【天然】
「ジャンヌ俺さあ、今は心底、ジャンヌの気持ち解かったから、
俺って、すげー嫉妬深いかなって。でもジャンヌ、もう安心して。
俺、これからは絶対ぶれないから。
俺もジャンヌのこと、ずっと信じていられる」
「ありがとう、オズ。お互いに、理解が深まってよかった」
「おう、俺もう絶対大丈夫だから。
明日また、後藤と楽しそうにしてても、グランドで俺を無視しても、
余裕だから」
「オズ、ごめんなさい。
私、オズがサッカー部の時は、近づいても、
口をきいてもいけないと思っていたの。
だから私、一昨日から、グランドで、近くにオズがいても、
わざと知らんぷりしていたの。
私、ほんとはオズと、グランドでお話したいんだけど、
うちのグランドならお話していいの?」
ジャンヌは嬉しそうな表情だ。
「あ、俺、そういえば、鎌学との試合の時、
先輩たちが、ジャンヌファンだから、そんなこと言ったよな。
ごめんなジャンヌ、やっぱ挨拶くらいにしとこうか」
「ハイ」
「俺、てっきりジャンヌが、後藤に教えてもらってるから、
後藤に気を使って、わざと俺を見ないのかと思った」
「え? 後藤君に気を使うって、どういうこと?」
「あのさ、ジャンヌが楽しく後藤から教われるように、
後藤が、俺とジャンヌが仲いいとこ見たら、面白くねえだろうからって、
ジャンヌが気を使っているのかと思ったのさ」
「え? ごめんなさいオズ、私よく解らないわ?
別に後藤君、楽しく、親切に教えてもらってるわよ、私もとっても楽しいし」
「なんだ、ジャンヌ、ほんとに楽しいんだ」
「ええ、だって、陸上って、私の知らないことばかりなんですもの。
後藤君、いろんなこと、教えてくれるのよ。
あ、オズ、後藤君の指導、明後日で一通り確認して終わりなんだけど、
明日も教わってもいいかな?」
「え? ジャンヌ、もう俺に気ぃ使うなって。
俺、ジャンヌが後藤と楽しく練習してるの見ても、
温かく見守ってるから」
「ありがとうオズ、でも私、これから男子と二人だけの時は気をつけます。
あ、それから、昨日みたいな時は、お家に帰ったら、
オズに安心してもらうように、お電話で報告するわね」
「あのサー、ジャンヌ、変に気ぃ使うなって。
ジャンヌの好きな、《普通》に接すればいいんだから。
俺、誰とでも温かく接するジャンヌが好きなんだ。自然体のままじゃん。
絶対今のままでいて欲しい。天然のままでいいからさ」
あ、しまった。一言よけいだった。
「まあオズったら。もう知らない!」
ジャンヌは頬を膨らませ、ぷいと横を向くと、
すぐに茶目っけ顔で俺を見直すと、吹き出してしまった。
「あ、そうだ。お茶いれてくるの、すっかり忘れていたわ。
ちょっと待っていてね」
「それならジャンヌ、オカアに、俺の病気、
ジャンヌがお見舞いに来たら、奇跡的に即全快したからって言っておいて」
ジャンヌは笑いながら、
「お母様には伝えておくけど、でも、あまり無理しないでね。
さっきみたいに、また悪くなったらいけないから」
ジャンヌはシューズを脱ぐと、部屋を出て行く時、
振り返って笑顔でバイバイしてくれた。
ジャンヌの奴、俺の病気、嫉妬から来た、《恋の病》だったって、
気がつかないんだ。
やっぱジャンヌは天然だ!
俺は、昨夜からの、暗黒の世界から、一挙に天国に駆け上がった感じだ。
それにしても、本物の天使って、優しいだけでなく、
何でも許して受け入れてくれる、包容力もあるんだなー。




