【魚釣島】
今日で修行8日目だ。
今回のジャンヌの修行には、俺とゴリも極力合わせるべく、
食事は普段通り一日3回だけど、菜食にして、肉と魚は避けることにした。
俺も部活、結構激しいから、その分ごはんを含め、
食べる量は多くなったけど、3、4日したら、第六感っていうか、
微妙な感覚が研ぎ澄まされてくる感じだ。
本来人間が持ってた能力が甦ってくるようだ。
ジャンヌは菜食の一日朝夕二食で、
昼は抹茶にブドウ糖を溶かしたのを飲んでいる。
ジャンヌならもう修行は、23日間も必要ないみたいに感じるけど、
大天使ミカエルの指示だ。
なんせあの宇宙のすげー光をうけるんだから、肉体を天使と同じくらいに、
浄化させなければだめなんだろう。
旅行の手配は、ジャンヌのお母さんが、旅行会社に、
飛行機のチケットの手配から、ホテルの予約までお願いした。
ホテルはJAL系列のホテルだから安心だ。
昼食は、旅行会社提携の北京料理店で、
食事代も旅行費用に入れてもらったそうだ。
夕食は今回もホテルの中華料理にして、現地で現金の支払いを、
極力しなくて済むようにしている。
ホテルはツインを隣同士で2部屋、ジャンヌが寝るときは、
俺に同じ部屋へ泊まって欲しいとお母さんを通じてお願いされた。
お母さんもその方が安心といわれ、俺は大橋家の信頼が嬉しい。
ツアーというわけにもいかないので、グループ旅行で車を1台チャーターして、
現地に通訳兼案内人を付けてもらったそうだ。
もっとも観光といっても今回は、二学期の中間テストの直前だから、
人民大会堂でのミッションのあと、万里の頂上を見学ぐらいにしとくつもりだ。
翌朝一番の飛行機で帰国することにした。
羽田発北京行きで、出発は9時10分、北京到着は現地時間12時5分。
フライト時間は時差があるから約4時間だそうだ。
北京空港に着いたら、おそらく人民大会堂に直行だろう。
北京空港から北京市内まで約27キロ、約30~40分らしい。
人民大会堂には、おそらく1時過ぎに到着するけど、
今回なにをするのか全く分からない。
おそらくジャンヌも同じだろう。
今朝のお祈りでも、水晶にはなにも映らなかった。
今朝ジャンヌが、昨日お母さんの、旅行の手配が終わったといっていた。
俺は次の日、夕食を済ませると、早々と自室にこもり、
中間テストの勉強をしていたら、オカアが、今テレビのニュースで、
中国のことやってるからって、あわてて呼びに来た。
中国政府が、臨時の全人代(全国人民代表者会議)の開催を発表したと、
テレビニュースでやっていた。
開催の目的、議題は不明といっていた。
日本政府に緊張が走った。
中国が、いよいよ尖閣諸島を実力で獲得すべく、軍事衝突も踏まえて、
奪還する決定をするのではと予想している。
開催は二週間後、ちょうど俺たちが北京に飛ぶ日だ。
オトウもオカアもまさかという顔で、驚きの表情をしていた。
俺は六国見山の頂上で、老子から聞かされていたから、
やっぱりなって感じだった。
大天使ミカエルのいうとおり、全ては天界の段取りなのだろう。
オトウもオカアも俺たちが、人民大会堂でミッションがあることは、
話してないから知らないはずだ。
二人とも心配そうだが、俺には何も聞いてこない。
ミッションに関しては、内容は話さないという、暗黙のルールになっている。
「俺、ジャンヌ信じてるから、なんにも心配してないから。
オトウもオカアも安心しててな」
「もちろん心配なんかしてないわよ。ジャンヌさんなんだから。
でもあまりにもタイミングっていうか、偶然っていうか……」
「だからさー、大天使ミカエルが言ってたけど、全ては整っているし、
天界のあらゆる諸神全霊が応援してくれてるんだって」
「そうだよお母さん、オズの言うとおりだから。
大船に乗ったつもりで待ってられるから」
「オトウまた、帰ったら土産話するからさ。じゃあ俺、勉強があるから」
《今日でお祈り16日目の朝だ。》
俺は菜食にも慣れ、量もがつがつ食べないで済むようになった。
不思議と肉が食いたいなんて思わない。
感覚が研ぎ澄まされて、自分の肉体が浄化されていくのがわかる。
残りあと一週間だ。自分でもどこまで進化するかわからない。
玄関のチャイムが鳴った。
今日は土曜日だから、ジャンヌもゴリも、
お父さんが送ってきてくれるはずだ。
ドアを開けたらジャンヌだった。
「おはようオズ。今ね、下の信号でモンチの家の車と一緒になったの」
ジャンヌの朝一で見る笑顔がたまらない。
「そっかー、おっはー、ジャンヌ。
ジャンヌしっかり食べてるみたいじゃん」
「ええ、そうよ。お母さんがいろいろ材料考えてくれているの」
「おおゴリ、おはよう」
「おはようオズ。俺もしっかり食べてるぜ。
昨日家、餃子だったんだけど、おふくろが俺用に、
野菜だけの餃子作ってくれてさ、豚肉入ってなくても結構いけたぜ」
ジャンヌは、断食してるわりには、そんなに瘠せてこないみたいだし、
ゴリも大丈夫みたいだ。
お父さんたちは、まだ朝早いからと帰っていった。
俺たちは早速神殿へ。
ジャンヌの合図でお祈りを始め、終わったら7時42分だ。
今日は水晶に映像が写し出された。
制服を着た軍人が作戦会議をしているようだ。
ゴリが、
「これって中国軍の作戦会議じゃねえ? 参謀本部かな」
巨大スクリーンには、尖閣諸島を中心に、中国大陸の軍の配備状況と、
海軍及び空軍の配備状況が写し出されている。
「ゴリ、これって魚釣島への上陸作戦じゃねえ?」
「ああ、中国軍は本気で上陸するつもりだな」
場面が変わって魚釣島が写し出された。
「え? 中国国旗じゃねえ?」
「とうとう中国は実力行使で日本に対抗したんだ。あの連中、中国軍だな」
「これって、すげーヤバイじゃん。いつだ?」
「わかんねー! 未来映像だから、ほっとけば現実になるな」
また画面が変わった。
日本の総理が国民に呼び掛けている。
「国際法を無視して、武力で尖閣諸島を占拠した暴挙は、
我が国政府としても容認出来ない。
直ちに退去しなければ、我が国は……」
総理の横には防衛大臣が座っている。
その後ろには、防衛省の制服組の幹部が控えている。
また画面が変わって、今度はアメリカの国防長官が会見している。
「……中国政府に対し、直ちに退去を求めるとともに、尖閣諸島は、
日米安全保障条約、第五条の適用範囲であり、
日本が第三国と戦火を交えれば、アメリカ軍は、直ちに条約を履行する。
日本の自衛隊と共同して対処する……」
アメリカも日米同盟を遵守するっていってる。
「なあジャンヌ、このままだと、尖閣諸島を巡って、あの海域が戦場となるな。
これって、近い将来の話じゃねえ?」
「オズ、絶対大丈夫よ、そのために私たちがいるんでしょ」
「だよな、ジャンヌやっぱすげえや、水晶の将来画像見せられても、
全然心配しないんだ。俺って、まだまだ修行が足りねえな」
「だから俺たち、中国の安寧とアジアの平和をお祈りしてるんだろ」
「だよな」
「あと一週間ね、みんな頑張りましょう」
「なあジャンヌ、もうジャンヌ、宇宙からのすげー光、
余裕でキャッチできそうに思えるんだけど。
でもやっぱ23日間だよな」
「オズ! 大天使ミカエルが23日っていったんだから、
23日に決まってるだろう」
「いや、もちろんそれはわかっているけどさ、さっきジャンヌ凄かったから」
「私、みんなとここでお祈りすると、一緒に進化していくから、
嬉しくてしょうがないの。
三週間といわず、ずっと続けていきたいけど、
神様が23日間ってお命じになったから、23日間でやめときましょう。
あと7日間宜しくね」




