【旅路】
ジャンヌがいれてくれたミルクティは最高だ。
三時のお茶が、こんなに幸せなひとときに感じられたのは初めてだ。
俺はビスケットを食べながら、
「ジャンヌさあ、さっき、俺と二人で旅行して、
おんなじ部屋に泊まっても、怖くないって言ってくれたじゃん」
「ええ」
ジャンヌは少し顔を赤らめた。
「俺、ジャンヌと二人で旅行するの、夢なんだ。
あ、もちろん俺、指一本ジャンヌに触れないから。
俺、絶体約束するよ」
「ううん、オズ、お約束なんてしなくていいわ。
私、オズのこと、信じてるって言ったでしょ」
「ありがとな、ジャンヌ。
この前さー、みんなでお伊勢参りしたじゃん。
その時、ゴリやジュリの神社にも行ったろ。
だから俺、ジャンヌも両親が祈願した、
岡山のお寺へ連れて行ってやりたいんだ」
「本山寺ね、わあー嬉しい。私ね、お父さんから聞いたんだけど、
私がまだ赤ちゃんの時に、私を連れて、お母さんと三人で、
お礼参りに行ったんですって」
「ああ、お父さんからこの前、ジャンヌん家に行ったとき聞いたよ。
そのときの写真、お父さんに見せてもらった。
ジャンヌ、それからは行ってないんだろ?」
「ええ、私も気になっていたの。
観音様に、お礼と報告に行かなければって。
両親もきっと喜んでくれるわ」
「そっかー、でも、ジャンヌ、俺と二人で、
それもおんなじ部屋に泊まるって聞いたら……」
「オズぅ、私の両親も、私と同じ気持ちよ。
オズのこと、信頼しているわ。
それに私、知らない所で、お部屋に一人で泊まるなんて、
恐くて出来ないわ。
オズと一緒のお部屋なら安心だもん」
「そっかー、それならいいんだけど。
来年の春休みか、夏休みに行きたいな」
「ええ」
ジャンヌとの夢の旅路かあ。叶いそうだな。
「あ、そうだ。オズの那智の滝でしたっけ?
役行者様がお出ましになったのは?」
「ああ、白龍に股がって現れたんだって」
「そうだったわね。
オズも、こちらからご挨拶も兼ねて、一度参拝に行ったら?
きっと役行者様も、お喜びになられるわ。
私、行くの、オズの方が先でもいいわよ」
「いや、いいよ。ジャンヌが先で。
だって俺、毎月お山のてっぺんで役行者と会ってるじゃん。
それに、ジャンヌのお父さんも言ってたけど、そのお寺、本山寺だっけ、
開基は役行者って言ってたじゃん。
行けばきっと、役行者も喜んでくれるさ」
「それもそうね。じゃあ私の方が先でいい?」
「もちろんさ」
ジャンヌと同じ部屋に、二人だけで泊まれるんだ。
俺がいつも空想していた夢がかないそうだ。俺って幸せ過ぎるかも。
俺はまた、一人で空想してしまった。
ふと気がつくと、ジャンヌは何か、真剣に悩んでる表情になった。
俺は現実世界に引き戻らされた感じだ。
やはり同じ部屋に二人で泊まるのは怖いのかな?
俺も浮かれ過ぎてしまったのか。
「ジャンヌ、やっぱ俺と二人じゃ心配なのか?」
「ううん、ただ……」
「ジャンヌ、ただ、どうしたんだ」
俺はジャンヌに、やさしく問いかけた。
やっぱ男と、ダブルベットじゃなくても、密室だからな。
ジャンヌの不安も理解できる。
ジャンヌはほんのり頬を染め、下を向いてもじもじしている。
「あのぉー、オズぅ、一つだけお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「もちろんさ、ジャンヌ。当たり前だろ」
「私がぁー、着替える時にぃー、オズぅ、後ろ向いててくれる? 」
「なんだ、ジャンヌ。そんなこと心配してたのか。
そんなの、俺、見るわけないじゃん」
「あーよかった。私、着替えるところ、オズに見られたら、
恥ずかしいから、どうしよーかなって。
ごめんなさいオズ、私、心配しちゃった。そうよね」
「だったらジャンヌ、ジャンヌが着替えてる間、俺、
鬼ごっこの鬼みたいに後を向いて、しゃがんで」
俺はジャンヌの前で両手を目の上にかぶせ、
「もういいかい?」って言ったらジャンヌが、
「まーだだよ!」 俺はもう一度、
「もういいかい?」って言いながら、中指と薬指を開きジャンヌを見ると、
無邪気な遊びの世界に入って喜びまくっている。
ジャンヌは、
「もういいよ!」ってチョー楽しそうだ。
「わーおかしい。旅行、とっても楽みね」
少なくてもジャンヌは、
俺と二人だけの夜をぜんぜん心配してないことはわかった。
俺は、ジャンヌの俺に対する信頼の厚さを改めて痛感した。
俺は絶対ジャンヌの信頼を裏切らないぞ!
自分自身に強く誓った。




