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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第10章 沖縄戦《高女学徒隊》
88/105

【アメリカ駐日大使】

 羽田空港に着陸した。

 ジャンヌが合掌して感謝している。


 時計を見ると、もうすぐ11時になる。


 出場ゲートを出ると、ジャンヌの両親が目に入った。

 その後ろに、控えめにゴリの親父さんが立っていた。


 俺たちも、出口まではゴリが先頭だったが、

出口を出るとジャンヌを先に促した。


 やっぱゴリは頭がいいなと、俺にはああいう配慮はできないなと見守った。


 俺は今日もジャンヌん家に送ってもらう。


「ただいま。遅くなってごめんなさい。

 沖縄とってもよかったわ」


「お帰り。元気で安心した。

 よかったよかった」


 お母さんは、ジャンヌを抱きしめると、泣き崩れてしまった。


 ジャンヌは、首をかしげて、お母さんを覗き込むように見つめると、


「お母さんどうしたの?」


 ジャンヌはお父さんを見ると、お父さんも感極まって涙が溢れだし、

左手で目頭を押さえながら下を向いてしまった。


 ゴリの親父さんが、


「彦、お帰り。

 お父さん、今回は、おまえの父親であることを、誇りに思うよ。

 ジャンヌさん、ご苦労様でした。オズ君も」


「ただいま。

 親父、もう発表っていうか、どうかなってるの? 

 俺たち、那覇空港を飛び立つ時は、地震のニュースしかやってなかったから」


「え? じゃあお前たち、まだ知らないんだ。

 沖縄の在日米海兵隊のトップが、

尖閣諸島の全島が消滅したのを確認したと発表したんだ」


「マジですか? 

 沖縄の海兵隊のトップって、第三海兵遠征軍の……」

 あっ、しまった! やべえ。


「なにオズくん。 

 沖縄の海兵隊のトップ、知ってるの? 

 そーかー、やはり……」


「あ、いやぁ、ぜ……全然知らないっすよ……」


「親父! 

 今回俺ら、極秘のミッションだから、あまり深入りしないでよ」


「そうか、オズくんすまん。

 いやー、今回ばかりはビックリというか、

もうニュースを見てから気分が高揚してしまってね。

 彦、あとで話すけど、

オズくんもお家に帰ったらお父さんに聞いてごらん」


「それに親父、他に司令官、何か言ってた?」


「記者会見で司令官は、

『日本政府にはお悔やみ申し上げるが、これで尖閣諸島を巡って、

我が海兵隊が、日米安保条約の履行のために、

中国と戦火をまみえるリスクが、

大きく減ったことは喜ばしい』ってコメントしたんだ」


「へーえ、それで日本政府は?」


「それがだな、日本政府はまだ発表してないんだ。

 総理は仙台へ遊説中で、夜の政経文化パーティーを急遽欠席して、

夕方慌ただしく官邸へ戻ったそうだ。

 閣僚や、官僚、それに自衛隊の制服組の幹部も官邸に呼びこまれたみたいだ」


「そうなんだ」


「司令官は、記者が島の消滅は地震によるものかとの質問に。

『我々は確認できない。

 ただ、尖閣の海域はいたって穏やかで、きっと神がこの海域を、

日中友好の海にしなさいとの、神のなせる業ではないか』と 。

 司令官のこの言葉を聞いてね、これはきっとジャンヌさん言葉だなって」


 親父さんはジャンヌに顔を向けた。


 ジャンヌは一瞬ドキっとして、


「あのう……きっと、神様のみ心は、その通りだと思います」


「ごめんごめんジャンヌさん。

 また司令官たらね、

『これは日本の伝統的な諺の【神隠し】ではないか』だとも言っていたよ。


 海兵隊としても、どさくさに紛れて中国が、尖閣諸島の海域を、

自国の領域と主張し、艦船とか漁船を居座らせて、

実行支配されることを警戒しているんだ。

 アメリカとしても、尖閣海域は、

日本の領域にしといた方が戦略上必要だからね」


 ジャンヌのお母さんが、不安げな表情で、ゴリの親父さんの話を聞いている。


 娘の行ったミッションが、驚天動地の結果をもたらし、

その影響を考えると、恐れ慄いているのではないか。


 そんなお母さんを察したジャンヌが、お母さんにそっと寄り添うと、

肩を抱いて強く引き寄せた。


「お母さん、心配いりませんよ。

 今回のミッションでは、俺とゴリの神様も働かれましたけど、

ジャンヌの存在がすべてでしたし、ジャンヌはすべて、

神様のみ心のままにミッションを行いましたから。

 なあジャンヌ」


「そおよお母さん、オズくんのいうとおりよ。

 だから心配しないで」


「そうね。

 みんな神様がなさったことだから……すいません大田さん」


 ゴリの親父さんも、ジャンヌのお母さんを見て頷いた。


「今回、アメリカの動きが早くてな、9時からはアメリカの駐日大使も、

追っかけて会見したんだ。

 会見では、中国を牽制しながらも、引き続き尖閣諸島の海域は、

日本の領域であるとの見解を示し、日本の管理のもとに、

日本政府も譲歩した上で、日中友好の海域になるよう、

仲介する用意があるといっていた。

 この件では、駐日大使より大統領の方が、情報が早かったみたいだ。

 どうもアメリカの大統領から、直接指示が飛んでるみたいなんだ」


 ジャンヌが、わーという驚いた表情で、自然と手が出たので、

俺とゴリがそれぞれ両手で、ジャンヌの手をがっちり掴んだ。

 

「日本政府がぐずぐずしてるから、アメリカが先行して、

日本に譲歩を迫って、尖閣諸島をめぐる中国との争いを、

平和的に解決させるという強い意志を感じるね」


「じゃあ後は、日本政府の出方だけなんだ」


「政府も午前0時から、総理官邸で記者会見するらしい」


 ゴリの親父さんが、ジャンヌのお父さんへ、


「子供たちも疲れてるようですから。

 今日はもうお別れして帰りましょうか。

 自宅に帰ればちょうど0時からの会見に間に合うでしょうから」


「そうしましょう。

 オズくんは家で送っていきますから。

 モンチくんありがとうね」


「いえいえ。

 オバさんまたごちそうになりました。

 清算はまた……」


「モンちゃんゆっくりでいいわよ。

 それよりお家に帰ったらゆっくり休んでね。

 明日は学校だから」

 

 みんな駐車場のエレベーターまで一緒に歩きながら、


「おじさま、山羊汁とっても美味しかったですよ。

 体がポカポカして、帰りの飛行機でぐっすり眠れ、疲れがとれました。

 ご紹介頂きましてありがとうございました」


「食べられた? それはよかった。

 彦にはお店、自分で調べろって言っていたから」


「観光タクシーの運転手さんが教えてくれたから。

 全然クセなかったよ。なあオズ」


「それじゃあみんな、今晩疲れが取れて、明日はバッチリだな。

 若いんだから」


 エレベーターでゴリたちと別れ、ジャンヌの家の車へ。


 帰りの車の中では、ジャンヌの両親とも、ミッションの話は一切しないし、

あえて聞かないようにしてるのかは解からない。


 ジャンヌは例によってお父さんに、沖縄戦の、高等女学校の学徒隊の、

悲惨な出来事を熱心に話している。


 それから、沖縄には改めて慰霊の旅を、

ジュリを含めたメンバーで行きたい旨を説明し、

費用の負担もお願いしていた。


「お父さんも、6月23日が、沖縄慰霊の日というのは知らなかったな。

 20万人の人が亡くなっているのなら、

まだ浮かばれていない御霊も多いことだろうし、

遺骨もまだ放置されたままなら、ジャンヌのいうように、

沖縄の戦後はまだ終わってないのだね」 


 ジャンヌは、市場での豚の顔の皮のお面の話しとか、

山羊汁の話しとか、次から次と話が尽きず、

あっという間に俺ん家に着いてしまった。


 帰宅したら、オトウもオカアも玄関へ飛び出してきた。

 待ちかねていた感じだ。


 オトウはジャンヌのお父さんへ、挨拶もそこそこに、


「もうすぐ総理官邸で、記者会見が始りますよ。

 いやービックリしましたね。

 島が無くなってしまったのですね。

 凄いですねー……」


 オトウはジャンヌに近づき、両手で握手を求めながら、


「ジャンヌさん、お疲れさん。

 大変だったでしょう。

 もう遅いから、お家でゆっくり休んでね」


「お父さま、ありがとうございます。

 オズ君大活躍だったのですよ。

 あとで誉めてあげて下さいね。お母さまも」


「やはり! ジャンヌさん、うちのオズも活躍したのだ」


 オカアが俺を振り返り、


「オズ、あなたも断食した効果あったのね」


「俺はたいしたことしてないよ。

 そんなのジャンヌに決まってるじゃん」

 

 ジャンヌは微笑みながら、首を横に振っている。


 オカアが、ジャンヌの両親へいろいろお礼を言って、

大橋家は帰って行った。


 オトウもゴリの親父さんのように、興奮してるみたいだ。


 さっきジャンヌが、俺が大活躍したって言ったけど、

どこまで話していいか判んないや。


 オスプレイで尖閣行ったことは勿論話せないし。

 結局はぐらかすしかないか。


 家の中に入ると、官房長官の記者会見が始っていた。


『……尖閣諸島の魚釣島付近で、気象庁が計測不能な、

かつてない巨大な地震が発生しました。

 その地震の発生に伴って、魚釣島をはじめとした、

尖閣諸島がすべて海底に沈んで消滅した模様です。

 尖閣諸島の消滅については、既に沖縄の米海兵隊の、

総司令官が発表されておりますが、日本政府といたしましては、

現在海上保安庁並びに海上自衛隊を現地に派遣して、

事実確認にあたらせています。

 また、尖閣諸島は火山性の地質で、かつて、

海底の噴火爆発によって隆起したことから、

島が再度隆起してくる可能性もあります。

 したがいまして、日本政府といたしましては、

島の消滅は一時的なものであると認識しており、

引き続き日本の領海であることに変わりありません』


 記者団からの質疑応答で、現在尖閣領域を、

海上も空域を閉鎖しているのはなぜかとの質問に対し、


『島の消滅が、大地震によるものか、海底の噴火爆発等によるものか、

現在調査中であり、尖閣領域は、

今なお危険な状況にあると認識しております』


 記者会見は続いていたが、俺はもう眠気の限界にきて、

先に寝ることにした。

 

 俺は6時に目覚ましを掛け、起きて下へ降りていくと、

オカアは、ニュースをチラチラ見ながら朝の支度をしているが、

オカアも多少興奮気味なのがわかる。


 オカアが風呂を沸かしておいてくれ、ゆっくり湯船につかって出てくると、

オトウも起きてきていた。


「オトウおはよう。昨日あれからどうなった?」


「おはようオズ。

 新聞の一面からテレビのニュースまで、尖閣諸島の消滅のニュース一色だ。

 日本政府も、柔軟な対応に傾きそうだな。

 アメリカの対応が早かったからな。

 アメリカの後押しっていうか、完全なプレッシャーだな、あれは」


「領土問題の、領土そのものを、神様は無くしてしまったのだから、

日本は絶対譲歩するよ」


「そうか、それよりおまえ、昨日聞こうと思っていたけど、

すぐに寝ちゃったから。

 昨日な、沖縄の海兵隊の司令官が会見の時、

魚釣島と久場島は、跡形もなく、どこに島があったか判らないけど、

大正島は、高さが70メートルもある屛風みたいな島だけど、

倒されたように海底に沈んていて、土台部分からえぐられたように、

底の部分の岩石が、海底に沈んでいるのが見えたそうだ」


 え! 俺というか、役行者が倒した痕跡が残っているんだ。

 やっぱあれは現実だったんだ。


「記者団から再度、巨大地震によるものかとの質問が出たんだ。

そしたら日系人の通訳が、きっとそれは、山をも動かすといわれた、

白龍にまたがった日本の偉大な神様が、日中の争いの種だから、

引き倒してしまったのではと、

相撲のもろ手突きのようなポーズをとったんだ」


 ジミー井上さんだ。

 俺が話してあげたことをそのまましゃべっている。


「それから、魚釣島のような大きな島が、

なんで跡形もなく発見されないんだって質問には、また通訳が、

それはきっと、日本の神話に登場する、大きな鉾をもった神様が、

同じく鉾で島をかき回して溶かしてしまったのではないかと。

 今度は鉾でかき回すポーズをとったんだ。

 今回の出来事は、先ほど司令官が言ったように、

尖閣諸島の存在が、日中友好の妨げになるから、

神様が無くしてしまったのだろうと言っていたんだ。

 記者団は、通訳の冗談だと思って、受け流していたけどな。

 これは役行者と猿田彦大神がやられたんだなと、

そこでお前たちの役割は、どうだったのか聞きたかったんだ」


 ジミー井上さんはそこまで話したんだ。

 ほんとの話だけど、普通の人は誰も信じないだろうな。


「それがさあ、俺もゴリも、ジャンヌに役行者と猿田彦大神に、

それぞれ全託して祈りに集中するよう言われていたから、

自分じゃよくわかんないんだよ。

 そこはジミー井上さんが見てたのならその通りだろうし」


「え! オズ、ジミー井上さんって? 

 お前まさか……」


「あ! いや、その、ジ、ジ、いや……」


「通訳の日系兵士のことか? 

 それならお前たち、アメリカの海兵隊に、

尖閣諸島まで運んでもらったのか?」


 あまりにも核心的なことを聞かれ、俺は返答に窮した。


「オ、オトウ。お、俺たち……」


「お父さん、オズが困ってるわよ! 

 これ以上聞いたらまずいわよ。

 オズも今回修行して、神様に使って頂いたのだから。

 ジャンヌさんがいうとおり、オズを誉めてあげたら。

 何があったか、聞かなくても判るでしょう」


 やれやれ、オカアに救われた。


「オズごめんごめん。

 ゴリくんのお父さんじゃないけど、

お父さんもオズのこと誇りに思うよ」


「でもオトウ、俺もゴリも、

ジャンヌの放つ光の中で行ったミッションだから、

やっぱジャンヌは格段にすげえよ」

 

「そうだろうな。

 そういえば昨日、気象庁と地震学の専門家が言ってたけど、

始めに大正島で大きな地震が、

たしかマグニチュード11.7って言ってたな。

 マグニチュード9以上を超巨大地震と呼ぶのだそうで、

東日本大震災や、スマトラ沖地震がマグニチュード9で、

1960年に起きたチリ地震が9.5で、これが観測史上最大だそうだ。

 その数分後に、魚釣島の周辺で、計測不能の巨大な地震が観測され、

その直後に久場島も同じような巨大地震が観測されたって言ってたぞ。

 マグニチュードは、理論上は12までで、

12では地球の地殻が完全に断絶する規模らしい。

 地震学の専門家も、

今までに例を見ない不思議な現象だったと言っていたな」


「二人とも、片付かないから早く食べて。

 オズもジャンヌさんたち来るんでしょ」


 オトウとテレビを見ながら朝食を食べていると、

今度はアメリカの反応だ。


 ホワイトハウスの報道官が、大統領は、日本の総理に電話をして、

尖閣諸島は消滅したが、これは、神が為せる業であろうと話されたそうだ。


 それゆえ日本政府も、尖閣諸島問題の、平和的な解決を目指して欲しい。


 そのために、アメリカが、

日中両国の仲介に乗り出す用意があると伝えていた。

 

また、報道官は、中国政府が、

先月全人代で決定された《下流方針》を、アメリカ政府は歓迎するとして、

 尖閣諸島の領域は、引き続き日本の領土であることを認め、

領土問題を一時棚上げし、尖閣海域をかつて自由に航海できた、

公海だったことを踏まえ、日中友好の海域とするよう、

日本の総理と中国の国家首席宛てに親書を発したと発表していた。

 

 続いてのニュースは、今度は中国の反応だ。


 沈黙をまもっていた中国政府が、

ホワイトハウスの発表を受けると、即座に反応したと報道している。


 中国政府は、先に発表した《下流方針》に変更はなく、

日本政府は、尖閣諸島であった領域の問題を、

我が国と平和的に解決するべきであるとのコメントを発表し、

アメリカの仲介に応じる用意があるとも報道官はいっていた。


「やはりジャンヌさんは、世界を平和にするために、

天から派遣されたのだな。なあオズ」


「ジャンヌさん、大活躍ね。

 お母さんも、オズを授かって、今ほど誇りに思うことないわよ。

 オズ、オズも精進に励んで、しっかりジャンヌさんを護ってあげるのよ」


「おう、任せとき」


 ジャンヌとゴリは、今朝俺ん家に7時30分に集合だ。


 玄関のチャイムが鳴った。7時23分だ。

 玄関にはジャンヌとお母さんだった。


「おはようオズ。よかった、元気そうで」


「おう、おはようジャンヌ、

だって昨日、山羊汁食べたじゃん」


「おはようございます。

 ジャンヌ元気そうでよかったですね。

 昨日は朝早くから、ハードな一日でしたから」


「おはようオズ君。

 ジャンヌもオズくんとモンちゃんが一緒だから、安心だし、

全然疲れなかったって。

 いろいろありがとうね」


「オカア! ジャンヌのお母さん」


 オカアは挨拶のあと、ジャンヌのお母さんをキッチンに誘って、

お茶を入れながら話している。


 俺はジャンヌをリビングへ誘いながら、


「俺昨日、政府の記者会見見てたら眠くなって、

すぐ寝ちゃったんだ」


「私もお家に帰ったら、すぐお風呂に入って寝ちゃったの。

 お母さんがテレビ見るかって聞かれたけど、

今日はいいからっていって。

 朝お父さんから、海兵隊の記者会見の話し聞いたの」


「俺も朝、オトウからジミー井上さんの話し聞かされてさあ、

オトウったら、

『尖閣諸島に海兵隊が運んでくれたのか?』って聞かれちゃって、

まいったよ。

 オカアが、ミッションのことは聞くなって助け舟出してくれてさ」


「そうだったんだぁ。

 家はお父さんもお母さんも、ミッションのことは聞いてこないし、

お母さん、ミッションの話になると、心配するから、

私からもお話ししないの」


 リビングのテレビは、民放に切り替えて、

朝からつけっ放しにしている。


 テレビは昨夜の日本政府の記者会見の様子を放映している。


 ジャンヌとテレビを見ていると、

7時29分になったところで玄関のチャイムが鳴った。

 ゴリだろう。


「おう、遅くなって悪い。

今朝ジュリと一緒に来て、今そこで別れたんだ」


「オハー、遅くねえよ。まだ29分だから」


「おはようモンチ、昨日はお疲れ様。

 お世話になりました。ジュリとお話ししてきたんだ」


「おう、昨日遅かったけど、ジュリが寄ってくれっていうから、

親父に寄ってもらったんだけど、お土産だけ渡して、

詳しい話は明日朝、一緒に登校しながらにしたんだ」


「私もジュリに早く逢いたいな。

 あ、モンチ、私今朝、家のお母さんに送ってもらったの」


 ジャンヌのお母さんも玄関へ来ながら、


「おはようモンちゃん、昨日はお疲れさま。

いろいろありがとうね」


「いえ、こちらこそ。

 旅行費用出して頂いたり、ご馳走になったり」


 ゴリの挨拶の後、早速神殿へ。


 神殿の入口でジャンヌが振返って微笑むと、俺とゴリに握手した。


 大役を果たした喜びとか安堵とか、自然に湧き上がったのだろう。


 俺もまた、喜びの感情というか、感動が甦った。


 水晶の前で、ジャンヌが、


「今朝は、《平成の祈り》のあとに、イエス様、

それからそれぞれの守護神様への感謝と、昨日お参りした、

ひめゆり学徒の天使の皆様、でいご学徒、瑞泉学徒、白梅学徒、

ふじ学徒の天使の皆様にも感謝の祈りを捧げましょう。

 宜しいですか」


 ジャンヌのハイの合図で祈りに入った瞬間、

目をつぶったと同時に水晶や、神殿全体が光明燦然と輝きだした。


 今まで祈ってきた中で、最高の輝きだ。


「ハイ、ありがとうございました。

 今ね、大天使ミカエル様が、オズもモンチの活躍を誉めていらしたわ。

 よく心を磨き、精進したって。

 伝えてあげなさいって」


「そうか、それなら俺、役行者に誉められたってことだな」


「もちろんよ、モンチもね。

 それから今回は、アメリカを動かして、日本に譲歩させて、

尖閣の海域を、日中友好の海にされるって仰っていました。

 イエス様が中心となられて、強力に光りを送っていらっしゃるそうよ」


「それでか、アメリカがなんでも先行してるのは。

 じゃああとは、日本が譲歩すれば丸く収まるじゃん」


「そうだよオズ。

 アメリカも、日本の領海であることを認めているし、

中国はOKだし。

 漁業とか、資源開発などの分野で、

日本の管理主導で話し合えば丸く収まるだろう」


「大天使ミカエル様も、そのためのミッションで、

天界の筋書き通りだそうよ。これからの展開が楽しみね」


 俺たちは、神殿から戻るとまだ8時15分前だった。


 オカアとジャンヌのお母さんが、キッチンでお茶を飲んでいたが、

ゴリが旅行の費用の余りを、ジャンヌのお母さんへ清算している。


 オカアもジャンヌのお母さんへ再度お礼を言っていた。


「ゴリ今朝、ジュリと一緒にそこまで来たんだって。

 学校で待ってるから、俺たちもう行くよ」


 みんなで母親たちに挨拶して登校した。


 1組の教室に入ると、

既にジュリが入口に向かって歩み始めていた。


 他にはまだだれも登校していなかった。


「おめでとう」っていいながらジャンヌを抱きしめた。


「ありがとうジュリ。

 ジュリも応援してくれてるなって、私心強かったわよ」


 ジュリは両手でジャンヌの手をがっちり掴みながら、


「私さあ、昨日お昼食べないで、教室のジャンヌの机でお祈りしてたのよ。

きっとジャンヌたちも、お昼食べてないだろうって」


「感激ジュリ。そうだったんだ」


「部活で稽古してても、気になって仕方なかったよ。

 ゴリからミッション成功したってメールもらったけど、

まさか尖閣諸島沈めたなんて、

あとでニュース見てチョーびっくりしたよ」


「ジュリね、私、イエス様から尖閣諸島へ行くよう命じられたけど、

まさか島をお沈めにされてしまうなんて、思ってもいなかったの」


「じゃあジャンヌもびっくりだったんだ」


 続いてジュリは、俺にも両手でがっちり握手しながら、


「オズもおめでとう。オズもやったね」


「おーサンキュージュリ。

 ゴリの猿田彦大神も凄かったぜ。

 まるでガリバーと子供の国って感じだった。

 チョーでかかったんだから」


「うん、今朝聞いたけど、

え! マジって感じ。

 でも昨日ねえ、テレビで海兵隊の通訳の話聞いて、

この人、ジャンヌたちと一緒に尖閣行ったなって、

たから、ゴリとオズの活躍は判ってたけど、

ガリバーみたいな巨人になったなんて」


「だって、魚釣島だってけっこうな島だぜ。

 あの島溶かしたんだから……」


「おいオズ、ご神事だったんだから、ちょっと気―つけろよ」


「ごめんゴリ、私興奮しちゃって。

 オズもごめんね」


 俺は合掌して、心の中でごめんなさいをした。

 俺もつい夢中になってしまった。


「ジュリぃ。沖縄慰霊の旅のお話し、聞いた?」


「うん、聞いた聞いた。

 私チョー楽しみ。

 オズもジャンヌもありがとね」


「いやー、ジュリが行ったら、

天之宇受売命(=あめのうずめのみこと)も一緒だろうから、

それに俺、天之宇受売命は女性の神様だと思っているから、

亡くなった看護隊のみなさんも喜ぶぜ。

 なあジャンヌ」


「ええ。

 ジュリね、今回時間がなかったから、行きたい所とか、

お参りさせて頂かないといけない所が沢山あるの。

 ジュリが一緒に行ってもらえると、オズの言うとおり、

お亡くなりになったみなさん、とっても喜ばれるわ」


「そうだよジュリ、大天使ミカエルと天之宇受売命が、

ダブルでお祈りされるんだから。

 そりゃー喜ぶと思うよ」


「嬉しいこと言うじゃないオズ。

 あんたも人を喜ばせるの、上手になったわね」


「いや、マジで俺そう思うぜ。なあゴリ」


「ああ、まだいついけるかるか判んないけどな……あ、

おはよう!」


 誰か登校してきたみたいだ。


 今日のランチタイムは、沖縄戦の高等女学校の学徒隊の話で盛り上がった。


 俺は部活が終わって帰宅し、

夜7時のNHKニュースを見ながら食事していると、今日午前、

アメリカの駐日大使が総理官邸を訪問し、総理と面談したと。

 そして午後には、中国の駐日大使館へ訪問して、

同じく駐日大使と面談したと報じていた。


 ジャンヌが言うとおり、アメリカ主導で動いている感じだ。

 アメリカの駐日大使は、きっと大統領と連携しているのだろう。


 俺は思わず、

「よっしゃー!」と叫んでしまった。

 9月から投稿を再開してきましたが、第9章 中国 

第10章 沖縄戦 を終え、執筆は続けてまいりますが、

投稿はしばし休ませていただきます。

 申し訳ありません。

 今まで読んで下さった、読者の皆様には感謝申し上げます。

 第11章の投稿時期は、まだ未定ですが、

再開の節は、宜しくお願いいたします。

                11月8日  げんくう

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