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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第八章 体育祭
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【六高祭】

 今日は六国高校の体育祭『六高祭』だ。


 朝目が覚めると、俺はジャンヌのリレーの事が真っ先に頭に浮かんだ。

 どうか無事に走ってくれ!


 やっぱジャンヌが気になって早めに登校した。

 教室に入ると、ジャンヌはもう来ていたが、髪をポニーテールにしていた。


 ジャンヌのポニーテールは初めて見るが、活動的な感じがして似合っている。


「おはよう。オズ今日は早いのね」

「よう、おはようジャンヌ。ジャンヌこそ早いじゃん。体調は? よく寝れた?」


「ええ、ばっちりよ」


 俺はジャンヌの髪型に注目。


「ああ、髪ね、昨日美容院で少しカットしてもらったの。

 リレー走るとき、邪魔になるでしょ」


「ジャンヌ、ポニーテールもかっこいいよ。なんかスポーティな感じがしてさ」


「ありがとう、オズ。私足速そうに見える?」

「おうおう、活発なお嬢さんって感じ」

 あ、ジュリがやってきた。


「おはようジャンヌ。やっぱ髪切りに行ったんだ!」


「あ、おはようジュリ。ええ、三つ編みにしようと思ったんだけど、

ちょっとカットすればポニーテールで大丈夫かなって」

「うーん、まあ大丈夫じゃない」


 ジャンヌは後藤のところへ行って最終打ち合わせをしてるみたいだ。

 バトンの受け渡しのポーズをとっている。


 そろそろ開会式の準備だ。


 ジャージと青組の青のTシャツに着替えてグランドに集合だ。

 みんな自分の椅子を持って教室を出ていく。


 俺は自分の椅子を持ち、ジャンヌの椅子に手を掛けそうになったが、

はっと気がついた。

 思わず周囲を見回して、誰かに見られてないか確認した。


 心臓の悪い松山の椅子を運んでやるならみんなも納得だろうけど、

ジャンヌの椅子を運んだら、それこそ今度はみんなから総すかんだったろう。


 開会式のあと、一番最初の競技は男子の応援合戦だ。


 六高祭では、男子は『応援団』女子が『チアリーディング』が

学年を越えて絆が深まる団体競技だ。


 俺は、サッカー部の先輩から『応援団』の参加を強く勧められたけど、

ジャンヌが天使の修行に入っていたし、ジャンヌ優先で参加しなかった。


 ジャンヌも同様で、クラスの宮本とか、ダンス部の連中が、

盛んにジャンヌを誘っていたが、修行が始まっていたから、

ジャンヌも今年はチアリーディングをパスした。


 俺は障害物競争と、部活対抗リレーに出場する。


 俺はジャンヌと同じ、サッカー部の第一走者だ。第二走者は小林だ。

 俺たちはお祭り気分だから、事前に練習なんかしない。


 ユニフォームを着て走るし、でもサッカー部のメンツにかけて本気で走る。


 陸上部が毎年本命で優勝らしいけど、でもみんな手加減はしない。


 ライバルは、なんといっても野球部だ。

 あいつらだけには負けたくない。


 普段はグランドをシェアしてお互い干渉しないが、

スポーツではサッカーと野球は人気を二分するスポーツだ。


 それだけに、どっちが人気実力で勝っているか、

こういう時にライバル心が沸騰する。 


 午前中の競技は修了した。


 部活対抗リレーは一位が陸上部、二位は野球部に持っていかれた。

 俺は二位でバトンを繋いだけど、結果三位だった。


 ジャンヌは午後の騎馬戦に出場する。ジャンヌは馬だから安心だ。


 問題はなんといっても最終競技の色別対抗リレーだ。


 男子の棒倒しが終わっていよいよジャンヌの出場するリレーだ。


 既にジャンヌは集合場所へ移動している。


 移動前に、松山がジャンヌと話していた。

 松山は、いまだにジャンヌに感謝していて、

ジャンヌが走り終わるまで心配なんだろう。


 既に入場門にはリレーの出場選手が揃って点呼を受けている。


 いよいよ選手が入場してきた。


 アンカー以外はグランド半周だから、

選手は二手に別れてスタート地点と中継地点に別れていく。


 選手はそれぞれ順番通りに並んで腰をおろしている。


 放送部が出場選手を読み上げていく。先ずは黄色組の選手紹介だ。


『黄色組、1年2組、笠原さん』

 立ち上がって片手を挙げ、みんなに挨拶する。黄色組の生徒控えから拍手が挙がる。


『1年5組、関谷さん』

黄色組の紹介が終わると、次はピンク組の紹介が続く。


 最後が我ら青組の選手紹介だ。


『次に青組の選手紹介をします。1年1組、大橋ジャンヌさん』

 ひときわ大きな喚声が揚がった。


 ジャンヌが立ち上がって、右手を挙げてくるっと回って、

本部席に深々と頭を下げると、会場から拍手が湧き上がった。


 ミス六国高校の評価が定着しつつあるジャンヌだが、

今回のリレー出場の経緯が校内で広まってるのだろう。


 みんなのジャンヌに対する温かい拍手に、俺は胸が熱くなって、

思わず泣きそうになってしまった。


 ジャンヌは恥ずかしげに、俺たち生徒席にも頭を下げて腰をおろした。


 スターティングメンバーが発表され、早速周囲では、

ジャンヌのライバルの情報が飛び交っている。


 黄色は弓道部、ピンクは女子テニス部らしい。いずれも運動部だ。

 陸上部じゃないだけましかもしれない。


 みんな口には出さないが、ジャンヌがどれだけ離されずに、

第二走者に繋げられるかに関心が寄せられている。


 さあ、スターターが登場し、第一走者がスタートの位置につく。


 コースの位置取りは、それぞれのアンカーがじゃん拳で決めた。


 青組は大外だ。

 ピンク組が内側第一コース、黄色組が真ん中第二コースでスタートだ。


 ジャンヌたち3人がスタート地点に並んだ。


 スターターが

『位置について、よーい』

 スタートのピストルが鳴った。


 スタートの反応は、ジャンヌが抜群だった。

 俺には一瞬、フライングかと思ったくらいだ。


 スタートで少しリードしたものの、すぐ二人に追いつかれ、

黄色がリードして内側のピンクの前に出ようとした瞬間、

ピンクと接触してピンクの選手がバトンを落としてしまい、

黄色も足がもつれて前のめりになって、両手を地面についてバトンが転がった。


 危うく転倒するところだった。


 ジャンヌは二人の異変に気付き、後ろを振り返ると、

なんとストップしてしまい、心配そうに見ている。


 ちょうどコーナーの手前、俺たち青組の控え席の前だ。


 青組の連中は、全員身振りを交え、ジャンヌに早く走れと絶叫している。


 ピンクと黄色はすぐに体勢を立て直すと、凄い形相で走り出した。


 二人とも、走るというよりも、ジャンヌに襲いかかっていく勢いだ。


 それを見たジャンヌは、急に思い出したみたいにあわてて走り出した。


 ジャンヌは、チーターに追いかけられ、

必死で逃げていくトムソンガゼルのようだ。


 コーナーを回るうちに、みるみる差が縮まっていく。


 でもなんとか1位でバトンをつなげられた。予想外の展開だった。


 バトンの受け渡しも一番スムーズで、練習の成果だろう。

 ライバル二組との差を広げられた。


 青組のみんなも胸をなでおろし、後藤への応援に切り替えている。


 青組は、その後リードを広げつつ、そのまま1位で終わった。


 俺が心配したジャンヌが出場の、色別対抗リレーも無事に終わった。

 俺の斜め前に座っていた松山が、そっと涙を拭っているのが目に入った。


 競技はこれですべて終わり、あとは閉会式だ。


 俺は、ジャンヌのリレーのシーンを思い出しながらグランドに移動していると、


「ちょっとオズ、なに一人でニヤケてんのよ! きもいわねえ!」

「え? あ! ジュリか」

 閉会式のため、整列すべく、グランドに移動中に、無意識のうちに、

思い出し笑いしてたみたいだ。


「ジャンヌ、よかったじゃない。ちょーうけた」


「おう、あいつ、他の二人心配しちゃって、ジャンヌらしいよな」

「ほんと、ひやひやさせてくれたわね」


 閉会式が始まった。校長が講評している。


 俺は安堵感に満たされながら、またジャンヌのリレーシーンを思い出していた。

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