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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第九章 中国
76/105

【尖閣諸島】

 水平飛行で安定したところでジャンヌが、


「ジミー井上さん、ケリーさん、あらためまして、

本日は宜しくお願いします」


「こちらこそ、我々も大橋さんのお役に立てて光栄です。

 ところで、本日の作戦ですけど、魚釣島の上空で宜しかったですね? 

 司令官からは、もし、《紫のリボンを結んだ天使》が、上陸を望まれたら、

 着陸の許可もとってあります。責任は米国政府が取ると言ってます」


「はい、ありがとうございます。ミッションの内容は、我々でもまだ判りません。

 先ず、魚釣島に着いたら、上空で停まって頂きたいんですけど。

 モンチ、尖閣諸島の地図で説明して下さい」


「おう」


 ゴリは、パソコンから印刷した地図を出しながら、


「ジミー井上さん、この魚釣島の左側、台湾側から、

尖閣諸島全体が見渡せる位置で、ホバリングして頂きたいんですが。

 久場島、大正島方面を望んで我々は祈りに入ります。

 そこで神様からのご指示があると思います。

 それから、ハッチを開けていただいて、

機体の後ろから尖閣諸島を臨みたいと思います」


「解かりました。機長に伝えます」


 ケリーさんへ通訳すると、機長に伝えにコックピットの中へ。

 ジミー井上さんが戻ると、


「いやー、大橋さんがタクシーから降りて来た時は、

ほんとのびっくりしました。

 首に紫のリボンを結んでましたから、

神からのレターは本物だったんですね」


「私を指導しているのは、大天使ミカエルなんです。

 私は大天使ミカエルから、《平成の祈り》という祈りと、

宇宙に遍満するエネルギーをキャッチできる《印》を授かりました。

 本日のミッションも、《平成の祈り》と、

《印》を使ってのミッションになります」


 ジミー井上さんが、ケリーさんに通訳している。

 ケリーさんが、どんな祈りなのか教えて欲しいと言われ、

ジャンヌはOKって頷くと、


「いいですか、両手を胸の前でこうして指をからめます。

 そして、両人差し指を揃えて天を指し、掌を広げます。

 ちょうどピラミッドのようになりますね。

 そうです……、これがピラミッドの印です。

 この状態で、祈り言葉は『内平らかに外成る、地平らかに天成る。

 地球の安寧と世界の平和が達成されますように』です。

 私は最後に、『大天使ミカエル様 み心のままになさしめたまえ』って、

加えて祈っています」


 ジミー井上さんが、ケリーさんに通訳しながら祈りごとを復唱している。


 ケリーさんがワンダフルって言いながら、

この祈りは、十字を貫く十字架の祈りですねって言われた。


 世界平和のための祈りで、個人の祈りではなくて、

人類愛的なとても大きな素晴らしい祈りなので、

これから自分も祈っていいか聞かれた。


 ジャンヌはもちろん了解した。


 ゴリが、

「ジャンヌが授かったこの《平成の祈り》は、日本では、

西暦よりも、元号の平成の方が一般的に使われているんです」


「私、知ってます。その前は昭和ですね。その前は明治でしたね」


「はい、前の昭和天皇が亡くなった時、今の天皇が皇位継承する時、

元号が平成に変わったんです。

 新しい元号を決める時、『正気』『修文』『平成』の三つが候補に挙りました。

 結果は『平成』に決まったんですが、名前の由来は、

中国の司馬遷が書いた『史記』の中から、『内平らかに外なる』と、

中国の歴史書『書経』の中から、『地平らかに天なる』からで、

『内外、天地とも平和が達成される』という意味なんです」


 ゴリの説明の通訳を受けながら、ケリーさんは、

ワンダフル、ファンタスティックを連発している。


 コックピットで副操縦士がジミー井上さんを呼んでいる。

 ジミー井上さんが、俺たちを手で招き、前方を指しながら、


「大正島が見えてきました」


「絶海の孤島っていうより、海から突き出た岩って感じですね。

 溶岩でできたんですよね」


「そうです。久場島と並んで米軍の射爆場として昔使っていました。

 私の知る限り、もう何年も使っていません」


「それでですか、樹木はないけど、岩場で海鳥が生息してますよね」

 ゴリはよく調べている。


「はい、でも、最近の報告では、尖閣諸島の鳥類が、

全ていなくなってるそうです。

 理由は不明です。みんな不思議がっています。

 それと、これは今朝入った情報です。

 魚釣島に生息する、モグラやヘビが、特別な海流に乗って、

八重山諸島の西表島とか石垣島に向かって、泳いでいるのが目撃されています。

 巨大地震を予知して避難しているのか、中国軍が尖閣諸島を占領し、

日本と軍事衝突するのが、野生動物の勘で察知したのか、

いずれかは不明です」


「ジミー井上さん、これもおそらく神様の働きでしょうけど、

なあゴリ、魚釣島から石垣島まで170キロもあるし、

泳ぎきれるのだろうか? 

 さっきおっしゃった、特別な海流ってなんですか?」


「なんでもすごく早い海流で、サーフィンのように、波の上に、

モグラとかヘビが乗っかってたそうなんです。

 あ、魚釣島が見えてきました。

 右手に見えるのが久場島です」


 副操縦士が再びジミー井上さんを呼んだ。


 ジミー井上さんが驚きの表情だ、何かあったらしい。


 戻ってくると、

「オスプレイが大正島に近づいたあたりから、通信が途絶え、

レーダーも機能しなくなったそうです。

 それから、いつもは目に入る、日本の海上保安庁の巡視艇が、

一隻も見当たらないし、中国の監視船も見えないと言ってます。

 機長から、このまま作戦を続行するかどうか、判断を求められました。

 日本の視察団の方々にも知らせて欲しいとのことです。

 エンジン系統には異常はなく、先ほど要求された作戦は可能ですし、

沖縄への帰還も心配ないとのことです」


「これはもう、神様がミッションの前に、この領域を封鎖されました。

 全く心配いりません。

 予定通りお願いします。

 それからこの領域は、異次元の状態になっていますので、

コックピットのお二人は、本日の尖閣諸島へのフライトは、

記憶から消され、このオスプレイも含めて、

八重山諸島へのフライトに、変えられるはずです。

 普天間基地での扱いも、全てそうなります。

 帰還しましたら、各司令官へは、そのようにお伝えください」


「はい、分かりました。機長には作戦は予定通りと伝えます」


 オスプレイは、魚釣島を正面に据え、

エンジン・ナセルを徐々に上に上げて行きながら、高度を下げていった。

 魚釣島の上空を通過したあたりでエンジン・ナセルが垂直になり、

ホバリング状態になった。


 ジミー井上さんが、


「ご希望通り、真後ろが尖閣諸島です。ハッチを開けますか?」

「お願いします」


 俺たちは、八ッチを開ける前に安全ベルトを締め準備OK。


 ジャンヌがハッチの手前中央の床に正座した。

 俺とゴリが斜め後ろに控えた。


 ハッチが開かれた。


 ヘリは、尖閣諸島全体を見渡せるように、かなりな高度でホバリングしている。

 魚釣島が遥か遠くに見える。


「それではミッションに入ります」


 ジャンヌは、胸の前で指をからめた合掌をし、両人差し指を揃えて天を指し、

掌を開いてピラミッドの印を組むと、目を閉じて《平成の祈り》を祈り始めた。


『内平らかに外成る、地平らかに天成る。

 地球の安寧と世界の平和が達成されますように。

 大天使ミカエル様、み心のままになさしめたまえ』


 ジャンヌの体が、紫紺と金色と白光に輝き出した。


 続いて、

「大天使ミカエル様、宇宙に遍満するエネルギー、全てを可能に変えていく、

《神秘なる宇宙パワー》を注ぎくださりませ」


 ジャンヌは胸の前で、左掌を上に向け、親指と人差し指で輪っかを作り、

右手は親指と中指で輪っかを作り、左手の輪っかに鍵を掛け、

右手人差し指を天に向けた。


 それから、一瞬念じて鍵を解き、左右輪っかを組んだまま、

胸の前で水車のように回転させ、徐々に回転の輪を大きくさせながら、

左右に広げながら上げていき、七回転目に、右手人差し指を天に向けた。


 その瞬間、オスプレイの天井を貫いて、太い光を右手人差し指で受け止めた。


一瞬、天井が吹き飛んだかと思った。

 ジャンヌの右人差し指の先端が、溶接のように光が飛び散っている。


 左手の掌を、少し内に傾けると光が屈折して、左掌で受けとめた。


 それからゆっくりと、左掌を手前に引きながら、

正面、尖閣諸島に掌を向けた。


 すると、ジャンヌの左掌から、天地を貫く光の帯が、

尖閣諸島を包み込むように、一瞬で遥か彼方まで飛んで行った。


 ジャンヌの放つ光が、尖閣諸島全域を囲み、

光のカーテンのように、天までつながっている。


 すげえ広範囲の巨大なカーテンだ。

 尖閣諸島の海域が、水槽の中のような状態になって、

外の海域から遮断された。


 ジャンヌは印を組み、光を放し続けている。


「オズ、これから役行者様が、オズの肉体を使って、

島々のお浄よめと、ミッションをなさいます。

 役行者様に、全託と感謝で、想念を集中してください」


「ハイ」


 俺は心の中で、

『役行者様に全託します。よろしくお使い下さい。

 役行者様、お使い頂きありがとうございます』


 俺は、ジャンヌに言われた通り、心の中で、

役行者への全託と感謝を繰り返した。


 そのうち、

『役行者様ありがとうございます』と感謝の思いに集中した。


 ふと気がつくと、俺は白龍の背中にまたがっていた。


 いつも役行者が着ている、柔道着みたいな服を着ている。

 役行者が、俺の肉体と一体になっているのが感じられる。


 ちょうど魚釣島の上空を旋回している。


 天が急速に黒雲に覆われたと思った瞬間、雷鳴が轟き、

魚釣島のてっぺん、奈良原岳に大きな雷が落ちた。


 大型爆弾が落ちたみたいに、頂上の岩石が吹き飛んだ。


 標高363メートルのうち、頂上付近の数十メートルが吹き飛ばされ、

すり鉢みたいになっている。


 続いて超メガトン級の雷が、7回連続して落ちた。


 落ちたというより、巨大なノミを打ち込んでるようだ。

 薪が斧で割られたように、奈良原岳がぱっくりわれてしまった。


 と同時に、北小島と南小島にも、巨大な雷を落としていた。

 既に南小島の南端の岩石のタワーは吹き飛ばされ、

土台だけが残っている。

 北側の山稜は、真っ二つに裂けていた。


 次に俺は、白龍にまたがったまま、瞬間移動のような速さで、

久場島上空に来ていた。


 ここでも俺は、というよりも、俺の肉体を使った役行者が、

雷雨の浄めを行った。


 その直後、同じく巨大な雷が、7本同時に、

久場島の真ん中を、二分するように直撃した。


 なんと久場島も、真っ二つに裂けてしまった。


 白龍がそれを見届けると、頭が少し右に傾いた瞬間、

うねりをあげて天空を一気に駆け登った。


 ジェットコースターのように、天を指して登ったあと、

真っ逆さまに地上めがけて降っていく。


 俺の心臓と股間が、縮小というか、縮み上がった。


 あっという間に大正島の上空に来ていた。


 ここでは、激しい雷雨での浄めのあと、俺(役行者)は、

白龍の頭を、島の上方45度の位置に停めた。


 屛風のように、海岸から切り立ってる島の、真ん中を正面に据えると、

相撲のもろ手突きのように、掌をゆっくりと大正島へ押し出した。


 すると、目には見えない巨大な力が押し出されていく。


 島際の海水が盛り上がっていき、水しぶきが、

島のてっぺんを超えて跳ね上がってくる。


 徐々に島が傾いていき、根元から倒れ、先端部分が海中に沈んだ。


 俺(役行者)は更に、白龍を25度上昇させ、頭を下げさせた。


 大正島の剝き出しになった根元部分に向き合うと、

再び相撲のもろ手突きのように、ゆっくりと掌を押し出した。


『うをーりゃー!』 気合とともに島の根元部分が、

濁流とともに海中に沈んでいった。


 役行者は、山をも動かすとの伝説を聞いていたが、納得だ。


 俺は、気がついたらオスプレイのもといた場所にもどっていた。


 ジャンヌはずっと印を組んで、光を放射し続けている。


「オズ、お疲れ様でした」

「はい、ありがとうございました」


 俺は役行者に感謝の合掌をした。


「モンチ、これから猿田彦大神が、

モンチの肉体を使って、ミッションをなされます。

 モンチもオズと同じように、猿田彦大神への全託と、

感謝の思いで集中してください」


「ハイ」 


 ゴリも、ピラミッドの印を組んで、目をつぶって祈りに集中している。


 正面を見ると、なんとゴリが、巨大な猿田彦大神に変身している。


 あまりに巨大なため、尖閣諸島が足元に小さく見える。


 六国見山で見る、神話に出てくる服装だ。

 頭に烏帽子を被り、高下駄を履いて、大きな鉾を持っている。


 ゴリ、いや猿田彦大神が、鉾を魚釣島の近くの海に突き刺した。


 ごしごししごくと島が大きく揺れ、鉾を両手でかき回すと、

砂山が崩れるみたいに、あっという間に海底に消えてしまった。


 周辺の島々もことごとく海底に沈めてしまった。


 周辺の海域は、巨大な渦巻きのあと、大きなうねりとなって広がっていく。


 数十メートルに達する大きな波は、ジャンヌが尖閣諸島を囲った、

光のカーテンで跳ね返され、囲いの中で巨大な波同士がぶつかり合っている。


 まるでSF映画の特撮を見ているみたいだ。


 次に久場島だ。

 二三歩向こうへ移動すると、鉾を久場島近くの海中に突き刺し、

ちょこっとしごくと、最後に残っていた久場島も、海底に消えてしまった。


 気がついたら、ゴリも元の場所に座っていた。


「モンチ、お疲れさまでした」

「ありがとうございました」


 ゴリも合掌して感謝した。


 正面を見ると、光のカーテンで囲まれた、

尖閣海域だけ、大波がうねっているが、尖閣海域の外側は穏やかだ。


 ジャンヌの印と光は続いている。


 やがて金色の光が、天からゆっくり降りてきて、尖閣海域を覆った。


 すると海域の波が急速におさまった。


 ジャンヌが印を解き、光が消え去ると、

正面の海域には、島の影も形も無くなっていた。


 尖閣海域は、何事も無かったかのように穏やかだ。


 ここでジャンヌが合掌し、

「大天使ミカエル様、ご指導とご加護ありがとうございました。

 役行者様、猿田彦大神様、ご指導とご加護ありがとうございました。

 これから沖縄までのご守護お願いいたします」


 俺とゴリも心の中でそれぞれ感謝した。


「オズ、モンチ、ありがとうございました」


「おお、でもゴリ、さっきすげかったな。

 本体の猿田彦大神がゴリに変身したんだ」


「オズも、気がついたら白龍に乗っていたじゃん。

 役行者がオズになってたぜ」


 俺とゴリが、興奮状態ではしゃいでいる。


 ふとジャンヌを見ると、

 ジャンヌは、魚釣島が在った辺りをじっと見つめている。

 心なしか寂しげな表情だ。


 ジャンヌは何か独り言を言ってるようだ。

 プロペラの音でよく聞き取れない。


 俺はジャンヌにそっと近づき、聴き耳をたてた。


 ジャンヌは歌っていたのだ。メゾソプラノの清らかな声だ。


「……大地を…… 大地に…… ……感謝せよ……」


 なんとジャンヌは、『大地讃頌』を歌っていたのだ。

 合唱曲で、中学の時に歌った曲だ。


 俺とゴリは頷き合うと、一緒に歌い出した。

「平和な…… 静かな…… ……ほめよ たたえよ……」


 ジャンヌの歌が不意に止まると、


「ごめんなさい!」って泣き伏してしまった。


 俺とゴリがびっくりして顔を見合わせた。


 ジャンヌは、ミッションが終わったとたんに、

心優しい乙女に戻っていたのだ。


「ジャンヌ、俺たちわりぃー! でもなジャンヌ……」


 ジャンヌは泣き伏したまま、激しく首を左右に振った。


 黒いロングヘヤーが乱舞した。


「いいえ!、神様のみ心ですもの……」


「だよな! だからジャンヌさあ、この島が、

日中の戦場にならんで済んだんだから。

 それに日中の和解と友好が進展するだろうから」


「きっと日中台湾との友好の海域になるよ。

 尖閣諸島の犠牲はけっして無駄にはならないよ」


「そおだよっ! ゴリのいうとおりだよ」


 続けてゴリが、

「あのなジャンヌ、大天使ミカエルも、天界の決定事項って……。

 ジャンヌのせいじゃないんだから……」ここでジャンヌが顔を挙げながら、


「ごめんなさい! 二人のミッションの成功を、祝福しなければいけないのに」

「二人の成功って、俺、役行者に怒られたじゃん。

 お前は大橋ジャンヌに従えばいいって。

 やっぱ主役はジャンヌだよ! なあゴリ」


「あたりまえじゃん。ジャンヌが、

 宇宙究極の光を受けたから出来たんじゃん。

 俺たちは、その光の中で使ってもらっただけさ」


「はい、わかりました。三人が一体となって成功したのね」


 ここでジャンヌが振り返った。


 ジミー井上さんとケリーさんが、硬直してこちらを見ていた。

 二人とも、驚愕の表情というよりも、明らかに恐怖の表情だ。


 ジャンヌは微笑みながら、コックピットに近い、

一番前に座っている二人に近づきながら、


「ジミー井上さん、ケリーさん、ありがとうございました。

無事にミッションが完了しました」


 ジャンヌは二人に握手を求め、俺たちも続いた。


 二人はやっと正気に戻ったようだ。


 ケリーさんは、両手を胸の前で組むと天を仰ぎ、

十字を切って静かに祈った。


「ジミー井上さん、ハッチはもう閉めていただいて結構です。

 あとは沖縄まで宜しくお願いします。

 機長と副操縦士のお二人にお礼を伝えて下さい」


「はい、分かりました。機長に伝えます」


 機長と副操縦士が振り返って頷いてくれた。


 オスプレイのハッチが閉められ、機首を回転させ、沖縄方面を向いた。


 魚釣島があったあたりは、まだ海中が茶色く濁っているが、

海面は鏡のように穏やかになっていた。


 ホバリングからエンジンナセルが徐々に前方に傾き、

やがて水平飛行に移った。


「大橋さん、これはどういう事だったんでしょう? 

 まだ目の前の出来事が信じられません」


「ジミー井上さん、私は守護天使である、大天使ミカエルより、

無限の宇宙エネルギー、不可能を可能に変えていく、

神秘なる宇宙パワーを受けとめる《印》を授かったのです」


 ジャンヌの説明を、ケリーさんに通訳している。

 ケリーさんは、真剣な表情で、ジャンヌとジミー井上さんを、

交互に見つめている。


「先程は、神秘なる宇宙パワーの中で、ミッションが行われました。

 尖閣諸島を消滅させるのは、天界での決定事項だったのです。

 中国では、尖閣諸島の領有権を譲らず、既に軍部は、

実力行使の実行を決めていました。

 このままでは、日中が軍事衝突する運命だったのです」


 「米軍も、中国は、いずれ軍事行動に発展するだろうと予測しています。

 その時は、日本も軍事力で対抗し、我が米軍も、日米の防衛義務の履行のため、

共同作戦を秘密裏に策定しています」


「天界では、日中が戦火を交えないよう、地上に働きかけられました。

 先週我々は、中国へ派遣されました。

 このミッションでは、大天使ミカエルより、

天界の、あらゆる諸神善霊が、応援されたことを知らされました。

 中国では今月、全国人民代表者会議が、臨時に開催されました。

 その会場に、宇宙から老子様が現れ、

中国の指導者の方々の意識を変えられ、

日本との対決姿勢から、友好へと方針転換されたのでした。

 でも日本は、相変わらず頑なに、尖閣諸島が我が国の固有の領土で、

わが国には領土問題は存在しないという立場を貫いています。

 日本が譲歩して、日中友好を復活させるという考えは、抑えられています。

 マスコミも、日本人のほとんどは、政府の見解を支持しています」


 通訳を受けているケリーさんは、ジミー井上さんと一緒に、

驚いたり頷いたりしている。


 ここでゴリが、

「今私たちは、尖閣諸島沿いの上空を沖縄に向かっていますよね。

 沖縄は、明治時代まで、琉球王国として独立国だったんです。

 中国とは、明の時代から、交流がありました。

 明からの航路としては、左手の遥か彼方の福建省より、

先ず魚釣島を目指し、我々と同じように、尖閣諸島沿いに、

沖縄本島までの航海だったんです。

 ですから、昔から魚釣島が、航海の重要な道標だったんですね。

 昔から無人島でしたから、自由に航海出来ました」


 ゴリの説明を通訳されると、ケリーさんは、

初めて聞くような様子だ。


 ジミー井上さんは、

「中国政府も、日本よりはるか昔から、中国の領土だったと主張していますね」


 続けてゴリが、

「そうですね。ですから、日本政府が、国際法上の正当性を訴えても、

相手の中国は、自国の主張を曲げませんし、感情的にも納得できないでしょうから。

 ここは日本が譲歩するしかなかったんです」


 ここでケリーさんが、口をはさんだのを、ジミー井上さんが通訳され、


「それぞれ両国には言い分があり、解決は難しそうだといってます」


 ジャンヌは、ケリーさんに頷きながら「イエス」といって、

「ですから天界での決定は、紛争の源を絶ってしまわれたのです。

 島の存在自体が無くなってしまったのですから、

領土問題そのものが無くなってしまいました。

 後は神様のみ心のままに好転していくと思います」


 ケリーさんは、ジミー井上さんを通じて、

「私も今回の、神の決定とミッションを理解します。

 日中が平和的に解決されることを、神に祈りますと言ってます」


 ジャンヌはケリーさんへ、

「おーサンキュウ」って言うと、最後に、合掌して、


「私は、この海域が日中友好の海域になると信じています」


 ジャンヌの言葉をケリーさんへ訳すと、二人でおおいに頷いた。


 ジャンヌは立ち上がると、コックピットの前方に広がる尖閣諸島を見つめ、

深々と礼をすると、長いこと祈り続けていた。

 本日投稿いたしました、【尖閣諸島】で、日中間で争っている、領土問題を、原因の源を絶つことができました。

ジャンヌの一つの大きな使命を果たせたところで、しばし筆を休ませて頂きたいと思います。

 2月から、ほぼ毎日一話づつ投稿してまいりました。

 拝読下さった読者の皆様には、心より御礼と感謝申し上げます。

 体と頭も休ませて、充電いたします。

  投稿再開の時期は未定ですが、その節は、引き続き拝読して下さるようお願い申し上げます。         

           2013年4月16日 げんくう

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