表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第九章 中国
68/105

【北京】

 飛行機は、北京空港に着陸した。

 

 着陸して停止した機内で暫く待つと、乗降口が開き、

始めに70才位の女性が乗り込んできた。


 座席の番号を確認しながら我々の席にやって来て、

 手元のメモと座席番号を確認し、ジャンヌを見て、


「大橋さんですか?」

「はい、大橋です」


「ようこそ中国へ、私がご案内します」


 俺たちは、ファーストクラスの乗客を置いたままに、

真っ先に誘導されて機外へ。


 タラップを降りると既に車が用意されていた。

 前にパトカーみたいな車が停まっている。


「私、陳と申します。今日と明日、二日間、ご案内させていただきます」

「大橋ジャンヌと申します。中国は初めてですので宜しくお願いします」


 ジャンヌがお辞儀をすると、陳さんは軽く会釈し、握手してきた。


「陳さん、こちらが大田猿田彦です」


「大田猿田彦です、宜しくお願いします」

 ゴリは右手を差し出し、陳さんとがっちり握手した。


「こちらが大澤小角です」

 俺もゴリに倣ってがっちり握手した。


 誘導されるままに車に乗る。先にパトカーが先導していく。

 前の車はやっぱ先導車だった。


 税関とか通らないで空港を出ていく。国賓並みの待遇だ。


「陳さん、私たち、普通の旅行会社に申し込んだ旅行者ですけど、

何か特別待遇みたいですね?」


 ゴリが質問してくれた。


「はい、政府から、案内、命じられました」


 大天使ミカエルが言っていたけど、全ては整ってるってやつか。

 ジャンヌは余裕で落ち着いている。


「あ、そうですか。

 旅行会社には、天安門広場と人民大会堂を見学して昼食、

それから万里の長城へ行くコースで、ご案内お願いしてると思うんですが? 

 それで、どこへ行くのでしょうか?」


「申し訳ありません。

 私、政府の役人に聞きました。

 でも秘密でした、皆さん、聞いてる、ありますか?」


「いえ、私たちも、陳さんのお出迎えにびっくりしています」


 ゴリも知らないふりしてるけど、人民大会堂へ直行だろう。

 

「そうですか、政府は皆さんをどこ、連れて行きますか、わくわくです。

 それから今日と明日、運転手、呉といいます」


「ニイハオ呉さん、大橋と申します。宜しくお願いします」


 陳さんが通訳すると、呉さんは頷いた。


「ニイハオ、大田です」「ニイハオ大澤です」


 それぞれ呉さんは頷いてくれた。


「大橋さん、中国語うまいです」


「ごめんなさい、陳さん。私、中国語これだけしか知らないんです。

 あ、それからシェイシェイもありました。

 陳さんこそ日本語とってもお上手ですね」


「はい、私、養父母に育てられた日本人なのです。

 ずっと日本に住んで居ました。

 日本の実の母が亡くなり、養父母をみるために、

9年前に中国に戻って来ました。

 その養父母ももう亡くなりました」


「そうだったんですか。それで日本語お上手なんですね」


 車は市内を進んで行くと、いたるところに警察官が警備している。


 ゴリが、

「陳さん、今回、全国人民代表者会議が、臨時で開催されますよね」


「全人代ですね、はい。

 既に人民大会堂には、全国の代表者が集まっているはずです」


「党大会は5年に一度で、全人代は毎年3月に開催されますよね。

 臨時の全人代って、よく開催されるんですか?」


「ほとんどありません。

 重要な政策や方針は、7人の常務委員によって決められます。

 このメンバーにはもちろん、国家主席や首相もメンバーです」


「今回は特別なんですね。目的というか、議題はなんですか?」


「噂あります。重大な方針変更です。一つ噂あります。

 軍、尖閣諸島占領します。そして、中国の領土、宣言します」


 俺たち三人は驚きの表情で顔を見合わせた。


 ゴリが、

「尖閣諸島は、今は無人島だけど、中国が占領すれば、

日本は確実に奪還すべき行動をとりそうです。

 そうなったら軍事衝突は避けられないし、東シナ海が戦場になってしまう。

 中国は、ほんとにそこまで踏み込みますかね?」

 

「私、反対です。でも中国国民、みんな支持します」


「陳さん、私も反対です。戦争は人びとを不幸にします」とジャンヌ。


「大橋さん、でも、あと一つ噂あります。とても嬉しい噂です」


陳さんは、喜びの笑顔で、

「中国救う、平和の使者、やってくる噂です」


「え? その平和の使者って、どこから、いつやってくるんですか」


 俺は思わず身を乗り出して、大きな声で聞いてしまった。


「『紫着た、高貴な、天使』です。

 東の国から、やってくる、話です。

 平和の使者です。天使が中日を平和にする噂です」


「陳さん」


 俺は感動で全身が震え、声までうわずってしまった。


 俺は興奮状態だから、会話は常に冷静沈着なゴリに任せた。

 ジャンヌも真剣な眼差しで陳さんを見つめている。


「陳さん、東の国って日本ですか?」

「そうです。日本に、紫着た、高貴な、天使、舞い降ります」


「陳さん、その天使は、いつやってくるんですか?」

「噂です、そうです、全人代の会場に現れます。

 中国の人、隠れて、みんな、天使に期待する、多いです。

 人民大会堂の、天井の赤い星から舞い降りる、言う人います」


「この噂は、どこまで広がっているんですか?」

「中国人、みんな知っています。もちろん共産党の幹部、知っています」

 

 いつの間にか、天安門広場が見えてきた。


「先導車、人民大会堂に向かう、みたいです」


 先導車は、物々しい警備の中を進んで行き、詰所の警官が、

白いバリケードのような柵を開けてくれ、天安門広場の西側にある、

人民大会堂の正面玄関に車は横付けされた。


 巨大な円柱がそびえている。


 先導車は停まったまま、中からは誰も降りてくる気配がない。


 ジャンヌは、

「陳さん、車でお待ち頂けますか。私たちだけで行ってきます」


「わお、大橋さん、通訳要りませんか? 

 それに、今日、大会あります、中入れません」


「陳さん、ありがとうございます。

 でも私たち、大丈夫ですから、ちょっと待っててください。

 私たち、中で用事がありますから」


「はい、分かりました。ここでお待ち……」

 陳さんは、ジャンヌと言葉を交わしながら、

ふとジャンヌの、制服の紫のリボンを見ると、驚愕で目を見張り、


「大橋さん! む、む……紫着た……て、て、てん、し……」

 陳さんは絶句した。

 同時に失神して助手席のシートに倒れ込んでしまった。


 ジャンヌは、

「モンチ、どうしよう?」


「ジャンヌ、任しとけ。

 俺、中国語判らないから、筆談できるように用意しといた」


 俺は、メモ帳とボールペンで

『少々、時間、待、願、陳様、健康安全、貴様、理解?』

と書いて呉さんに渡すと、微笑んで頷いてくれた。


 ジャンヌは合掌すると、

「大天使ミカエル様、宜しくお願いします。老子様、みこころに従います」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ