表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第九章 中国
65/105

【松下幸之助社】

 翌朝から毎日7時に神殿に集合だ。


 俺は早めに朝食を済ませ、外でジャンヌを待つ。


 ジャンヌとゴリが揃ってやってきた。

 いつものジャンヌスマイルで手を振ってくれた。


「おっはー、二人とも早いじゃん」


「おはようオズ。大船駅の横須賀線の下りホームで一緒になったの」

「おうおはよう。オズも早いじゃん」


 二人とも玄関でオカアに挨拶すると、バックを玄関に置いて俺たちは神殿へ。


 奥の水晶が輝きを増した。


 ジャンヌを中心に、俺はジャンヌの右、ゴリは左の定位置に座った。


 ジャンヌが、

「始めに一回、声に出して《平成の祈り》ね、

続いて大天使ミカエル様がご指示された、

《中国の安寧とアジアの平和が達成されますように》も加えて祈りましょう」


 俺たちは目をつぶり、ジャンヌの『はい』の合図で祈りはじめた。


『内平らかに……』祈り始めると、水晶が真昼のように輝き、

左のジャンヌが紫紺と金色と白光に入り混じって輝きながら、

どんどん広がってく感じだ。


 俺もジャンヌの光に包まれながら、繰り返し祈りごとを祈り続けた。


 久々だけど、心地よく集中できている。


 ジャンヌの、

『はい、ありがとうございました』で23日間の初日のお祈りは終わった。


 祭壇脇の時計を見ると、まだ7時40分だ。


 ほっとする間もなく水晶に映像が写し出された。映像も6月以来だ。


「あ、鄧小平だ!」

「え? ゴリ、鄧小平って誰?」


「中国の近代化と経済の開放政策を推し進めた人だよ。

 中国の実力者で日本との友好に貢献したんだ。

 もう大分前に亡くなってるな。

 そういえば、鄧小平は、日中友好平和条約の締結の時、

尖閣諸島の領土問題は棚上げしましょうって提案したんだ」


「そうだったんだ。ねえモンチ、中国でいう大人=(たいじん)ね」

「おう、そうだ。あれだけの大国を開国に導いたんだから、

大政治家だな。今も生きていればなあ」


「なんか、鎖国から開国って、幕末に、尊王攘夷の嵐が吹き荒れる中、

周囲の反対を押し切って、勇猛果断に日本の開国を断行した、

幕末の井伊直弼みたいなひとだな」


「わーオズ、私、井伊直弼が大好きなのよ。嬉しい! 

 私ね、中学の時に、お父さんに勧められて、三浦綾子さんの

『氷点』っていう小説読んで感動したの。

 その三浦綾子さんも、高校生の時、井伊直弼を同じように評価する文章、

書いていらしたわ」


「井伊直弼って、独裁政治をしいて弾圧したとか、

評価は賛否分かれるところだけど、藩政では善政をしいて、

領民から慕われていたんだ。国政と藩政の使い分けが出来たんだ。

 開国によって、その後の日本は、明治維新を経て大きく発展して、

近代化の波に乗れたんだから、やっぱ井伊直弼は、

大政治家だったことは間違いないな。

 開国のお役目が済むと、さっとあの世へ召されてしまった。

 坂本竜馬も、徳川幕府の大政奉還がなり、

お役目が済むと同じくあの世へ召されたよな」


「幕末って、大物の役者がそろってたな」


「私は幕末の政治のことは、教科書で習ったことしか知らないけれど、

井伊直弼は、《茶の湯一会集》とか一期一会の精神とかを残してくれたから、

お茶を通して尊敬しているわ」


「ジャンヌにとって井伊直弼って、おばあちゃんを通して、

お茶の精神的なお師匠さんなんだな」


「そうね、《おもてなしの心》のご本尊様みたいなものね」


 映像を見ていたゴリが、

「ここ日本じゃ! あれ、なんか工場視察してるぜ。え? 松下幸之助じゃん」


「モンチ、松下幸之助さんって、

あの四日市の椿岸神社の隣の鈴松庵を寄進した人でしょ」


「おお、パナソニックを創業した創業者だよ。

たしか、この時来日した鄧小平が、松下幸之助に、

『あなたは経営の神様と呼ばれていますね、

ぜひ中国の近代化に協力してください』ってお願いされたんだ」


「その後、パナソニックは、外国企業で初めて中国に工場を造って進出し、

中国の近代化に貢献したんだ。

 だから中国では、松下幸之助を井戸を掘った人として敬われていたんだ」


「ゴリ、すげーよく知ってるな。

 なあゴリ、井戸を掘った人ってどういう意味?」


「ああ、その名の通り、道を拓いた人ってとこかな。

 中国では、日中友好を断行した、田中角栄元総理が井戸堀NO1かな。

 でも、近代化の井戸堀はパナソニックだろうな」


 場面が変わり、俺たちに緊張が走った。


 中国での暴動の映像だ。

 テレビのニュースでさんざん見せられた映像だ。


 百貨店とかスーパーが略奪されている。

 車の販売店も焼き討ちにあっている。


「あ、工場だ。パナソニックの看板だ」


 映像は、パナソニックの看板が大写しになる。

 暴徒がパナソニックの工場を破壊している。


 俺は思わず、

「パナソニックって、松下幸之助の会社じゃん! 

 なんで? あいつら、知ってるの? 

 松下幸之助が泣いてるじゃん! こんなのありかよー」


 俺は思わず興奮して叫んでしまった。


「オズぅ、松下幸之助さんは、けっして泣いたり嘆いたりしていないわ」


 俺は、ヒートアップしていた頭に冷や水を掛けられた。


「え? ジャンヌ、なんで? 普通に俺、むかつくよ」

「オズぅ、松下幸之助さんは、椿大神社の境内に

『松下幸之助社』として御霊が祭られている神様でしょ。

 神様は決して泣いたり嘆いたりしないわ。

 松下幸之助さんも、神様として、今回のことも、天界で見守っていらっしゃるわ。

 いや、それどころではなく、暴徒の人に代わって、

中国の神様や、中国の良識ある皆様にお詫びしているわ」


「でもジャンヌ、なんで松下幸之助が謝るんだ?」

「オズう、みんな、神様からみれば、暴徒でも自分の子供なのよ。

 松下幸之助さんは、中国の発展に尽力されたでしょ。

 それだけに、中国への愛情も深いと思うわ。

 だから暴徒へも愛情を注ぎ続けているわ」


「そういえば、聖書によると、イエスは処刑されるとき、

自分を嘲笑した上、磔にした人たちの赦しを神に祈ってたな。

 十字架上で苦痛にあえぎながらも

『父よ、彼らを赦し給え。自分で何をしているのか、

分からないのです』ってね」


「オズ、松下幸之助さんも同じお気持ちよ」


「そっかー、ジャンヌ。神様って、

俺たち人間の感情で推し測ったらいけないんだな。

 やっぱ俺、まだまだだな。

 一般大衆の感情の波に呑み込まれてしまった」


 ここで暴動の映像から、学校の教室の映像だ、小学校の授業のようだ。


 女の先生がエキサイトして叫んでいるようだ。


 教科書がアップで映る。旧日本兵の残虐行為の写真が写っている。

 先生の叫びに生徒たちも興奮しながら叫んでいる。


 場面が変わって今度は中学校のようだ。

 ビデオを見せられている。

 これも旧日本兵の残虐なシーンだ。

 俺もゴリも、ジャンヌも顔をしかめて見ている。


 ジャンヌが両手を、顔の前で交差して、ばってんすると映像は消えた。


「反日教育だな」

「ゴリ、反日教育ってなに?」


「中国では、愛国教育の一環として、反日教育っていって、

戦前に、旧日本軍が中国で行った残虐行為を教えているんだ。

 小中高と全ての教育機関で実施されているんだ。

 1990年代から始まったんだ。

 結果的に日本に対する恨みとか復讐心を煽っているんだ」


「小さい時からこんな教育されたんじゃ、みんな日本が大嫌いになるな。

 子供には、豊かな心を育むために、情操教育とか、

道徳・倫理といったものが大切なのに」


「親父の友達が、最近中国から帰国したんだけど、話を聞いたら、

9・18の前、9・18って、満州事変勃発の日で、

中国では国辱の日とされているんだ。

 テレビでは、何回も旧日本軍の残虐なシーンが放映され、

見ていて精神が狂いそになったって言ってたそうだ」


「戦争って、人間を残虐行為に走らせたり、正常な感覚が麻痺してしまうのね。

 だからもう戦争なんて、絶対してはいけないわね」


「だから日本も、敗戦を経て、戦後平和国家に生まれ変わったんだ。

 それから、日中国交正常化以降、日本は中国に対し、

ODA=(政府開発援助)や経済協力で、近代化に貢献してきたんだ」


「ゴリぃ、そういうこと、中国の若者は知らないの?」

「教えてないんだろうな」


「もう一度、中国の安寧とアジアの平和の達成をお祈りしましょう」


「おお、ジャンヌ俺、頭がギュッとなって、すげーやな気分なんだけど」

「オズ、俺もだよ、ジャンヌは?」


「私は大丈夫、大天使ミカエル様をお呼びしていたから。

 モンチもオズも守護神として、それぞれ猿田彦大神と役行者に、

常に守られているから、お呼びすればいいわ。

 すぐにお光で清めて下さるから」


「あっそっかー、解かったぜジャンヌ。

 これからそうするわ。よっしゃー、じゃあお祈りお願い」


 俺たちは、両手を胸の前で組み、両人差し指を揃えて天を指し、

掌を開いてピラミッドの印を組んだ。


「はい、あ、二人とも、ちょっと曇っているみたいだから、

《平成の祈り》から入りましょう」


 ジャンヌは、俺たちの心の曇りが判るんだ。

 お祈りを始めると、ジャンヌも水晶も煌々と輝き出した。

 俺の頭はすぐに澄み渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ