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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第八章 体育祭
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【旅路】

 ジャンヌがいれてくれたミルクティは最高だ。

 三時のお茶が、こんなに幸せなひとときに感じられたのは初めてだ。


 俺はビスケットを食べながら、

「ジャンヌさあ、さっき、俺と二人で旅行して、

おんなじ部屋に泊まっても、怖くないって言ってくれたじゃん」


「ええ」

 ジャンヌは少し顔を赤らめた。


「俺、ジャンヌと二人で旅行するの、夢なんだ。

 あ、もちろん俺、指一本ジャンヌに触れないから。

 俺、絶体約束するよ」


「ううん、オズ、お約束なんてしなくていいわ。

 私、オズのこと、信じてるって言ったでしょ」


「ありがとな、ジャンヌ。

 この前さー、みんなでお伊勢参りしたじゃん。

 その時、ゴリやジュリの神社にも行ったろ。

 だから俺、ジャンヌも両親が祈願した、

岡山のお寺へ連れて行ってやりたいんだ」


「本山寺ね、わあー嬉しい。私ね、お父さんから聞いたんだけど、

私がまだ赤ちゃんの時に、私を連れて、お母さんと三人で、

お礼参りに行ったんですって」


「ああ、お父さんからこの前、ジャンヌん家に行ったとき聞いたよ。

 そのときの写真、お父さんに見せてもらった。

 ジャンヌ、それからは行ってないんだろ?」


「ええ、私も気になっていたの。

 観音様に、お礼と報告に行かなければって。

両親もきっと喜んでくれるわ」


「そっかー、でも、ジャンヌ、俺と二人で、

それもおんなじ部屋に泊まるって聞いたら……」


「オズぅ、私の両親も、私と同じ気持ちよ。

 オズのこと、信頼しているわ。

 それに私、知らない所で、お部屋に一人で泊まるなんて、

恐くて出来ないわ。

 オズと一緒のお部屋なら安心だもん」


「そっかー、それならいいんだけど。

 来年の春休みか、夏休みに行きたいな」

「ええ」


 ジャンヌとの夢の旅路かあ。叶いそうだな。


「あ、そうだ。オズの那智の滝でしたっけ?  

 役行者様がお出ましになったのは?」


「ああ、白龍に股がって現れたんだって」


「そうだったわね。

 オズも、こちらからご挨拶も兼ねて、一度参拝に行ったら?  

 きっと役行者様も、お喜びになられるわ。

 私、行くの、オズの方が先でもいいわよ」


「いや、いいよ。ジャンヌが先で。

 だって俺、毎月お山のてっぺんで役行者と会ってるじゃん。

 それに、ジャンヌのお父さんも言ってたけど、そのお寺、本山寺だっけ、

開基は役行者って言ってたじゃん。

 行けばきっと、役行者も喜んでくれるさ」


「それもそうね。じゃあ私の方が先でいい?」

「もちろんさ」


 ジャンヌと同じ部屋に、二人だけで泊まれるんだ。


 俺がいつも空想していた夢がかないそうだ。俺って幸せ過ぎるかも。

 俺はまた、一人で空想してしまった。


 ふと気がつくと、ジャンヌは何か、真剣に悩んでる表情になった。


 俺は現実世界に引き戻らされた感じだ。

 やはり同じ部屋に二人で泊まるのは怖いのかな? 


 俺も浮かれ過ぎてしまったのか。


「ジャンヌ、やっぱ俺と二人じゃ心配なのか?」

「ううん、ただ……」


「ジャンヌ、ただ、どうしたんだ」

 俺はジャンヌに、やさしく問いかけた。


 やっぱ男と、ダブルベットじゃなくても、密室だからな。

 ジャンヌの不安も理解できる。


 ジャンヌはほんのり頬を染め、下を向いてもじもじしている。


「あのぉー、オズぅ、一つだけお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

「もちろんさ、ジャンヌ。当たり前だろ」


「私がぁー、着替える時にぃー、オズぅ、後ろ向いててくれる? 」

「なんだ、ジャンヌ。そんなこと心配してたのか。

 そんなの、俺、見るわけないじゃん」


「あーよかった。私、着替えるところ、オズに見られたら、

恥ずかしいから、どうしよーかなって。

 ごめんなさいオズ、私、心配しちゃった。そうよね」


「だったらジャンヌ、ジャンヌが着替えてる間、俺、

鬼ごっこの鬼みたいに後を向いて、しゃがんで」


 俺はジャンヌの前で両手を目の上にかぶせ、


「もういいかい?」って言ったらジャンヌが、


「まーだだよ!」 俺はもう一度、


「もういいかい?」って言いながら、中指と薬指を開きジャンヌを見ると、

無邪気な遊びの世界に入って喜びまくっている。


 ジャンヌは、

「もういいよ!」ってチョー楽しそうだ。


「わーおかしい。旅行、とっても楽みね」


 少なくてもジャンヌは、

俺と二人だけの夜をぜんぜん心配してないことはわかった。


 俺は、ジャンヌの俺に対する信頼の厚さを改めて痛感した。

 俺は絶対ジャンヌの信頼を裏切らないぞ! 

 自分自身に強く誓った。

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