お互い風邪を引かないように注意したいところである。

「お二人は年が明けて、落ち着いた頃に行くらしいですわ」

「え・・・そうですかぁ。残念ですけど、仕方ないですね」

 林檎さんが寝ている可能性を考慮して玄関の呼び出しベルを鳴らさなかった桜ちゃんは偉い。



 年越しまで残り三十分、大聖堂広場は実は凄いことになっていた。

「あら」

 広場には生徒が大勢集まっていて、まさに初詣のために街人がこぞって待機する大晦日の神社と同じ光景だったが、彼女たちは月乃の存在に気づいて一気に道を開けた。月乃はモーセの気分である。

 月乃は西園寺様から大聖堂入り口の鍵を預かって来たのだが、ここに集まった少女たちは聖堂が閉まっていて入れないことを承知でお祈りしに来ているのだからちょっと可哀想である。でもロワール会の細川月乃様が来たことで状況は変わったのだ。

「皆さん大丈夫ですわよ、わたくしが来ましたから。大聖堂を開けて差し上げますわ」

 月乃の言葉のしっぽは生徒たちの大歓声に飲まれた。寒空の下で迎える新年も乙なものだが、やっぱり皆大聖堂の中でお祈りしたいのである。

 月乃は少女たちの間を背筋を伸ばして歩いて大聖堂の北入り口に向かった。預かっている鍵は簡単に複製出来ちゃいそうなシンプルな形状だが質感はやたら重厚で、よく磨かれた銀ピカなキーだったから、月乃は恐れ多くて黒い手袋越しにしか触れない。

(今のわたくし、ロワール会の代表ですわ!)

 ダリアの花に似た緻密な細工が星座のように美しく並べられた銀色の扉に慎重に鍵を挿しながら、月乃は心が震える思いだった。自分の手で、指先で、この学園の歴史が動いているのだから、お嬢様月乃が興奮しないわけがない。

 木製のまな板の上に大きいビー玉を落とした時みたいな意外とキレのある音を立てて鍵は開いた。扉は異常に重いので、開けるのは桜ちゃんや周囲の生徒たちと共同作業である。

「さあ、どうぞ」

 月乃はそう言いながらさりげなく自分が一番最初に大聖堂に足を踏み入れた。ちょっと順番抜かしをしちゃったが、やっぱり一番乗りは最高の気分である。

 入り口のすぐ脇の主電源スイッチを入れるとブウーンという音を立てて聖堂の内部の電気が一斉に灯った。イベントの時に用いられる本物のろうそくのほうが気分は出るが、高い天井に点々と輝くエレクトリカルスターも素敵である。

(さて、年が変わる前からお祈りをしましょうかしら)

 今からずっと祈り続けていれば日付が変わった瞬間にお祈り一番乗り間違いなしというのが才女月乃の考えである。月乃はさっそく長椅子の間を抜けて祭壇に向かうことにした。

 が、月乃はここで大聖堂の雰囲気の異変に気がついてしまった。とてつもない恋のストームが音もなく月乃に迫っていたのである。

「あら♪ 月乃様と桜様じゃありませんの♪」

「ひ!」

 距離感を弁えない耳元でのご挨拶に月乃はビックリしてしまった。現れたのはフランス出身の日本語ペラペラ少女リリーさんだが、セーヌ会の彼女がひょっこり顔を出したということは、例のあの人が一緒でも不思議でない。月乃は自分の鼓動が聞こえるくらいドキドキしながらそっと振り返って辺りを見回した。

「うっ・・・」

 やっぱりあの人がいた。姉小路日奈様は入り口付近の装飾柱のそばからそっと月乃のほうをうかがっていたのだ。

(ひ、日奈様が・・・わたくしをすっごい見てきますわ・・・!)

 完全に目が合ってしまった月乃は日奈様の美しい眼差しに魂を射抜かれて身動きがとれなくなってしまったから、日奈様が恥ずかしそうにちょこんとおじぎをしてきても、鳥獣戯画のカエルみたいな間抜けな顔のまま突っ立っていた。周りには大勢生徒がいるのだからもう少しお嬢様らしい凛とした表情をして欲しいものである。

「まさか月乃様が来て下さるなんて、嬉しいですわぁ♪ ね、桜ちゃん」

「ううっ! そ、そうですね。あ・・・ちょっと・・・やめてくださいっ」

 桜ちゃんがリリーさんにかなりキツめに抱きつかれているが、月乃は今カエルの石像になっているので助けることはできない。


 月乃と見つめ合う日奈のほうも緊張のせいでどうしていいか分からず、柱の陰でもじもじしていた。実は日奈は今夜このような混雑する場所に来るつもりはなかったのだが、どうしても月乃様に会って話したいことがあったのである。

(月乃様と・・・お話しなきゃ・・・)

 日奈は太陽系一の美貌を持って生まれてしまったせいでかなり独特な殻に自分の心を閉じ込めており、何をするにも他人の比にならぬ膨大な勇気を要するから、彼女がこの時踏み出した一歩は使命感以外の何かステキな感情に後押しされたものだったのかも知れない。


 日奈様が恥ずかしそうに前髪を軽く触って整えながらこっちに近づいてくるから、月乃は思わず後ずさりしてしまった。

(き、来ますわ! 日奈様が・・・!)

 おばけじゃないのだから怯えないで頂きたい。

 ロワール会とセーヌ会の次期トップと噂されるお嬢様二人が大晦日の夜に大聖堂にて対峙する形になったから、集まっていた生徒たちも興奮している。

「あの・・・」

 月乃は「ひい! な、なんですの!?」と叫びたい気持ちをお嬢様根性でグッと抑えた。

「あら、セーヌ会の姉小路様がわたくしに一体なんのご用ですの?」

 辺りがオオオとどよめいた。既に日奈様の登場によって数十人の生徒が恋のドキドキでぶっ倒れているくらいなのに、彼女の美の魔力に一切動じず、冷静に対応する月乃様がかっこよく見えたのだ。月乃の本心や気苦労なんて誰も知らない。

「じ、実は・・・その・・・」

 日奈が月乃に話したいこと、それは先日のイルミネーションの一件に関することである。二人は一緒にイルミネーションを見定めに行ったが、月乃は別に全てのイルミネーションを不許可としても良かったのに、日奈が気に入って見とれたメーカーのものだけ許可してくれたのだ。お陰でクリスマスの学園はとっても華やかで美しく、日奈も北山教会堂の小さな窓からいつまでも夜景に見とれたのだが、日奈は月乃様の身の上がちょっぴり気になっていたのだ。あんなに派手なものの設置を許した月乃様がロワール会のお仲間、特にいつも冷たい表情で帽子を深く被っている林檎さんにキツく叱られていないか、失望されていないかと日奈は案じているのだ。日奈は月乃とはまた違った意味で細かいことが気になる少女だが、それが全て彼女の優しさと思いやりに直結しているタイプである。

「その・・・」

「な、なんですの? わたくし、お嬢様ですから、お祈りをしにここへ・・・」

 前髪を触っていた日奈はそっと白い手を下ろし、上目遣いで月乃を見ながら言ったのだった。

「・・・二人だけで、お話がしたいな、と・・・」

 ああ、わたくしは本当にこの人のことが好きなんですわ・・・月乃はこの時そう思った。もう月乃の日常の表と裏の全てに日奈様が織り込まれており、その文様が月乃の青春そのものなのである。

 月乃のお嬢様人生に新たな負の次元をプレゼントしてくれちゃう厄介な鐘の音は、ここでめでたく月乃の耳元に迫ってきた。毎度のことながらどうしても避けられない恋の嵐に月乃はくやしくてくやしくて仕方が無かったが、さっさと身を隠さなければ自分の社会的地位が危うい。

「わたわたっ・・・」

「え?」

「わたくし、ちょっと今年に忘れ物をしましたの。来年に行く前に取りに行ってきますわ!」

 意味不明なことを言って駆け出した月乃は、靴音を響かせながら西入り口に向かった。

(ま、まずいですわ! どこで変身しましょう!)

 月乃は小学生になってしまうと数分から数時間、目を覚ませないので、大聖堂の外に飛び出して白樺の木の陰かなにかで変身したら確実に風邪を引いてしまう。聖堂の中で、なおかつ人に見つからない場所はないものか。

(そうですわ!)

 大聖堂の西口の扉の脇には、鍵が掛かっていて月乃が一度も入った事が無い謎のドアがある。もしかしたら西園寺様から預かっている鍵であのドアも開くかもしれない。

(もー! どうしてわたくしばっかりこんな目に遭いますの!)

 戒律を破ってしまっているのだから仕方がないが、当然の感想である。

 ドアの前についた月乃はさっそく鍵を使ってみたが、鐘の音と不思議な甘酸っぱい香りに追いつかれる直前に無事にドアの向こう側に倒れ込むことに成功した。大聖堂の鍵はあちこちの錠前と共通だったらしい。

(日奈様と・・・ちゃんとおしゃべりしたかったですわ)

 暗くて冷たくホコリっぽい石の床の上で意識が遠退いていく月乃は、最後にやっぱり日奈様のことを考えていたのだった。


 まぶたを透ける日の光に体じゅうが優しく包まれて、その清らかな温もりが胸いっぱいに満ちていく幸福感に月乃が目を覚ましたのは、ちょうど初日の出の瞬間だった。

「あ・・・。小桃ちゃん、おはよう」

 月乃の耳を撫でる柔らかなささやきは、彼女の夢と現実の境界を曖昧にした。小学生モードになってしまった月乃が、輝くステンドグラスの幻想世界の中で、日奈様に優しく横抱きされている状況を自覚したのは、しばらく日奈様の美しい顔をぼんやり見つめてからのことである。

 ちなみにここは大聖堂の一階フロアから階段を上がった先にあるキャットウォークみたいな壁沿いの通路で、東のステンドグラスの真ん前である。月乃が変身する直前に開けて、鍵を掛け忘れたあの扉は、ここへ通じる主に点検や清掃用の通用口だったのだが、ここはいつもは見上げるだけの巨大なステンドグラスを、手を伸ばせば届く距離に感じられる特別鑑賞席でもあるのだ。通路自体も広いし、ステンドグラスは目を回すほど大きいから一度足を運ぶ価値がある学園の隠れ観光スポットである。

 他の生徒たちは慣れない夜更かしの影響で早々に寮へ帰ったり、眼下の客席でスヤスヤ眠っていたりしていて実質ここは小桃と日奈の貸し切りである。月乃と一緒に大聖堂へ来た桜ちゃんも「初日の出を見に今から山へ行きましょう♪」などとちょっぴりイカレタこと言うリリーさんに無理矢理腕を引かれて丑三つ時の東の山へ行ってしまったきりである。

「明けましておめでとう。寒くない?」

 日奈のポカポカな指先が月乃の頬に優しく触れた。

「はっ、うっ・・・」

 あまりの恥ずかしさに月乃は「放して下さい」と言って飛び起きたかったが、日奈様の腕の中があまりにも気持ちよくて声が出ず、体も動かなかった。髪をそっと撫でてくれる日奈様の手の温もりと、ふわっと押し付けられた柔らかいおっぱいが、月乃の持つ悲しみの全てを癒してくれている気がして、月乃は恥ずかしさと幸せのあいだでいつのまにか涙を流していた。

(お姉さま・・・お姉さま・・・)

 こんなに温かい人にウソをつきながら生きている自分の心の汚れ具合が切なくって月乃は胸が痛かったが、巨大なステンドグラスから下りてくるまっさらな光が、そんな彼女の懺悔を聴き届けてくれたらしく、いつのまにか月乃は日奈の腕の中で再び穏やかな眠りの世界に落ちていくことができた。甘くとろけるピーチのような素敵な夢の世界である。

「かわいい・・・小桃ちゃん」

 日奈は不思議な運命を感じる小学生の小桃ちゃんを温かい光の中で抱きしめたまま、自分もちょっとだけうとうとし始めたのだった。本来幸せとは人にうつるものなのである。

 

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