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第一話 ~まずは普通の始まり~

この小説は、ネット小説やノベルゲーム、ラノベなどで僕が実際に目にした、“小説としてこれはどうなんだ”という部分を真似して書いた作品です。

ですがこの第一話は、多分まだ普通の内容です。そのつもりで書いています。

ヤバイのは二話ですので、その前に主人公・直樹とヒロイン・桃香のやり取りを見ながら普通の小説をまず頭に入れておいて下さい。

 ──ある日の事。

 俺は行きつけの古本屋で、一冊の古ぼけた本を貰い受けた。

 その本には自称天才文筆家・桃香とうかの魂が籠められており、彼女はこの俺・三島直樹みしまなおきの前に、とある目的を持って姿を現したのだという。

 その目的とは、生前には為しえなかった偉業──人々の心を揺さぶる究極至高の小説、『神の一筆』を成就する事。

 しかし桃香は霊体であるが故、物に触れる事が出来ず文章を書けない。神の一筆を達成するため、俺の肉体を使って小説を執筆させて欲しい、というのが桃香の頼み事らしい。こうして俺と桃香の世にも奇妙な同棲生活が始まった。


「よっしゃ! 早速だけど、まずは軽く執筆してみようぜ」


 そう言って俺はパソコンの電源を入れる。起動した画面を見て、桃香は目を丸くした。


「おお! これはすごいのである」


 フッ、そうだろうそうだろう。テレビも無いような時代の幽霊であるこいつは、パソコンを見るのも初めてじゃないか?


「美少女キャラを堂々と壁紙にしているとは、なんとも勇ましい事であるな」

「よ、余計なお世話だ! ってか何で壁紙とか知ってんだよ!」

「ふっ、この時代に目覚めた時点で現代における大抵の事は知識として聖杯から与えられているのである」

「何のサーヴァントだよテメェは!」

「ライターのサーヴァントである」


 めっちゃ弱そうだな。


「今すぐ教会に駆け込みたいところだが……ま、冗談はさておき。テキストにでも何か適当に書いてみようぜ」


 俺の言葉に頷きを返すと、桃香はスッと背筋を正す。大きく息を吸い込んで目を見開くと、気合に乗せて吠える。


「憑依合体!」

「言っちゃっていいのかそれ!?」


 止めるのも間に合わず、半透明だった桃香の体がピンク色の光……いや、影となって俺の体内へと乗り移ってきた。


「んあぁっ! な、中にぃ……中に、入ってくるぅ~ッ!」

〈ええいうるさい! 男の癖に変な声を出すでない!〉

「うわっ、頭の中から桃香の声がする! すげぇ……こんなのラノベとかゲームの中だけだと思ってたのに、実際に体験する事になるなんて……」

〈驚くのはまだ早いのである。さぁ、坊ちゃんの右手を吾輩が動かしてみせよう〉


 桃香の宣言とともに、俺の右手がマウスへと導かれる。走るマウスがパッド上に火花を散らせ、残像するポインタがモニタを切り裂く。ポインタは迷いなくDドライブへと疾走し、ダブルクリック。そこにある『ロリ』フォルダが開放された刹那、画面を埋め尽くすエロ画ぞ、


「アアアアアアアァァァァァッッ! ミルナァァァァァァァァァッッ!」


 俺は残された左手をピースサインにして、自らの両目に突き入れた。


「痛ってええぇぇぇぇぇぇぇっ!」

〈痛いのであるううぅぅぅぅっ!〉


 右手の支配が消えた……今だ!

 俺は心眼でマウスを操作して、宝物殿を再び封印する。


「てんめぇぇぇ……塩をくれてやろうか、あぁん!?」

〈いたたた……何だどうした、ナメクジでも出たのか?〉

「惚けるな! てめぇ男の矜持をスケート靴で蹂躙しようとしやがっただろ!」


 俺は涙が止まらない目を擦りながら桃香を叱る。


〈男がそう簡単に泣くものではない〉

「セルフ目潰しさせておいて無茶言うな!」


 ったく、油断も隙もありゃしない。


「ほら、メモ帳。適当に何か書いてみなよ」

〈え、でも……見られながらなんて、ちょっと恥ずかしいのである〉

「はぁ? いちいち難儀な奴だなぁ。分かったよ、目を瞑っててやる」

〈それでは吾輩も画面が見えないのである〉


 なるほど。作業は早くも暗礁に乗り上げたって訳ですか。


「じゃあどうすんだよ。陰陽師でも呼ぶ?」

〈その諦めの早さ、何とかした方がいいぞ坊ちゃん。それでは何も生み出せないのである〉


 その一言に若干の苛立ちを覚えつつ、


「プロ作家はスピードが命だ。屁理屈こねる前に解決案を出せ」


 俺は身勝手な正論を吐き出した。


〈では単刀直入に。坊ちゃん、吾輩に意識を全て預けるのである。そうすれば万事解決なのである〉

「そんなの却下に決まってんだろ! 俺のプライバシー保護が最優先だ!」

〈プロ作家はスピードが命である。ではこの体、しばし貰い受ける〉

「待て待て待て! 話し合おう、話せば分か」


 そこで俺の意識は途絶えた。

二話が見所ですので、ここまで読んで下さった方はぜひ二話をどうぞ。

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