【明治18年】
今朝からまた、俺ん家に7時に集合だ。
俺は昨日、ジャンヌに『任せとき』っていったものの、
やっぱ気になったのと、気分が高揚して、なかなか寝られなかった。
今日の朝食から9日間、精進料理だ。
先週まで23日間続けていたから、後は昼抜きを我慢するだけだ。
昨晩ジャンヌが、昼に飲んでいる、ブドウ糖入りの抹茶、
俺とゴリの分も作って持ってくるっていったけど、オカアとゴリのお母さんが、
それぞれ自分たちで作って待たせるからということになった。
だから俺たちが9時前に帰宅すると、オカアたちは、ブドウ糖を買いに、
大船の薬局に急いで行くことになった。
それに明日からまた、精進料理がスタートするから、胡麻豆腐とか、
栄養価の高い食品を、それに抹茶も、西友へ急いで買いにいった。
俺たちが神殿で、9日間の初日のお祈りが終わると、水晶に映像が映し出された。
天空から海上が写し出された。
尖閣諸島だ。
左端に台湾、上に中国大陸、下に西表島と石垣島だろう。
高度が上がり、右手、大正島のはるか右手に沖縄本島が写し出された。
「ジャンヌ、尖閣諸島の中では、魚釣島が一番大きくて、
飛瀬を挟んで近くにある北小島、南小島の三島は固まってるけど、
魚釣島の右上約27キロに見えるのが久場島で、
魚釣島から右手沖縄方面へ約110キロのところにあるのが大正島なんだ。
その他に、魚釣島の周辺に、沖の北岩、
沖の南岩の岩礁を含めた総称が尖閣諸島なんだ」
ゴリがジャンヌに説明している。
「モンチ、魚釣島って、台湾から近いのね」
「ああ、台湾から約170キロで、石垣島からも約170キロなんだ。
中国からは約330キロ、沖縄本島からは約410キロあるんだ」
「なるほど、ゴリ、尖閣諸島って、天空から見ると、
距離感からいって、台湾にくっついてる感じがするけど」
「そうみたいだな。明治28年、1895年1月に、
日本が閣議決定して日本の領土に編入したから、
それ以前は、どこの国にも属してなかったんだ」
映像が変わり、航海している船だ、
「中国の船だな、明の時代で琉球王国(沖縄)へ向かっているようだ。
あ、魚釣島が見えている。
魚釣島を道標として、今度は尖閣諸島沿いに、
沖縄方面に向かっているな」
ゴリが解説してくれている。
ここで映像は消えた。
「ゴリさあ、なんか昔は、中国の船も、
尖閣諸島を自由に航行したりしていたんだ」
「ああ、ただの無人島だったからな」
「なあジャンヌ、俺たちが今見せられた映像って、
神様が見せてるんだから、日本も、中国と仲良くしなさいってことだよな」
「そうね。太古に、神様が国造りされた時には、
尖閣諸島は入っていなかったみたいね」
「もちろんだよジャンヌ。
沖縄自体が明治時代まで、琉球王国っていう独立国だったんだから。
だから、日本政府の公式見解でも、明治時代に、無人島で、
どこの国の所有でも支配も受けてないのを慎重に確認して、
日本の領土に編入したことになっているんだ」
ゴリは、尖閣諸島の歴史をよく勉強している。
「じゃあなんで中国や台湾ともめてるんだ?」
「日本が明治28年に閣議決定する10年前に、
島に国標を建てることになって、明治18年、1885年に、
南大東島と北大東島には、すんなり日本国としての国標を建てたんだけど、
尖閣諸島については、中国も明の時代から、航海の道標として、
島に名前を付けていたし、当時、清国も、
日本が島を占拠するのではないかと、疑心暗鬼になっていたから、
清国ともめるので保留にしたんだ」
「なんだ、当時から日本政府も、日本の領土にしたら、
もめるの解かってんじゃん。
じゃあなんで10年後に日本の領土に組み入れたんだ?」
「当時明治18年頃は、日本の海軍がまだ弱くて、
中国の海軍力に圧倒的な差をつけられていたんだ。
10年後の明治28年は、前年の7月に日清戦争が勃発し、
戦争中で、日本が有利の中で1月に閣議決定されたんだ。
日清戦争は、朝鮮半島をめぐる争いで、日本海軍は、
前年9月の黄海海戦で、当時世界最強クラスといわれていた、
清国北洋艦隊に勝利して、制海権を確立したんだ。
陸軍も連戦連勝し、朝鮮半島から国境を越えて、
清国まで侵攻していたんだ。
日中間の長い歴史の中で、日本が中国の領土に初めて侵攻したんだ。
5月には、下関で日清講和条約が締結され、台湾が日本の領土になったんだ。
中国としては、戦争に負けてる状況下で、
日本が尖閣諸島を領土に編入してるから、
国民感情としては、納得できないだろうな」
「だったら当時の日本政府の見解がおかしそうだな。
太古から日本人が住んだり占有していた、
日本の固有の領土じゃないんだ」
「国際法上は、『先占』っていって、どこの国にも属さないところは、
先に実行支配して領土の宣言をしたら、
その国の領土として認められるんだ」
「先に領土の宣言をしたっちゅう、早い者勝ちの世界じゃん。
昔は自由に漁とか航行出来たのに、日本の領土になったから、
台湾と中国の漁師は出ていけっちゅうのは、
台湾と中国の漁師にとっては納得いかないだろうな。
尖閣諸島は、好漁場らしいから」
「そうなんだ。理屈では、国際法ではうんぬんいっても、
相手側の心情は理解できないだろうな。
人が住んでない無人島なんて、みんな無国籍にしちゃえばいいのに」
「そうね、渡り鳥は自由に島を往き来しているし、
イルカだって国籍もないから、自由にエサとなる魚を食べているだろうし。
この領域は、日本と中国と台湾との友好の領域にすればいいのに。
それが神様のみ心なんでしょうから」
「元々無国籍だったんだから、ここは、日本政府も譲歩して、
日本が主幹事で、海洋資源も乱獲の防止も含めて台湾、
中国と共同管理とか、すげー資源が眠ってるらしいから、
共同開発とか進めればいいのに。なあゴリ」
「ああ、せっかく老子が、中国の指導者たちの考えを変えさせて、
日本に大幅な譲歩をして、アジアの安寧と平和に大きく前進したのに」
「日本政府は、相変わらず、『尖閣諸島は我が国の固有の領土で、
我が国には領土問題は存在しない』って言ってるよな。
今度は日本が譲歩する番だな。
国際法上は別にして、中国国民も、感情の世界では納得出来ないだろうから」




