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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第六章 文化祭
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【家族】

 俺は入場者にお礼と感想を聞いていると、沙也香ちゃん一家がやってきた。


 両親と弟も後に続いている。


 沙也香ちゃんは、ジャンヌを探しながら歩いてる感じだ。


「沙也香ちゃん」

 俺が声を掛けると、一瞬びっくりしてすぐに俺と気がつき、


「あ、こんにちは」

 知ってる人に出会った喜びの表情だ。


「やあ、いらっしゃい。

 お父さんも、雨の中ありがとうございます」


 お父さんは、俺にお母さんを紹介しながら、

「こちらジャンヌさんのお友達で、一緒に助けていただいた生徒さん」


「こんにちは、はじめまして、1年1組の大澤です」

「まあ、その節は主人と沙也香が大変お世話になりまして。

 私も機会があれば、直接お会いしてお礼を申し上げたかったんです」


「いやあ、僕はジャンヌにくっついていただけですから」


 お母さんと話してる後ろに控えている弟の裕太君と目が合った。


 俺はすかさず、

「こんにちは」って挨拶すると、

「こんにちは」ってぴょこんと頭を下げて返してくれた。


 姉に似てしっかりしてそうだ。


 再びお母さんに、

「ジャンヌでしたら俺と同じ1組なんですけど、

今あいつ、茶道部のお茶会手伝ってますよ。

 昼ごろ戻ってくると思いますよ。

 ジャンヌも1組の出し物の、お化け屋敷の幽霊やるんですよ」


「え、ジャンヌお姉さんが幽霊やるってほんとですか?」


 沙也香ちゃんが怪訝そうに俺に確認してきた。


「ああ、クラスの髪の長い女子三人で担当するんだ」


「ええー、ジャンヌお姉さんが幽霊なんて全然似合いませんよ。

 天使なんですから。天使の屋敷とかで、天使役がぴったりなのに」


「それじゃあみなさん、茶道部のお茶会のところへ案内しますよ」

「ありがとうございます、じゃあご案内していただけます?」


 お母さんは紫帆祭のパンフレットを確認している。


「二階の作法室と隣の被服室を使ってるんです」


「ジャンヌお姉さん、茶道部なんですか?」

「ああ、1年は雑用係で、お点前は2・3年生がやるみたいなんだけど」


「あのー、ジャンヌお姉さん、苗字はなんていうんですか?」

「あ、そうか。大橋っていうんだ」


「大橋ジャンヌさんておっしゃるんですね。

 いやー私もあれだけお世話になっていて、苗字も知らないで失礼しました」


「いえいえ、こちらこそ」


「大澤さん、改めまして、私田村秀樹と申します。

 家内の宏子です。長男の裕太です」


 最後に沙也香ちゃんの肩に手を置き、


「そして田村沙也香です」 


 みんなから一斉によろしくお願いしますっていわれた。


「えーと、俺いや、自分は大澤小角っていいます。

 小さいに三角の角って書きます。

 それからもう一人、背のでかい奴がいたでしょ、

あれは大田猿田彦っていいます」


 お父さんは、手を俺に向けながら、確認するように、

「大澤小角さんに、大橋ジャンヌさんに、大田猿田彦さんでよかったですね。

 あのー、大変失礼なことお聞きするんですけど、みなさん、本名なんですか?」


「はい、みんな変わった名前ですよね。

 私は役行者から、大田は猿田彦大神から取ってますし」


「ほー、みなさん、歴史の教科書かなにかに出てきそうなお名前ですね。

 意味深な、それぞれお役目がありそうな感じがしますね」


 だんだんヤバそうになってきた。俺たちの素姓がばれそうだ。


「ジャンヌお姉さんは、ジャンヌ・ダルクから取った名前ですか?」


 俺は一瞬躊躇した。


「さあ、それはよく判んないけど、そうかもね」


「福岡で総理を救った金髪の女子高生のグループって、

ジャンヌお姉さんと関係のあるグループなのですか? 

 私、絶対ジャンヌお姉さんと同じグループじゃないかなって。 

 だって、ジャンヌお姉さん、大天使ミカエルの指導を受けているし、

イエス様とも繋がっているでしょ。

 それに、宝くじの奇跡だって、パパが1枚、当たりくじを引いたんじゃなくって、

ジャンヌお姉さんが、1等が当たるように神様にお願いされたんでしょ?」


 俺は、沙也香ちゃんに問い詰められてるみたいで、返答に困ってしまった。


「さあ、それは……」話しながら作法室の前まで来ていた。


 お茶会の予約受付の女子に、

大橋さんにお客さんだからと呼んでもらった。

 すぐにジャンヌが隣の被服室から出てきた。


「まあ沙也香ちゃん、良く来てくれたわね……」 


 ジャンヌは沙也香ちゃんを抱きしめた。


 二人ともすげー喜び合っている。


「私、また六国高校へ来ちゃいました。

 今日は家族全員でジャンヌお姉さんに会いにきました」


「お父さん、お久しぶりです。お元気ですか?」 


 いつものジャンヌスマイルだ。


「あのー、大橋ジャンヌさんておっしゃるんですね。

 先ほど大澤さんからお聞きしました。

 私、申し遅れましたが、田村秀樹と申します。

 今日はいい機会だから、家内もジャンヌさんに会ってお礼を言いたいと。

 妻の宏子です」


「こんにちは、大橋ジャンヌと申します。沙也香ちゃんのお母さんですか」


「はい、宏子と申します」


「あ、君は裕太君ね? こんにちは、よく来てくれたわね」


 裕太君は、ちょこんと頭を下げ、

なんで俺の名前知ってるのっていう顔している。


「ここじゃなんですから、移動しましょうか。ジャンヌ大丈夫?」

「ええ、お客様がいらっしゃったからっていってあるから」


 俺たちは休憩スペースへ移動しながら、


「すいませんね、お忙しいところ」

「いいえぇ、私、またお会い出来て、とっても嬉しいんです」


 休憩スペースへくると、


「大橋ジャンヌさん、先日は、私共一家をお救い頂き、

本当にありがとうございました。

 なんとお礼を申し上げてよいやら……」


「いえいえ、沙也香ちゃんの祈りがご家族を救われたんですよ。

 沙也香ちゃんの祈りをイエス様が受けとめられたんです。

 私は単なるメッセンジャーですから」


「とんでもございません。

 ジャンヌさんがいらっしゃらなければ、私ども、どうなっていたか」


「ママ、ジャンヌさんたち、私たち家族のために、祈ってくれてたんですって」


 ここでお母さんが涙を流しながら、


「まあ、なんてお優しい人たちなんでしょう。

 見ず知らずの私どものために……」


「ねえ、ジャンヌお姉さん、ジャンヌお姉さんって、

ジャンヌダルクに変身できるんですか?」 


 ズバリの質問に、ジャンヌも絶句した。


「あ、あのー、私、お祈りしているときは、自分でもよく解からないの。

 それに……」


「福岡で総理を救ったのは、やっぱりジャンヌお姉さんだったんですね?」


「さ、沙也香ちゃん、わ、私は別に……」 


 ジャンヌが困惑している。


「あのね、沙也香ちゃん、

ジャンヌは大天使ミカエルの指導を受けてるって言ったよね」


「はい」


「ジャンヌは、地球の安寧と世界の平和が達成されるよう、

いろいろなミッションを担っているんだ。

 そのミッションが遂行されるとき、その場がトランス状態になるんだ。

 神事の最中は、ジャンヌ自身が光に包まれて、周りから見ると、

視覚、聴覚、記憶が神様にコントロールされているから、

真実の姿が判らないようになっているんだ」


「それでなんですか。福岡の事件の時も、総理はじめ、みんなの記憶が曖昧で、

どれが本当のことなのか、結局判らずじまいになってましたよね。

 あれだけ沢山のカメラや映像も、全然映ってなかったですもんね。

 やっぱりジャンヌお姉さんて、すごーいんですね」


「沙也香ちゃん、私は神様のみ心に従っているだけなの。

 だから、当日のこと、新聞やテレビ、ほとんど見ていないから、

自分でも正直、良く分からないの」


「そうだったんですか、やはりジャンヌさんだったんですね。

 でも、今日、学校におじゃましてみると、

皆さん普通の高校生やってらっしゃるんですね」


 ジャンヌは思わず苦笑いしてしまい、


「お父さん、本業はもちろん高校生ですから。勉強もやっていますよ」

「いや私ね、てっきり天使のお仕事が本業かと錯覚してしまったんです」


「いえいえ、私たち、勉強だけじゃなくて、部活もやっていますし、

私は茶道部ですけど、大澤君はサッカー部で、もう一人の大田君は演劇部ですし、

あ、大田君、校門を入ったところで演劇部、講演会のチラシ配っていませんでした?」


「いえ、気がつきませんでした」


「今日、雨で中止になりましたけど、演劇部、屋外で公演予定だったんですよ。

 でも7月に、鎌倉芸術館で公演がありますので、

そのチラシ配っているはずですけど」


「そうですか、帰りにいらっしゃったらご挨拶させていただきます。

そういえば、大田さん、お名前猿田彦っておっしゃるんですね。

 大澤さんといい、強力な神様がジャンヌさんを護っているんですね。

 まるで中世のフランスで、ジャンヌ・ダルクを守護した騎士のようですね」


「いやー俺たち、そんなにかっこいいもんじゃないですよ。

全然たよりになりませんけど」


「今日はお忙しいところを、時間をさいて下さってありがとうございました。

 私、ジャンヌさんにお会い出来て、直接お礼を申し上げられて、

肩の荷が下りました。

 あ、それからね、ジャンヌさん、我が家では、お食事前に、

沙也香から教わった『主の祈り』と、ジャンヌさんから教わった

《平成の祈り》をお祈りしているんですよ。

 私は朝目覚めた時と、夜寝る前にもお祈りするようして、

ジャンヌさんのご恩に報いたいと……」


「私はママよりもっと《平成の祈り》を祈っていますから、ジャンヌお姉さん」


「皆さんありがとうございます。

 きっと大天使ミカエル様のご加護がありますよ」


「ジャンヌさん、お忙しいのに時間を割いて下さりありがとうございました。

もう部活に戻って下さい。

 大澤さんもありがとうございました」


 俺とジャンヌは、田村一家と別れたあと、


「オズ、助けてくれてありがとう」

「いや、俺もさ、沙也香ちゃんのつっこみが鋭くてさ、まいったよ」


「ほんとに、あの家族には神様の奇跡が起こったしね。

 でも皆さん、とてもいい人たちね」


「ああ、もう心配要らない感じだな。

 ジャンヌ途中で呼びだしちゃって悪かったな。

 じゃあ俺行くわ」


「私も後で教室行くから。じゃあね」

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